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「ほ~れネコネコ、酢昆布あげるよ。」

 目的の場所に向かうため、公園の中を突っ切って歩いていると
「チッチッチッ」と女の子二人が公園に植えられている木の枝に乗っかった黒猫をどうにか酢昆布で釣ろうとしていた。

 はてさて、子供たちの為に木をぶん殴ってネコを落としてあげようか?

「………」

 待て待て、なんでスグそういう事が頭をよぎるかなオレ。

 落としたとしても、子供たちから白い目で見られるのは間違いない。
 それにだ、子供たちの呼びかけと酢昆布に興味を示さず、木の上から退っ屈そーに景色を眺めている。

 そんな事を考えながらネコを眺めていると目が合った。

 ………行こ。
 公園を抜けて筋道に入る。

 今朝、登校途中に土御門から
「………すまないがタマチン、小萌先生に一限目程遅れると連絡してくれないか。」と、深刻な声で連絡がきた。
「なに?新発売のトレーニングマシンか?メイド本か?」
「そんなところだにゃ~♪」
「OK、解った。妹の働き先に偵察に行くから遅れるそうですって伝えとく。」
「ちょッまッ!ちがう!違うよタマチン!」
「あのさ~、そのタマチンってのいい加減やめてくんねぇーか?なんかタマ○みたいで感じ悪いんだけど。」
「んじゃ逆に呼ぶようにするにゃ~♪」
「………まぁ、そんなに自爆が男のロマンだと思ってるなら別にいいけどさ。こちらもそれ相応の態度をとらせてもらうけどいいかな?
 小萌先生にある事ない事言っとくぞ?
 例えばだ、ん~~~……土御門モトハル君は義理とはいえ妹という立ち位置にいる舞夏ちゃんに手をだ」
「ストップ!!!ストップストップストップ!!!!!!!!まずは落ち着こうかタマキさん」
「ん?オレは別に落ち着いてるけど?」
「えー………っと、タマキさん。普通に連絡お願いします。」
「了解。……それにしても、お前たち兄妹………スゴイよな。」

 そう言って土御門との通話を終え、小萌先生にそれらしい事を話した。
 彼、土御門元春は授業を抜けるとき、たまにこうして連絡が来る。自分がもっともらしい『いいわけ』を作って話すからなのだろう。

 青髪ピアスと元春は、広義で言うところの『共通の趣味[オタク文化]』で情報の提供を自分がしている。
 二人とも、ちょくちょくオレのメンツとの面識はある。が、
 正直なところ。同人や遊ぶには『ちょっとした』制限があるパソコンゲーム等といったジャンルはオレ以外はついていけない。
 というか、ウチ等メンツは自分以外がほぼパンピーなので一緒に遊ぶ時は大体ゲームや読書、たまに世間話といった感じである。
 それで、メンツが帰った時にたまに居残ってて「なにかお勧めなモノはないかにゃ~♪」となるわけである。

 そういうモノは自分で掘り出してなんぼのモンだろ?と思いながらも、
 最近元春にN系の「ゲーム」を試しに貸してみた。

 …………………未だ、彼から感想が返ってこない。プレイ時間を考えて一人攻略して二人目の中間ほどであろうに。

 …………………未だ、彼から感想が返ってこない。

 アイツ的にヒットしたのだろうか?と考えながら歩いていると、裏道の細い通路を曲がった先に
 黒ネコがちょこんと座り、コチラを眺めていた。
 ネコとの距離が縮まっても逃げる様子もなく普通に通り過ぎる。
 少し歩きT字路を曲がる。
 黒ネコの横を通り過ぎる。
 つきあたりを左に曲がる。
 黒ネコの横を通り過ぎる。
 この通りはいつの間にかネコの縄張りになっていたようだ。
 T字路を曲がる。
 通り過ぎる。

 ……。
 なにかおかしくないか?

 曲がる。
 通り過ぎる。

 アレ?

 曲がる。
 通り過ぎる。

 裏道の迷路に迷ったわけではない。むしろ迷うなんて事は万に一つもない。

 通り過ぎるネコがことごとく全て黒ネコである。
 全てのネコが、
 逃げるワケでもなく、
 ただジーッとこちらを観察するように見つめているのだ。

「………。」

 ネコを通り過ぎた先にすぐ曲がる道がある。
 そこまで来てネコのネコの方を振り返ると、やはりコチラを見つめている。
 それを見届けて道を曲がる――――――。



 ――――――――視界の下の方から、黒ネコがコチラを見つめていた。
 条件反射のようにバックステップし、ネコとの距離をとるついでに先程ネコのいた通りに視界をやる。が そこにネコが居ない。
 交互に見まわそうと振り返るがコチラも消えていた。

 地に足がつく。
 ………アレ?と思い、歩いてきた道の方をまた振り返るとそこに黒ネコがただじっとコチラを見つめていた。

「…………一瞬ビックリしたぜ。」
 普通に考えるとこの状況、ホラーである。

 タマキは黒ネコの方へ近づいていくが、ネコはその場を動かない。
 ネコの前にしゃがみこみ、頭をなでようとして手を伸ばし、触れようとする瞬間、目の前からフレーム落ちしたようにネコが消え、
 後ろの方からトコトコと黒ネコが歩いて来て、目の前に座ると「ニャ~~~。」と鳴いた。逃げる素振りは、ない。
「逃げてきたな?お前。」普通に猫を抱き上げる。今度はテレポートして逃げようとはしなかった。



 予定変更。

 街の離れにある、何個か並んでいるコンテナの前まで来て、その中の一つの扉を開く。
 そこには、数匹のペットがいた。
 黒ネコを離すと、警戒することなくペットたちの輪に混ざっていく。
 多分、この中にいる最初に飼った三毛猫がこの黒ネコにオレの存在を教えたのだろう。
 オレには感情しか伝わってこないが。
 ついでに自分は服装を学ランに戻し、仮面をかぶる。
 色々と整えて、コンテナの扉に手を掛ける。
「ここにいりゃ安全だ、パズに色々教えてもらいな。」
 そう言って、トビラをしめて歩きだす。


 飼い主が飼う事を放棄したり、捨てられて野良になったりした『カレ等』の行きつく場所は保健所という名の実験場である。
 従来通り、保健所に連れてこられたり捕まったりした『カレ等』には一定期間、飼い主の募集がかけられる。
 が。その期間を過ぎると、余りものとなった『カレ等』は一斉処分される。従来通りなら。

 学園都市の『保健所と名のついた建物』は、徹底して情報漏えいを阻止しているが、処理する前にもう一つ業務内容が加わる。 
 外見は学園都市の外にある保健所と建物の大きさはあまり変わらないだろう。そういう事もあって、普通の人はまず気づけない。

 その実態を知ってはいるが自分自身、「全ての命を助けよう!」なんて大層な人間ではない。人一人が出来ることは限られている。
 情報をもっていても、それを武器にこの都市に一人で喧嘩を売るほど、「正義の名のもとに!」みたいな人間でもない。
 まずペットというか、動物、人間以外の生き物を実験台にするのは『悪』とはされていない。
「モルモットがいい例だ。そういう意味では、保健所の動物も同じような立ち位置だ。」っとも言いきれたり割り切れたり出来るほど、
 達観したような眼は持ち合わせてもいない。
 どこまで行ってもグレーゾーン、天秤はいつまで経っても微妙に揺れ続ける。それを見て、中途半端な感情を放棄して、
『生き延びた命』を匿うことにした。
 助けを求められたから、ただ助けた。
 自分自身を一言でまとめるなら「メンドクサガリ屋」なんだと思っている。
 メンドクサガリじゃなければ、とっくの昔に学園都市の外にネタをばら撒いているところだろう。
 まぁ、ばら撒こうとしたら学園都市が全力で消しにかかって今頃此処には居ないか、
 記憶を全部吹っ飛ばされているだろう……大げさに考えすぎかもしれないが。

 まぁ、そういう人間ではない事が功を奏してか、今もこの街で悠々と暮らしていけているのだろうと思う。
 知ってしまった情報は仕方ないが、自分から漁るのは稀だ。多分。

 知らぬが仏である。
「あ~メンドクセェ。」と溜息をつきながら、日用雑貨屋の中へ入っていく。

 それにしても、ウチの学生寮が火事になるとは、いったいどうやって起こるのだろうか?

 吹野の言った事は必ず起きる。
 俺の周りで起きるすべての事象を把握しているのかは定かではないが、必ずアイツが言った事柄は起きる。
 そりゃ、必ず起こるという事が事前に解れば心構えができるのだが………問題がある。
 いつ、どういった経緯でその事柄が起きるのかという事である。
『起こる事』は解っても、『いつ起きる』のか解らないのはある意味恐怖である。

「………そこまでの要求は贅沢だな。」

 そんな事を呟きながらタマキはデパートの中にある防災グッズ売り場で物をあさる。


 寮の住人による、台所周りの不注意30%

 鬱憤のはけ口に起こしたどっかの能力者[バカ]40%

 鬱憤のはけ口に起こしたどっかの無能力者[バカ]50%


 ………。
 30%の方だと楽なのだが。
 ハァ~…………あ、あった。
 プラスチックでパッケージされた目当ての消火グッズを手に取る。

 見た目、野球ボール程の大きさをしたプラスチックの球体で、中に消火剤が詰まっている。
 扱い方も簡単で、この球体を火の元に投げつけるだけでOK。ボヤ程度なら十分すぎる効力を発揮する。
 ただ、二つ問題がある。
 一つ目は消火剤を包んでいるプラスチックが、
 もし火元に投げつけても衝撃で割れなかった場合も考慮して、すぐ熱で溶けるようにプラスチック自体が薄く、
 衝撃と熱に弱い点である。まぁ、こんな物を街中やバックの中に入れて持ち運んだりしないけれど………。
 二つ目は至極個人的な事なのだが。
 この消火剤自体が使いようによっては簡単に人を殺せるといったところである。
 結構量を必要とするので、大量に買い込んだらすぐ足がつくけどね。

 まぁ、そういううんちくはよしとし、その消火ボールを四つ、かごに入れてレジへ持ってゆき、精算をする。
「いらっしゃいませ、○○カードの方はお持ちでしょうか?」と店員が聞いてくるので財布からこの店のカードを手渡す。
「いつもご利用ありがとうございます。」とお辞儀をし「お会計4800円になります。」袋に商品を詰めてゆく。
 カードを提示した時としなかった時の店員の対応が違うのであまりこの店は好きではなかったりする。
 まぁ、この会社の接客マニュアルがそうなってるんだろうとは思うけど。
 ま、どうでもいい事だけどね。

 精算を済ませ、ポイントが追加されたカードを受け取り店を出る。
 先程までクーラーの効いた店にいたものだから、外に一歩踏み出すと熱気が一気に身を包む。

 まぁ、そんな事より今何時だ?
 現時刻を確認する。

「………………四時か。」
 寮へと歩を進める。

 今から学生寮に戻って、管理人室の所で張り込みしといて、熱源探知をしたら現場に急行して、
 ボール投げつけて今日のイベント終了っと。あー、でもなぁー……
 能力者[バカ]がパイロキネシス系だったりしたら、絶対派手にやらかすんだよなぁー、ドカーンっと


 ドゴーーーン!


”衝撃波探知”

”音声発生場所算出”――――――――直線距離北西400メートル
  爆発音のあった方角に振り向き歩きだす。

「イコ、聞こえるか」すぐさまオンラインで相方に呼び掛ける。
「タマキさん呼びましたー?マンホールですー?」間の抜けたような、能天気な声が届いてくる。
「急いでアンチスキルの出動ログを見て来てくれ、回線は繋いだままにしておく」
「りょーかい♪」

”地図検索”――――――――――――音声発生付近にこれといった店は無い――――『いそべ銀行』以外は。
 走り出す前の準備運動のように軽く「トン、トン」と跳ねる。

”最短ルート検索”―――――――――完了。
 アスファルトを踏み砕くようなスタートで、弾丸のように裏道を走る。

 表通りでこんな速度で走ると一発で目につく、それは避けたい。
 それに細い裏道は、ショートカットをしやすい。
 裏路地の九十度の曲がり角を慣性の法則を無視するようにどんどん走り抜けていくが、
 その時、

「タマキさーん♪アンチスキルの出動ログを覗いたのですが、車両が二台がついさっき『いそべ銀行』へ出動していますー♪」と、
イコから素晴らしい知らせがきた。
 本部からって事は、どんなにアンチスキルがかっ飛ばしたところであと6分は来れない。

 つまり
 間に合わない。


 プチン。




 直線50メートル程の細道に出る。曲がり角は突きあたりを右にしかない。ちょうど人二人分ほどの幅である。
 ショートカットポイント変更。

 タンタンタンタンタンタンタンタンタンタンタンタンタンタン―――――――

 両側の壁を交互に蹴りを入れる要領で走りながら階段を駆け上がるように高度を上げていく。
 進行方向にある建物の屋上まであと5メートル。

 タンタンタンタン―――――――

 目の前の壁が迫ってくる。

 あと3メートル。

 タンタン―――

 壁が3メートルと差し迫っている。
 あと50センチ

 ズダン!!!!

 屋上に乗り上げ、着地と同時にスピードをさらに上げて走る。
 屋上伝いに大幅なショートカットポイントを通過してゆき、今走っている屋上の淵から見える光景は、向こう側と二分するように表通り

が広がっている。


”集中”
 時間が急激にズレ始める。

”現状把握開始”――――――――――――5メートル先に淵。今の位置から、向こう側の建物との落差マイナス3メートル。
 向こう側の建物の後ろに目的地の通りに出る1メートル50センチ幅の通路確認、横断距離15メートル。

”機動限界解除”――――――――――――自分の持てる最大出力を最後の一歩に持ってゆく。

 最後の一歩が屋上の淵につく。

 つくづく思う
 こういう時、なーーんでオレは命がけで遊んでるんだろうかって
 誰かに頼まれたわけでもないのに 
 メンドクサイ事この上ないのに
 この状況を楽しんでいる節があったりするんだから質が悪いただの死にたがりだ
 まるで死にそ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――。

”回転疾走”――――――――――――――飛び出す最後の一歩を最大限に。自分の持てる最大の効率で回転させた左足で。

 ピシッ!
 淵のコンクリートにヒビが入り。

 浅い放物線を描きながら飛び出した。

 そんじょそこ等の身体強化系の能力者が到達できない距離を無能力者が空を舞う。


 回転の効率の度合いが強すぎたらしく、そのまま向こう側の屋上を通り過ぎてしまい、その向こうにある通路まで通過したところで、
 ホルスターから鉄球を取り出し、両サイドにブレーキを掛けるように壁に押しつけて減速を調整し、通路に着地しまた走る。

 すぐに表通りに出て右を向くと、20メートル先にいそべ銀行のシャッターが道路向けに破壊されており、
 バックを抱えたギャングスタイルよろしくな男連中三人組が腹を抱えて笑っているその向こうには少女が一人。
 その少女の右袖にはジャッジメント[風紀委員]のエンブレムが張り付いている。
 確か、彼女はレベル四だったはずだ。


「…………。」

 到着時間五十秒、無駄足だったぜ、何気にストリートラン自己新か……うれしくない。
 通りをまたいで反対側は見せものでもないのにギャラリーモード入ってるし、ギャラリーの中にレベル五混じってるし。
 少し休むため、近くに停めてあったバスの方へと歩いてゆき、
 寄りかかってボケーっとジャッジメントと強盗たちのやり取りを眺めることにした。

「あ~、驚いて損したぜ。なんだ、ジャッジメントはジャッジメントでも中坊かよ。」と、笑いながら余裕綽々な感じの強盗たち。
 あー全くだ。全力で走って来たのが馬鹿らしい、というか笑っちまうほどオレの出る幕じゃないな。
 そんななか、強盗犯の一人がジャッジメントにやる気満々で歩み寄りながらプレッシャーをかけている。
 つもりなのだろうが、かけられているであろう当の本人は、つまらなさそうに眺めている。
「お譲ちゃん、一人だったのが悪かったな!」なんて台詞を吐いて、男は彼女に殴りかかろうとしているのだが、
 正直殴るのに弓引きはどうかと思う、
 そんなんじゃ「今からフルパワーの力で思いっきり力任せに攻撃しますので、どうぞよけて下さい」
 といっている様なものだろう。
 彼女はその拳を通行人とすれ違う様な自然且つ最小限の動きで左によけながら、
 男の重心が前に乗りすぎている右足に足をかけると同時に相手の高等部に手をかけるとそのまま弧を描くように足と腕を廻す。
 すると男は中途半端な宙返りをし、背中をコンクリートに叩きつけられた。

「――――――――――――ッ!」

 男はまともに受身を取れずに背中を強打した為、当たり前のことだが激痛であろう。
 肺からも酸素が一気に抜け出ていったような感覚に陥っている事だろう、
 それに加えて横隔膜が麻痺したようにうまく呼吸が出来ないのだろう、横たわったままピクピクもがいている。
 その様子を見ていた残りの強盗犯たちが目を丸くしている間に、
 ジャッジメントは先程までの脱力したような動きと緩急をつけるように残り二人に走り迫る。

 迫られた男がそのプレッシャーに冷静に対処することが出来ず、パニックを起こしたまま、条件反射で前蹴りを繰り出すも、
 簡単に右によけられ、軸足を刈られその場で倒れる。
 それと同時にジャッジメントがその場から消えると、先程まで彼女が立っていた空間を炎の玉が薙いでいった。

 パイロキネシスである彼の視界からジャッジメントが一瞬で消えうせた。
 確実に当たるはずだったのに!どこ行きやがった!?
 瞬時に辺りを見渡すがどこにも居ない。
 あれ?っと首を傾げそうになった時、背中に衝撃が走り押し出されるような感じに前によろめくが、
 すぐに衝撃のあった方を振り向くと七メートルもしない先に余裕綽々な態度で彼女が立っていた。
 コイツ…わざと手ぇ抜きやがったな。今ので終わらせきれたのにワ・ザ・ト!!手抜きしやがったな。

「テメェ…」男の中で怒りが物凄い速度で加速してゆき、両手には先程よりも大きな炎の玉を発生させ
「ふざけるなぁぁああああああああああ!!」
 彼女めがけて、炎の玉を連射していく。
 が、彼女はその攻撃にたいして男を軸に円をえがくように走ってさけていく。
 しかし六発程連射してきた所で標準が正確になってゆき、次弾が黒子めがけて飛んできたが。

「遅いですわね。」

 男は背後から声がしたこのジャッジメントの能力が何なのか分かったときにはもう遅く、視界は灰色一色になった。
「なっ!?」
 一瞬の出来事に、壁に張り付いているのかと思っていると腕が動かない。
「アレッ?」足を動かそうとするが途中で壁に貼り付けられる。
 顔を上げるとそこは壁なんかではなく、アスファルトであり腕に視界をやると、
 服の外側と内側の所々に細い鉄の棒が杭のように磔にされていて身動きが出来なかった。

「ま、強盗をするようなゴロツキがまともな仲間意識など持ち合わせているわけありませんわね。」と、業務終了の台詞を吐く。

 蔑んだ事を言ってはいるが、彼女の内心はヒヤリとしていただろう。
 地面に磔られているこの男、仲間がピンチに陥っていた時に助けるのでなく、その時できた相手の隙をついて攻撃してきていた。
 その点は評価するのだが、ジャッジメントが空間移動しドロップキックをくらった後の立ち回りがよろしくなかった。
 連射速度と威力からいって、彼の能力はレベル三。
 しかもだ、ジャッジメントの立っていた後ろには柵を越えてギャラリーが出来ている、
 この男、先程の連射時に意識的に初弾を相手の足に向けて撃っていたのだ。
 そして相手が円を描いて避けて、ギャラリーが射線上に入らなくなるにつれて狙うポイントがだんだん上がっていっていた。

 見境の無い人間だったらお構いなしに初弾から相手の後方の事など気にもとめず上半身を狙って撃っていたかもしれない。
 手段を選ばない人間だったなら、その時点で交渉していたであろう。照準をジャッジメントからギャラリーに移し
「下手な真似をしたら撃つ」と。

 この男、戦うには悪く言えばおめでたい、良く言えば優しすぎたのである。

 しかし、このテレポーター容赦が無い。磔にされた男、ある種の拷問である。
 なぜかって?夏場の炎天下の中アスファルトの上にうつ伏せになってみるといい。
「アツッ!アツッ!アツアツアツアツイ!」と熱が伝わってきたのか地味な悲鳴をあげる男。
 なんだかその間の抜けた叫び声を皮切りにジャッジメントの緊張が解かれたが――――。

 ドアが閉まる音が耳に入り込み、黒子が音のした方向に顔を向けると
 銀行近くに停めてあった車のエンジンが起動し我々がいる場所とは反対の方向に走って行き、
 そのまま逃走するのかと思いきや、滑られせこちら側に向けると、なんの躊躇いも無くアクセル全開で走ってきた。
 のだが、オレの視界の先にレベル五が体中から帯電させながらコイントスをしながらジャッジメントに
「ダチが世話んなったから俺があの走ってくるバカぶっとばしってもいいよな?」的なことを言ってやる気満々のご様子。
 終わったな……、さて、帰るか。
 と、タマキはレベル五に背を向けて歩き出す。
 さーて、寮に帰って火事を防ぐとするか。
 バン!!!!と、後方で銃でもぶっ放したような物凄く大音量の乾いた音が鳴る。
 あーでも、さっきのパイロキネシスみたいな能力者が犯人だったらかち合ったときにめんど――――――――

 ……へっ?
 薄暗くなった。

「あぶない!」とか「きゃーー!」的な、ギャラリー側からどっと叫びがあがる。

 おまけに
 オレの反射計が、後方空中から降ってくる物体を捉えている事に気づく。あと3メートル程の距離で。


 避けられない。


 なら。


 タマキは降ってくる車に振り向いて。


 触れた。


―――――――――――――――


 辺りに凄まじい衝突音が、
 ビルとビルの間で逃げ場を探し波紋状から乱反射に飛び交い去って
 しばららく経つが、
 ギャラリーは未だに声を上げる者も動く者もおらず、
 静まり返っている。

 奇跡を目の当たりにしての静観ではないし、
 悲劇による静寂ではない、
 そもそも悲劇なんて起きていない。
 ただ、人を乗せた技芸的なマテリアルが道路の真ん中に垂直に、
 柱のように一本立ちし影を作っているその中に、
 一人の人間が外傷もなく立っているだけにすぎなかった。

 その立っている人間とオブジェとの距離は1メートル弱という、
 当事者ならわりかし肝っ玉を潰しても非難されないような状況の中、
 学生服で黒く染まり、仮面を被った人物は
 のそのそと巨人に直下型ブレンバスターでもキメられた様な
 車の運転席の割れた窓に少し腰を下ろしながら手をかけ、
 勢いよくドアを引っぺがすと、
 中で伸びている強盗犯を外に引きずり出し、
 車が炎上しても安全な、近くの遮蔽物の陰に転がした。

 警備員(アンチスキル)の車のサイレンが
 もうそこまで来ていることを知らせている。

 車の下敷きになりかねなかった人物が
 路上での見世物が終わり、自然と人々がはけて行くそれの様に
 裏路地へ入って行こうとするときになって

「――――あっ、待ちなさい!!」

 ようやく黒子は我に返った。
 しかし、声をかけられた人物は
 聞いていないのか聞こえなかったのか、
 そのまま裏路地のほうへと入って行く。
 逃すまいとすぐさま黒子は仮面の男が
 入っていった裏路地へとテレポートしたのだが、
 そこは袋小路になっており、ただ壁が聳えるだけで
 そこには誰も居なかった。

 黒子が元の通りに出てきて、
 こちらの方へと歩いてくるのをみて、御坂は声をかけてた。

「黒子、さっきのは?」
「その先が行き止まりになっていて誰もいませんでしたわ。
 それより御姉様ぁ~」と、御坂の問いに対して
 素っ気無い感じに答えていたが、
 傍まで来ると満面な笑みのまま御坂の頬をつねる。

「イタ!?イタタタタ!ちょっと!なにすんのよ黒――――」
「御姉様。先程のレールガン、向かってきた強盗犯の車を
 吹っ飛ばすのはいかがなものかと思うのですが?」
 頬をつねりながら口元は笑っているが目が笑っていない。

「イタイって!放しなさいよ!!」
 言われて素直につねっている手を離す黒子だったが、
 御坂は痛みで声を荒げる

「私が何したっていうのよ!別に悪いことはしてな――――」
「御姉様、御姉様はレールガンを放つと、
 車があのように飛ぶと言うことを事前に念頭においていましたか?
 一般人がその放物線上にいはしないか回りを確認していましたか?
 居なかったにしろ、
 もしあれ程のスピードと高さで回転している車が落ちた場合、
 中に乗っている人間がどうなるか考えなかったのですか?」

「うっ…………。」

 グサグサと正論を言われ、バツが悪いといった顔になる。
「それに先程もも押し上げましたが、
 此れはわたくしが居た以上、ジャッジメントの管轄ですの、
 相手をただ倒せばよいだけの路上の喧嘩とは違うのですよ御姉様。」

「………でも、アイツ等は犯罪を犯したわけだし…っぁ――――」
 散々ないわれ方をして面白くなくて俯きながら
 そんな言葉をポツリ零してしまった瞬間に
 自分の踏んだ地雷のでかさに気付いて顔を上げる

 が。

「ん~、そうですわよねぇ~。
 御姉様はわたくし達(ジャッジメント)の様な、
 細かいことはあまり得意ではないですし」などと
 遮蔽物に横たわる強盗犯の所へテレポートしており、
 御坂に聞こえるように大きな声を出しながら、
 磔にされている男の方に一箇所へ集めてゆき。
 集め終わると御坂の前に現れた。

「それに、あの場合は仕方なかったですわね。」
「………黒子。」
「なにせ、自制が利かなくなった状態のレベル5なんて、
 わたくしには止められようもございませんもの。」

 向こうの曲がり角からブレーキ音を撒き散らせながら
 一台の車が飛び出してきた。

 現場に到着すると、
 トラックの中から武装した男女数名が出てきて、
 その武装集団の一人が
 黒子の袖に風紀委員のエンブレムを捉え、話しかけてきた。
「状況は?」
「周りに居た一般人が軽い怪我、銀行から出てきた
 強盗犯と思われる人物三名と接触後、戦闘に入り、
 その後取り押さえました。
 銀行から出てきた人間は今のところこの三名のみです、
 (銀行の)中の状況は未確認です。
 現場の引継ぎをお願いしたいのですが……そちらの人数が――――」

 足りないのではと言いかけて、
 もう一つサイレンが近づいていることに気付く。

「――――……それでは引継ぎお願いします。」
「ハイ了解。お疲れさん!」警備員は路上に立てられた車を見て
 経緯を聞こうとしたが、黒子の隣にレベル5が居るのを確認して
『あ~~、アンタがやったのねハイハイ』と言ったような顔になり
 車に関して何も聞かず、
 他の隊員達がとりあえず増援が来るまでに、
 強盗犯を車に収容作業している方へと歩いて行った。

「さてと、あとは警備員に任せましょう。
 御姉様、わたくしも一旦本部に戻って
 書類作成をしなければならないので失礼します。初春!」
 ギャラリーの中から
 名前を呼ばれてビクリと肩を震わせた人物がこちらを向く。

「それと御姉様。」
「ん?なに?」
「……やっぱりいいです。」
「なによ黒子。」
「何でもありませんわ。」
「?」
「それでは御姉様、一旦失礼いたします。」
 そう言いながら、
 初春に本部へ戻る意図のジェスチャーを伝え歩き出し、
 初春も黒子の方へと歩いていった。

 いつもはキの字一歩手前のようなハイテンションな
  HENTAI KUROKO なのに
 風紀委員の業務中は立派な人間に見えて仕方がない御坂だった。


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十八斤ワードがokだと楽なんですけどねぇ~。
そうでもないか。
ああなるほど。
それ系なのは解ってたけどNだけだと、ネコ耳、ネット、泣き、覗き、奈落、ニッチ、ニート、濡れ、脱ぎ、ヌルヌル、ヌード、ネガティブ、ネバネバ、ノータリン・・・
ともかく他のもいろいろ想像しちゃってな。

読み手は肝心なとこを拾ってくれなかったり、
変なとこで想像の上を行く感想を持ってたりする。

・・・と、おかのんがいってた。
いや、さすがにストレートに
NTRって入れるのはまずいのではないかと思っての苦肉の策でして…。
その前に、
同人や遊ぶには「ちょっとした」制限のあるパソゲーとかふっておいたら、
原作での土御門兄妹の嗜好を知ってる人はピンとくるかなと思ったのですが

やっぱ、いちいち遠回りしないでストレートに
「ネトリネトラレヤリヤラレ」的な「寝取り系」
と書けば良かったのかもしれない…。

まぁ、基本NTRはルート一本なのでタマキが思っていた
一人攻略して二人目突入というのは無いんですけどね。
まぁ、そういった表記したのは
一般の文でどこまでOKなのか分からなかった事と、
未成年がもしコレを読んで(ほぼ可能性は無いですが…)
分からない言葉を検索し、新たな扉を開いてしまわないように
という、回避の意味あいもあったのですが…。
最近元春に貸した『N系』ゲームってなに?
ググっても700系のぞみしか出てこない。
タイトルで謝っておいたり。

それはともかく本文だが・・・

いろいろコラボしてるのはいいとして、大筋はとあるのままだからまだ『このSSならでは』の面白さが会話の掛け合いだけなんだよな。
アンチスキルの先生の話も要は知り合いなだけで『その設定をいかした大立ち回り』とかではなかったし、もうそろそろ上がってる分は終わるし。

おかのん見てるから書く方の労力ってハンパないのは解ってるけど、読む方は面白そうだと思えば続きが気になるし、続きがちっともでないと他の面白いもの見つけて忘れちゃうぜ。

何が言いたいかというとだ。

PC直ったら続きうpしてね。

まだ上条編もあるし先のことだけど、この広げ方だと多分長編なので停滞しそうな気がする。
夢か幻か復帰しててヒャヒャヒャw
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HN:
一り
性別:
非公開
趣味:
コレといって固定はないです
自己紹介:
超弩マイペース。
自分のペースを乱されると拗ねて
寝ます。
血液ゲノムで天然B型と発覚
「こ、こいつ…先の行動が読めねぇ(汗)」だそうです
血液ゲノムとか信用すんな。
血液型占いとか信用すんな。
人を信用すんな