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 なぜ吹野が『身に起こる出来事』を伝えなかったのか、真意を掴もうとしている時にそれは起こった。

 

"衝撃波探知"

"音声発生場所算出"――――――――直線距離30メートル

"検索"

 


「は?」
 

 静寂の中、表示された文字とおおよその検出場所を示すこの建物の地図に呆気にとられてしまった。
 

 タマキ自身、音を聞いていなかったからだ。表示されたデジベルからは聞き逃す事はありえない音量。
 



 なんだこれ?


 

"衝撃波探知"

"音声発生場所算出"――――――――直線距離30メートル

"衝撃波探知"

"音声発生場所算出"――――――――直線距離30メートル



 三度目の表示が出たときには、既に体が動いていた。


 二階へと駆け上がる。


"検出"


 三階へとスピードが増す。


"検出"
 タマキは駆け抜けざまに壁の一枚を引っぺがす。
 目的の階へ上がる前には、おおよそ行き先にどんな人間が居るのか見当がついた。



 二階の踊り場付近から張り巡らされていたというのに、
 文字の表示を確認して目を向けるまで『そこら中に貼り付けられた変な記号の紙』を認識することが出来なかったからだ。
 それに加え、紙に書かれた記号をよく見てみると、検索で『ルーン文字』がヒットした。


 オカルトが病的に好きなヤツに間違いないんだが・・・・・・――――



 ᚲᚨ  ケン アンスール



 ――――笑えねぇ。炎と知恵のシンボルをそこら中に貼り付けただけで人の『認識を外す』事が出来るなんて、悪趣味以外のなにものでもないな


 タマキはその札の特性を見抜き、
 先程の吹野の件の真相は明後日の方向に投げ捨てた、今はそれどころではないと。
 集中が研ぎ澄まされていく要因は、ただ単にこれから戦闘をおっ始める事に因るものだけではなかった。



 まったくもって悪趣味且つ笑えない事はもう一つある。
"検出"され、自身で意識して目を向けるまで、タマキはこの札を認識することが出来なかったという事実だ。
『記号暗示』自体はさして学園都市の分野ではそう珍しく無い。
 しかしコレはその枠からかけ外れている。
 記号というのは、或るものを示すものである。
『記号暗示』というのは記号であるが故に、まず初めに対象者がソレを視認しなければ効果を発揮しない。
 このように、ソレ自体が『視認せずして対象者の認識を外す』という自己矛盾を孕んだモノがタマキの知識に引っ掛るモノが無かった。


 この札は明らかに『記号暗示』のプロセスを根本から覆していた。
 なぜなら


 二階の踊り場付近からしか張り巡らされていないというのに、"衝撃波探知"の表示があっても『タマキ自身はその爆音を認識する事が出来なかった』からだ。


「・・・・・・・」


 おまけに、この紙自体に何かの化学薬品は検出されなかった。この紙の検査結果は、まんま紙でしかなかった。


「・・・・・・・・・」


 カチコミ用の手袋を嵌め、鉄球のホルスターを外し掴み取る。


 中途半端なトコ割り込み参加させて頂く、選手交代の合図は仕掛けるのが礼儀――――ってか!!
「――――何!?もうひと――――!!!!」



 飛び込みざま――――威力なんかより速さを重視したフォームはサイドスローぎみの投擲。
 上条の顔をスレスレで通過した鉄球を服装が陰気臭い男は掠る程度で避けた。


「動くな!!特別風紀班だ!!今すぐに能力を無力化しろ!!次は確実に当てるぞ!!」


 避けやがった 致命傷にすらなっていない 額を掠って片目の視界を奪う位にしか役にたたない


「お~い、ニホンゴわからねぇのかぁ!?ぁあ?
  Special City Squad(特別風紀班)っつってんだよ!!聞こえねぇのか!!」

 
 しかもふっかけても全然動じねぇ。マジで困ったぞ、嫌な予感が的中だ


 タマキの嫌気が集中力と比例して右肩上がりになるのも無理は無い。
 上条が圧されている炎の塊は、この都市のパイロキネシス(能力者)が使うものにしてはまわりくどい方法だった(いちいちそんなモノに形作らない)からだ。
 それに視界の隅――――数台の掃除ロボ達の隙間に、昼に見たあの安全ピンデックスが明らかに重症の状態もセットで付いてきた。


「その炎で出来た不細工なオブジェ――――"結果 映像"――――って、クソッ!」


 ダッシュで駆け寄り上条の襟首を掴んで即ユーターン。


 おまけに相手は状況把握と優先順位の決定速度が恐ろしく速い――――


 回避とショートカットの理を兼ねた意味で、タマキは上条を引っさげたまま手すりの外側へ沿う様に飛び出す。


 ――――かなり慣れている。街中の普通の不良でもなければパンクな格好をしたサイケ野郎というわけでもない。


 

 一階下の通路にある手すりに手を掛けそのままそれを軸に振り子の様な動きで内側に入る。


「お、おまえ――――」


 襟首を離すと、数秒力無く咳き込んでいた上条がげっそりした顔つきで訴え始めようとしていたが、


 今は何より時間が無い、そんな雑談よりも


「現状把握したい。今北産業で頼む」


「あいつHENTAIロリコン猟奇ストーカー。
  上にいる幼女をしイプしようとしてる。
  人型のアレから逃げれた。←今ここ」


 差し伸べていた手を掴み、立ち上がりながらの迅速な回答は少し驚いた


 意外と切り替えは速いな


「OK把握。………それにしてもこの有様、上がってくるときに見たときは
 新手のマーキングかと思ったぜ。」
「・・・・・・いつの間にこんなモン貼り付けられてんだ?気付かなかった。」
「ちょっとまて、いま気付いたのか?」
「あ、あぁ・・・・・・。」
「俺が上がる時、二階の踊り場付近から既に貼られてたぞ?」
 コイツの右手が突破を可能にしたのか、左手にぶら下げた布切れが可能にしたのか・・・・・・



 轟!!



 あっ、さっきの変なのが来た。出会い頭に鉄球ブン投げといてアレだが、確実に殺す気だな。


 上条と同時に炎へ背を向け逃走を開始する。


「げっ!やっぱ追って来やがった!」
「――――」
「――――」



 人間一人背負った状態で先程のショートカットを後五回程やれる自信がない


 さっきまで、
 二階に駆け上がり始めてからずっと集中しっ放し
 対峙してる間の集中力限界突破
 投擲及び機動効率に拠る『回転』の常時使用



 既に頭と全身の内側――――神経が痛い



「・・・・・・・・・――――-に吹っ飛ばされるわ常識的に考えて!!ってか、さっきから俺に死ねっつってんのかッ!?」


 冗談でやっているのかと思ったが、どうやら本気でパニクってたのか


「さっきからお前さんの両手にぶら下がってるモンは何だ?アホ上トンマ」
「――――ッ!!!!そ、れ、を、」
  一にブレーキ、二に構え、三~四で
 「先に言えッ、忘れてたじゃねぇか!!!!」
  振り向き様に右の拳で殴りつけ、そのまま拮抗し、押さえつけた。


 右手も通用するのか


「グレートだぜ康一、そのまま敵スタンドを押さえつけておいてくれ。
 その間にオレは敵スタンドの本体をたたく――――。」


 コイツ・・・・・・インデックスが『歩く協会』って言っていたヤツのフード部分は壊してなかったのか――――"気流検知"――――ッて


「――――と、言いたいところだが・・・・・・」


 地面、壁、天井、そこら中に貼られたルーン記号の札の一つ一つに、著しく局部的な空気の流れが生じている。
 これはもはや局部的という表現は誤り――――この一画全体だ、何が起こるのかは予想しなくても誰でも解る。


 俺の言い草に上条も気づいた


「なんかヤバくね?」
「言ってる暇があるか!上条!!チビるなよ!!」
「ガフッ!」
  先程と全く同じ扱いで引っ張る。


 にしても、あ~~ウソだろ~~~


 上条の右手の有効範囲と、フードの有効範囲は――――果たして多角度から向かってくる高熱でも人一人覆える程に広いかが不明だ
 上条からフードをもぎ取って体を張ってソレを立証する気には到底なれない


 さすがにこの高さから他人背負って跳んだ試しがないが・・・・・・・・・・・・やるしかないか


「・・・――――ッ!ちょっ、ちょっと?ちょっとまてタマキ!!ここ六か」
「知るか!!」


 内と外を区切る手すりに足を引っ掛ける


 跳べなくても跳ぶ!跳ばなくては死ぬ!死ぬよりは跳ぶ!!


 本日二回目のダイブ、遠ざかってゆく通路まるまる一画がバックドラフトでも起こしたかのような爆発と――――


 「アッー!」


 ――――情けない叫び声を背中で感じるタマキだった。

 

地面に着地したのはそれから約三秒後。

 



「うぅぅぅぅ………」
 

 自転車置き場に着地成功。というか、コンクリに全ての衝撃を分散させるのは無理だったか、
 足が・・・・・・ちょっとまずいな。まぁ、時間が経てば大丈夫だろう。酷い吐き気だ・・・・・・内臓は・・・破裂してないし満点だろ


「うぅぅぅぅ………うぅ、怖かったよ~」


 上条の方は・・・・・・外傷はないし挫傷は、オレがおっ被ってるからまず大丈夫だろう
 脱臼の類も無いか。ありゃただ腰が抜けてるだけだな
「立てるか?」
「・・・・・・・・・・だめぽ」
「だよな――――」


 仮面が少年の背中に喝を入れると、やっとのことで二本の足で立つことが出来るようになった。
 あの高さから飛び降りて、なぜ無事でいられるのか聞かれたが、タマキは平然と自分の履いている靴のおかげだと言う。
 そのことを告げると少年はピンときたらしく、今日学校で小萌から聞いた被験者と結び付けていたが、
 その過程はどうあれ結論は当たっていた。
 それに、先程までの危機的状況下でタマキが発した特別風紀班というものに関して問いだすところ、
 この少年、意外と抜け目が無いと同時に、戦闘に際して複数で動く事に慣れていないということも先程の立ち回り方で解ったことでもあった。


 

 それらから、タマキがこの場で判断したことは
「――――それより上条、インデックスとはどういう関係だ?」
 この場から少年を安全に撤退させることだった。


 上条がその問いに対し反射的にタマキから距離をとるため跳び退き身構える。


 仮面自身、この問いで相手が瞬発的に殴りかかってくれれば上出来だと踏んでいた。そうすれば一撃当てて意識を刈れば
 間違っても、彼が死ぬことは無いからである。が、飛び退いたとあれば、話を続けるしかない。


「お前もさっきのヤツと同じ魔術ってオカルトを信じてる危ない組織の派閥かなんかか?」
「は?」
「いや………確立は低いだろうが一応確認のつもりで言ったんだが、理解した。お前は俺の敵じゃない事も分かった。
 そして時間も無い、インデックスが危ない。あの魔術ってシステムをどうやってぶっ壊すかだなぁ………」


 あとは、自然に会話を進めながらコイツから距離を取ってくしかねぇか。などとつぶやきながらまだアパートに居るであろう魔術師とやらが
 やってみせたソレを、頭の中でもって打破を試みる。


 あのルーン文字の書かれた札が力の源だ。そうでなければ、あれ程の枚数をベタベタと貼る事に意味が無い。
 現に、アパートの二階からあの炎の塊が一歩も外に出ていないというのが相手のシステムを如実に悟らせていることは上条もその様子を見れば気付く事が出来るだろう。


 ソレを見るに、相手の戦闘力を無効化にすることにおいてアパートに立て篭もっている事実、
 普通に考えれば直ぐに思いつくことが出来るものがある。が、


 最悪だ、スプリンクラーが使えない。最先端が仇になってやがる。


 しかし、仮面で表情が伺えないタマキの気分は優れないものだった。


 そう。
 現状況において、これ以外無いとされた一手が封じられている事にタマキは気付いてしまっていた。
 このオンポロの学生寮、襤褸と形容されているがそれでも学園都市の恩恵をしっかりと受けているのだった。


 つまりは、


 この都市ならでは、とでも言えばよいであろうか
 この寮のスプリンクラーに使用される水


 揮発性が高いのだ


 あまりそういった場面に遭遇しうる機会というものが少ない事もあり、
 この都市に住む学生でも、その存在を忘れがちにされてしまうが


 この水では、どう足掻いてもただの紙に書かれた水性のインクでさえ滲ませることすら出来ないのだ。


 他に案が無いとすると、短期決戦でしかないか?まぁ、それでもいいか。そろそろ足は・・・・・・よし、動くな。
「おーい、かみじょーーー、なにボケーとつっ立ってんだ?つっ立ってんのは別にいいがお前も頭使え。手遅れになる前にあのロリコンぶっ殺すぞ~」
 少年が頭を働かせ何か案を練っていると見る間に、
 トコトコと学生寮側へ歩いて行き上条が飛び降りている最中に(正確には飛び出す時の反動で)落とした
 歩く協会という名のついたフード部分を拾い上げクルクルと指で回す。
 


 このフードで、魔術師が繰り出した全ての攻撃を防いでいたという上条が告げる事実、タマキはやはり一人で行く事に決めた


「ナイス、後は目の前のアレをどうやって無力化するかなんだよなぁ~。やり方は解ったけど物が無いんだよなぁ~」
 単騎で行くとは決めたものの、やはり戦闘を有利に出来るものがあれば惜しみなく使っておきたい。
 願わくば、寮全体を水浸し出来る程の水が欲しい等と、仮面には珍しい現実逃避が台詞の中に混ざっていたが、
 それも結局は冗談半分で


 あとは、コイツを現場から――――


「どういう事だよ?」
 ――――あれ?何か作戦考えてたんじゃないのかコイツ?えっまだ気付いてなかったか・・・・・・それはそれでよし、そのまま一生考えてくれ。
「二階の踊り場付近からしか、あの変な[紙]が貼られてなかったっつったろ?」
 タマキの視線の先に目をやった上条の口から笑いが零れた。


「ハハッ………。なぁんだ………簡単なことじゃねぇか」
「まぁな。システムは簡単みたいなんだが――――って、オイ!上条!!」
 タマキの横をすり抜け猛ダッシュで学生寮へと上条は駆けてゆく。


 オイオイオイオイマテマテマテマテ!!――――クソッッ!足がまだ!!


「急げタマキ!!良いアイディアがある!」


 ぁんの馬鹿!!あいつゼッタイ警報押しに行こうとしてるだろっっ!!!!
「上条待て!それは無理だ!!」
 Oh!SI・KA・TO!!はっはっはっはっはっは~い。ヤッベー久々にテンション上がってきたぁー、よ~し魔術師の前にあの馬鹿の両足へし折っとくか。
「ゴルァア!!待てや上条ぉおおお!!!!」

 


 変なテンションのまま上条の後を追うタマキだったのだが、どうにも足が本調子ではなく――――走るというよりジョギング程度の速度しかその足は進まず。
 結局のところ前を走る上条の愚行と言って差し支えないソレをとめることが出来ず、タマキが少年のもとへとたどり着いた時には警報が鳴り響きわたり
「――――――-ッ!」
 声を荒げて上条に訴える仮面の声はかき消されており「なんだって?聞こえない」と、少年が言っている事が窺い知れた。
 せめてタマキが仮面を被っていなければ口の動きで何を言っているのか分かっただろうに・・・・・・。


 

「――――味無いっつって・・・・・・」とようやく警報が止み、スプリンラーから水が出始めると、
 先程までの苛立った気配が納まり何やら飛沫のあたる掌を数秒見つめた後
「・・・問題ない、行こう」と上条を促し、二人はエレベーターに乗り込んで七階のボタンを押すと、扉が閉まり目的の場所へと動き始めた。



「さっき何て言ったんだ」
「いや、なんでもない。気にすんな」



 なんでもなくない。
 なんで『普通の水』になってんだ!?


「そういえばさっき上に居たあのロンゲが、神道の信者や仏教徒や無宗教者を合わせると
  約四億人に達するこの国はミステリアスって言ってたんだけど、どういう意味?」
「んじゃ処女懐胎で生まれたヤツを崇めるテメェ等の思考の方がよっぽどミステリアス通り越した方々ですね、って返せ」


 水になってるのはいい事だが
 誰かが入れ替えない限りありえない
 ご都合主義にも程があ――――まて
 そんな事やるヤツ?いや、そんな事できるヤツ――――っ


 タマキはものは試しとばかり、一人心当たりのある人物に通話回線を開く
 が、取らない。
 確定。アイツがやったか・・・・・・アイツが直接『視た』のは『自分自身』と『オレ』と『コイツ』だけだもんな


「・・・・・・その発言かなりやばくないか?」
「知らん」


 賭けたか・・・・・・、
 車の件も言われていたら、たぶん気が変わってコンビニに寄らず(暇を潰さず)、上条(コイツ)にも会わず早々に切り上げていた可能性がある。
 つまりは――――


 二人を乗せたエレベーターが目的の階層のランプ点灯と、
 今までその身にかかっていた重力の圧の緩やかな薄れによって終点を知らせる。



 ――――チン



 はぁ………。
「頭痛くなってきたぜ」

 

 

 

「馬鹿な!!」
 エレベーターと通路を隔てた更に先に、魔術師は亡霊でも見るような顔で叫び狼狽えているように見えた。


『狼狽えているように見えた』


 そう、タマキの目には演技に見えた。


 というか――――演技もなにも、奴さんの『本当に立っている位置』がずれてんだから演技じゃなくて罠ってもんだよな。


「……イノケンティウス!!」
 ボッ!!と、タマキと上条の背後からクランクアップして舞台を降りた矢先、魔術師の呼び声でいきなり舞台へ再び蹴り入れられた様な役者の如く現れた人型を模したソレ。
 なんとも、見ようによっては間の抜けた様なはたまた役者がその役にまだ入りきれていない時のなんともギクシャクとした・・・・・・、
 有り体に言ってしまえば、先程と比べると月とスッポンの・・・なんとも意気消沈とした体たらくだろうか。


 焦った表情から一転、余裕の面になるところを見るに・・・彼(魔術師)は真剣に舞台に上がる道を目指した方がよいのではないだろうか?と、
 この場に際して、そんな戯りを心の中でぬかす仮面も人(上条)の事をトンマ等と言えた口ではなかろう


 閑話休題。それはさておくものとして、


『「ハハッ!おまえさん、自分のスキルに名前つけてんのかよ?そんなのは格闘ゲームだけで十分だっつーの、言ってて恥ずかしくねぇのかよ?
  そっかぁー、イノケンティウスって言うのかコイツ」
 (上条、面に出すなよ?この声はヤツに聞こえてない。お前さんにはヤツの立っている位置が左側に立ってる様に見えてるだろうが実際は右側にいやがる、
 原理は蜃気楼だな。アイツの位置は――――)』


 上条はこの二重に聞こえてくる声を聞いた瞬間、あまりに唐突さに肝っ玉がその口からでかけたことだった。
 一体どうやって喋っていやがる!?といった絶叫を心の中に捩じ込み閉じ込める事に専念していると、
 視線の向こう、魔術師の更に後方で、少年が蹴りを入れて停止させた筈の掃除ロボ達が――――静かに起動(起動状態時に点灯しているランプが確認できた)し、
 ゆっくりと……仮面が告げた、己の目で見えている左側の魔術師――――ではなく、何もない右側の空間を
「ここだ!ここにヤツが居る!!」と告げるように
『掃除ロボのカメラ』がその方角を指し示した。



『(―――さてと、)』



 タマキは、人を卑下にでもしたような台詞とは裏腹な冷静な口調で座標を示した。
 誰から先に動いたのか・・・・・・二人とも、普通の足取りで魔術師に向かって歩き出した。
 
 



「イ、イノケンティウス!!」
 そう叫ぶと同時に二人に襲い掛かってきたのだが仮面がズボンの後ろに挟んでいたインデックスの歩く教会をイノケンティウスにぶち当てると
 空しい音を鳴らせながらこの世界から消滅した。


 
「何が起こっている!!??なぜイノケンティウスが弱体化している!!!???
 イノケンティウス!!イノケンティウス!!IIBOLAIIAOEIIMHAIIB――――-」


 魔術師は、またあの言語を世界に振りまいている様子を痛々しく思いながら上条が口を開く。
 だが、ここまでくると最早茶番でしかない。



 「テメェが勝手にベタベタ壁に貼り付けてたルーン文字は――――」
『(アイツはお前の能力を見ていない、俺達が蜃気楼の方が実態だと思いこんでる―――)』


  魔術師は未だに呪文をアブラカタブラと唱え続けている、まるで精神の崩壊を食い止める為に行う防護行動とでも言うように。


 「ただそこらにあるプリンターで印刷した水性の『水に溶けやすいモノ』だよな」
『(だから、スタートは同時で行くぞ。オレはほんの先にこのフードで幻像を破壊する、そのあとの数瞬うまれる隙でアイツを仕留めろ)』
  ソレを無視するように上条が言い捨てたときには、さすがに魔術師の動きはピタリと止まってしまっていた。
 
 
「テメェがそのままコンクリに文字彫っていたらさすがにコチラもアウトだったけど――――」
『(仕掛けるタイミングはお前さんにまかせる。)』
 
 二人同時に、まさに阿吽の呼吸で走り出した。後戻り無しの一発勝負。
 
「下ごしらえがお粗末だったな!!」
 
 
「ばッ!!――――」対して魔術師焦った声を反射的に出しているようであったが――――



 しったこっちゃねぇええな!!



 その心の叫びは仮面と少年どちらのものだったのだろうか。上条が――――
 その傍らをピタリと並走し、タマキはフードを楯のように構え廊下をつっ走る。


 傷ついた少女、インデックスの脇を二人が走り抜ける。


 上条は最大の力を最後に踏み出す足に――――そして右手に――――
 タマキは一瞬、少年よりも頭二つ分ほどの距離をつけて――――


 爆発が起こる。


 タマキは左手の歩く協会で『魔術の力』で作られた爆炎を打ち消し
 上条は爆炎の衝撃をそのまま魔術師に返さんばかりの右手をもってして、全力の力で魔術師を殴り飛ばした。


 



 その、糸の切れたマリオネットの様にゴロゴロと派手に転がり仰向けになった魔術師の朦朧とした視界に仮面が映りこむ。
「まだ意識はあるみてぇだな。」
 焦点の定まらぬなか、
「またインデックスに近づいてみろ。また国の風土を貶してみろ。もしくはオマエの大好きな祈りの言葉を言ってみろ。貴様らの創造主に会わせてやる」
 魔術師にシメの台詞と共に・・・・・・彼、スティールの胸部をその足は鉄槌の如く強かに蹴り下ろされた。


 


 

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「あっやべ、結局キャッシュカード再発行しないと今日の夕飯抜きじゃねぇか………。」
 学生寮の前まで来て、今更ながら今日の最低限必要事項に気付いたアホ上。
 もう、太陽は地平線に半分浸かっている状態である。
 再発行の受付は終了している。

 朝に冷蔵庫がお亡くなりになったの忘れてた。っつか食材すらねぇよ。
 あ~~~~もう、しかたねぇか!
『あの』ビリビリ相手にしてたんだ、レベル5だぞ?レベル5。
 誰だってそんな事、思い出す暇なんてあるわけねぇじゃん!
 俺はよくやった!よくやったよー俺、
 レベル5とはいえ女の子と喧嘩(殴り合い)することも避けられたし、
 誰かを泣かせる事はしていないし!
 泣きたい人間が一人居るけどな此処に(笑)アッハッハッハァ~~ア……………
 自虐ネタはいいやもう、ん?

 学生寮の一階、階段とエレベーターの前にある管理人室という名の物置部屋のほうへ差し掛かると、
 そこに管理人室のドアを背に寄り掛かりながら
 赤いソフトボールの様な物でお手玉しているタマキの姿があった。
 しかし、お手玉というには手からわざと零したボールを足の甲にそっと乗せたりしており、
 お手玉とサッカーのリフティングが混ざった様な曲芸を淡々とこなしていた。

 技術の程は分からない、よく人の集まるような場所で帽子を置き、
 同じようなことをやっている人達を目にするが、
 技から技への切り返しがスムーズにヌルヌルと、ボールがあるべき所に、
 手や足、頭や肘、膝で弾いて反対側の手の甲から坂を下るようにして
 向こうの手の甲に到達しようとしたときに手首のスナップでまた弾いて
 お手玉しているところを見ると、
 街頭で頑張っている彼らには悪いがと、見とれてしまっていた上条であった。

「ん?金くれんのか?」と、片手でお手玉をしながら、
 もう片方で袋を広げそのまま一つ一つ放り込み終わった時に
 タマキが口を開いた。
「…えっ?あっ、いや。ごめんな、今文無しなんだ」
「別にいいよ、暇つぶしにやってただけだから」何がおかしかったのか、言葉の抑揚に少し笑いがある。……俺なにか変なこと言ったか?まぁいいや。
「さいですか。………………あの~タマキさん?出来ればで良いんですが、余っている食材などがありましたら、
 もし宜しければこの上条当麻に今日の夜を凌げるくらいの量を分けて頂きたいのですが」

「元春にでも頼め」

 間髪ねぇなコイツ……、まっ無理もねぇよな、ダチって訳でもねぇし。それに俺だって順当でいきゃあ確かに土御門辺りに
『食いもんくれぇ、というかよこせ。なに~?お主、我を誰だと思っておるのだ!あの上条当麻ぞ!
はい嘘ですごめんなさいキャッシュカード再発行しようと思ったら中学生に難癖つけられて逃げ回っちゃって気付いたらカードのこと忘れて帰宅した
 この超絶貧乏学生の上条当麻とかいう人に白米をいや玄米でもいいです
 ソレが駄目なら鰹節だけでもいいんで恵んでくだせぇえええお代官さまぁ嗚呼嗚呼嗚呼!!!!どうか!!どおおかこの通り!!!!!!!』

 ゴンゴンゴン!っと土下座をしながら地面に頭を打ち付ける様を想像し死にたくなった上条であった。

「そうしたいんだけど、アイツ補修が終わるなり青髪とゲーセン行ったみたいだから、多分今日は遅くまで帰ってきそうにないんだ。」
「………そうだな、なんか今日はアパートの住人の殆どがどっか出かけてるみたいだしな」

 ふぅーん………………ん?

「お前いつから此処にいんの?」
「一時間半」
「誰か待ってんのか?」
「そうだな、誰かを待ってるな。」
「そ、そうか。」

 ……………やっぱりコイツ、変人?

「それよりお前さんって、何か食いもんにアレルギーとか嫌いなものとかあるか?」
「は?……別にアレルギーとかねぇし好き嫌いもねぇけど。なんで?」
 ソレを聞くと、ドアに寄り掛かっていた体を起こし、伸びをしたり首や手を鳴らし一通りスッキリしたご様子。
「どっか食いに行くか」
「え?マジで?」
「マジで」

 ……メシアだ。メシアがおる。パンドラの箱並みに一粒の希望というか救いが今ここに、………生きててよかった。

「何泣いてんだ?んで、飯屋はどこがいい?」
「どこでもいいです。というかマジで?」
「くどいな。部屋行って支度して来い、どうせ三十分位かかるだろ?」
「わかった!すぐ支度してくるから」
 といって階段を小走りに走っていこうとするが途中で足を止めタマキのほうへ振り向く

「そういえば、誰か待ってるんじゃなかったのかよ?」
「……なんか全部のイベント回収すんの面倒臭くなってきたからいい、俺は含まれてなかったし」
「そうか、んじゃちょっと待っててくれ」

 うん!何言ってるかさっぱり電波でわかりません先生!イベント回収ってゲームですかタマキさん、
 こっちはそんな事より飯にありつけるという嬉しさだけで頭がいっぱいなんでチャッチャと支度をすませてこよーっと!

「あー上条」自室へ向かおうとしていた天然ハリネズミを呼び止める。
「なんでせうか?」

「お前さん火ぃ持ってるか?」

「火?」
 頭の上にハテナが付いている上条にタマキは仮面を被ってはいるが、口の位置近くでライターを付けるゼスチャーをする。
「タ、タマキさんってタバコをお吸いになられ――――」
「吸わねぇよ、ただそういったもの持ってねぇかなぁと思って」
「使わないものは持ち歩きませんけど」
「だよな。んじゃ此処で待っとくぞ」
 そう告げると踊り場近くにいたツンツン頭はわかったとだけ告げて軽い足取りで階段を駆け上がっていった。

 あそこまで喜ぶことに全力なのは彼の日常を聞いていると判る気もする。
 悪い気はしない、でもこういう事をする自分が、偽善者なのではないか?
 と思ってしまい嫌になる部分がいつも心の片隅に滲み出てきてしまうタマキであったが、すぐに頭を切り替える事で考えないようにした。

 放火犯は上条ではない……か。
 まっ、火事になるとだけだったし、今回は不審火がもとではないのかもしれない。
 自分も見回った訳ではなくずっと此処で暇を潰していたし、この寮の入り口は、中央の此処と両サイドにも階段があるわけだから、
 ここから降りてくる学生を一人も見ていないのも、まぁあるにはあるわけだ。

 それにぶっちゃけた話、火事が起こっても俺は痛手を負わない。全ての荷物をコンテナに一時的に非難させてきたからな。
 吹野が言ったことだから必ず起こるけど、今回は『見送り』しよう、時間までの指定は無かったしな。
 人が起こすにしても配線からの火事だったにせよ、これ以上、ここでボケーっと突っ立っているのもメンドクサイからな。
 ということは、天然スパイキー頭と飯食いに行って寮に戻ってきた時ぐらいに起こるのだろう。
 こういう、身に起こる危険は必ず忠告のように言ってくれるから吹野には感謝している。

………………………………………………………………………………
………………………………………………………………………………
………………………………………………………………………………
 …………………………………………………………………………………………………。





 誰も居ない、耳鳴りがしそうなほどに静寂な廊下の上でタマキの体から嫌な汗が薄っすらと滲み出てきた。


 車の事を聞いてない。













「ほ~れネコネコ、酢昆布あげるよ。」

 目的の場所に向かうため、公園の中を突っ切って歩いていると
「チッチッチッ」と女の子二人が公園に植えられている木の枝に乗っかった黒猫をどうにか酢昆布で釣ろうとしていた。

 はてさて、子供たちの為に木をぶん殴ってネコを落としてあげようか?

「………」

 待て待て、なんでスグそういう事が頭をよぎるかなオレ。

 落としたとしても、子供たちから白い目で見られるのは間違いない。
 それにだ、子供たちの呼びかけと酢昆布に興味を示さず、木の上から退っ屈そーに景色を眺めている。

 そんな事を考えながらネコを眺めていると目が合った。

 ………行こ。
 公園を抜けて筋道に入る。

 今朝、登校途中に土御門から
「………すまないがタマチン、小萌先生に一限目程遅れると連絡してくれないか。」と、深刻な声で連絡がきた。
「なに?新発売のトレーニングマシンか?メイド本か?」
「そんなところだにゃ~♪」
「OK、解った。妹の働き先に偵察に行くから遅れるそうですって伝えとく。」
「ちょッまッ!ちがう!違うよタマチン!」
「あのさ~、そのタマチンってのいい加減やめてくんねぇーか?なんかタマ○みたいで感じ悪いんだけど。」
「んじゃ逆に呼ぶようにするにゃ~♪」
「………まぁ、そんなに自爆が男のロマンだと思ってるなら別にいいけどさ。こちらもそれ相応の態度をとらせてもらうけどいいかな?
 小萌先生にある事ない事言っとくぞ?
 例えばだ、ん~~~……土御門モトハル君は義理とはいえ妹という立ち位置にいる舞夏ちゃんに手をだ」
「ストップ!!!ストップストップストップ!!!!!!!!まずは落ち着こうかタマキさん」
「ん?オレは別に落ち着いてるけど?」
「えー………っと、タマキさん。普通に連絡お願いします。」
「了解。……それにしても、お前たち兄妹………スゴイよな。」

 そう言って土御門との通話を終え、小萌先生にそれらしい事を話した。
 彼、土御門元春は授業を抜けるとき、たまにこうして連絡が来る。自分がもっともらしい『いいわけ』を作って話すからなのだろう。

 青髪ピアスと元春は、広義で言うところの『共通の趣味[オタク文化]』で情報の提供を自分がしている。
 二人とも、ちょくちょくオレのメンツとの面識はある。が、
 正直なところ。同人や遊ぶには『ちょっとした』制限があるパソコンゲーム等といったジャンルはオレ以外はついていけない。
 というか、ウチ等メンツは自分以外がほぼパンピーなので一緒に遊ぶ時は大体ゲームや読書、たまに世間話といった感じである。
 それで、メンツが帰った時にたまに居残ってて「なにかお勧めなモノはないかにゃ~♪」となるわけである。

 そういうモノは自分で掘り出してなんぼのモンだろ?と思いながらも、
 最近元春にN系の「ゲーム」を試しに貸してみた。

 …………………未だ、彼から感想が返ってこない。プレイ時間を考えて一人攻略して二人目の中間ほどであろうに。

 …………………未だ、彼から感想が返ってこない。

 アイツ的にヒットしたのだろうか?と考えながら歩いていると、裏道の細い通路を曲がった先に
 黒ネコがちょこんと座り、コチラを眺めていた。
 ネコとの距離が縮まっても逃げる様子もなく普通に通り過ぎる。
 少し歩きT字路を曲がる。
 黒ネコの横を通り過ぎる。
 つきあたりを左に曲がる。
 黒ネコの横を通り過ぎる。
 この通りはいつの間にかネコの縄張りになっていたようだ。
 T字路を曲がる。
 通り過ぎる。

 ……。
 なにかおかしくないか?

 曲がる。
 通り過ぎる。

 アレ?

 曲がる。
 通り過ぎる。

 裏道の迷路に迷ったわけではない。むしろ迷うなんて事は万に一つもない。

 通り過ぎるネコがことごとく全て黒ネコである。
 全てのネコが、
 逃げるワケでもなく、
 ただジーッとこちらを観察するように見つめているのだ。

「………。」

 ネコを通り過ぎた先にすぐ曲がる道がある。
 そこまで来てネコのネコの方を振り返ると、やはりコチラを見つめている。
 それを見届けて道を曲がる――――――。



 ――――――――視界の下の方から、黒ネコがコチラを見つめていた。
 条件反射のようにバックステップし、ネコとの距離をとるついでに先程ネコのいた通りに視界をやる。が そこにネコが居ない。
 交互に見まわそうと振り返るがコチラも消えていた。

 地に足がつく。
 ………アレ?と思い、歩いてきた道の方をまた振り返るとそこに黒ネコがただじっとコチラを見つめていた。

「…………一瞬ビックリしたぜ。」
 普通に考えるとこの状況、ホラーである。

 タマキは黒ネコの方へ近づいていくが、ネコはその場を動かない。
 ネコの前にしゃがみこみ、頭をなでようとして手を伸ばし、触れようとする瞬間、目の前からフレーム落ちしたようにネコが消え、
 後ろの方からトコトコと黒ネコが歩いて来て、目の前に座ると「ニャ~~~。」と鳴いた。逃げる素振りは、ない。
「逃げてきたな?お前。」普通に猫を抱き上げる。今度はテレポートして逃げようとはしなかった。



 予定変更。

 街の離れにある、何個か並んでいるコンテナの前まで来て、その中の一つの扉を開く。
 そこには、数匹のペットがいた。
 黒ネコを離すと、警戒することなくペットたちの輪に混ざっていく。
 多分、この中にいる最初に飼った三毛猫がこの黒ネコにオレの存在を教えたのだろう。
 オレには感情しか伝わってこないが。
 ついでに自分は服装を学ランに戻し、仮面をかぶる。
 色々と整えて、コンテナの扉に手を掛ける。
「ここにいりゃ安全だ、パズに色々教えてもらいな。」
 そう言って、トビラをしめて歩きだす。


 飼い主が飼う事を放棄したり、捨てられて野良になったりした『カレ等』の行きつく場所は保健所という名の実験場である。
 従来通り、保健所に連れてこられたり捕まったりした『カレ等』には一定期間、飼い主の募集がかけられる。
 が。その期間を過ぎると、余りものとなった『カレ等』は一斉処分される。従来通りなら。

 学園都市の『保健所と名のついた建物』は、徹底して情報漏えいを阻止しているが、処理する前にもう一つ業務内容が加わる。 
 外見は学園都市の外にある保健所と建物の大きさはあまり変わらないだろう。そういう事もあって、普通の人はまず気づけない。

 その実態を知ってはいるが自分自身、「全ての命を助けよう!」なんて大層な人間ではない。人一人が出来ることは限られている。
 情報をもっていても、それを武器にこの都市に一人で喧嘩を売るほど、「正義の名のもとに!」みたいな人間でもない。
 まずペットというか、動物、人間以外の生き物を実験台にするのは『悪』とはされていない。
「モルモットがいい例だ。そういう意味では、保健所の動物も同じような立ち位置だ。」っとも言いきれたり割り切れたり出来るほど、
 達観したような眼は持ち合わせてもいない。
 どこまで行ってもグレーゾーン、天秤はいつまで経っても微妙に揺れ続ける。それを見て、中途半端な感情を放棄して、
『生き延びた命』を匿うことにした。
 助けを求められたから、ただ助けた。
 自分自身を一言でまとめるなら「メンドクサガリ屋」なんだと思っている。
 メンドクサガリじゃなければ、とっくの昔に学園都市の外にネタをばら撒いているところだろう。
 まぁ、ばら撒こうとしたら学園都市が全力で消しにかかって今頃此処には居ないか、
 記憶を全部吹っ飛ばされているだろう……大げさに考えすぎかもしれないが。

 まぁ、そういう人間ではない事が功を奏してか、今もこの街で悠々と暮らしていけているのだろうと思う。
 知ってしまった情報は仕方ないが、自分から漁るのは稀だ。多分。

 知らぬが仏である。
「あ~メンドクセェ。」と溜息をつきながら、日用雑貨屋の中へ入っていく。

 それにしても、ウチの学生寮が火事になるとは、いったいどうやって起こるのだろうか?

 吹野の言った事は必ず起きる。
 俺の周りで起きるすべての事象を把握しているのかは定かではないが、必ずアイツが言った事柄は起きる。
 そりゃ、必ず起こるという事が事前に解れば心構えができるのだが………問題がある。
 いつ、どういった経緯でその事柄が起きるのかという事である。
『起こる事』は解っても、『いつ起きる』のか解らないのはある意味恐怖である。

「………そこまでの要求は贅沢だな。」

 そんな事を呟きながらタマキはデパートの中にある防災グッズ売り場で物をあさる。


 寮の住人による、台所周りの不注意30%

 鬱憤のはけ口に起こしたどっかの能力者[バカ]40%

 鬱憤のはけ口に起こしたどっかの無能力者[バカ]50%


 ………。
 30%の方だと楽なのだが。
 ハァ~…………あ、あった。
 プラスチックでパッケージされた目当ての消火グッズを手に取る。

 見た目、野球ボール程の大きさをしたプラスチックの球体で、中に消火剤が詰まっている。
 扱い方も簡単で、この球体を火の元に投げつけるだけでOK。ボヤ程度なら十分すぎる効力を発揮する。
 ただ、二つ問題がある。
 一つ目は消火剤を包んでいるプラスチックが、
 もし火元に投げつけても衝撃で割れなかった場合も考慮して、すぐ熱で溶けるようにプラスチック自体が薄く、
 衝撃と熱に弱い点である。まぁ、こんな物を街中やバックの中に入れて持ち運んだりしないけれど………。
 二つ目は至極個人的な事なのだが。
 この消火剤自体が使いようによっては簡単に人を殺せるといったところである。
 結構量を必要とするので、大量に買い込んだらすぐ足がつくけどね。

 まぁ、そういううんちくはよしとし、その消火ボールを四つ、かごに入れてレジへ持ってゆき、精算をする。
「いらっしゃいませ、○○カードの方はお持ちでしょうか?」と店員が聞いてくるので財布からこの店のカードを手渡す。
「いつもご利用ありがとうございます。」とお辞儀をし「お会計4800円になります。」袋に商品を詰めてゆく。
 カードを提示した時としなかった時の店員の対応が違うのであまりこの店は好きではなかったりする。
 まぁ、この会社の接客マニュアルがそうなってるんだろうとは思うけど。
 ま、どうでもいい事だけどね。

 精算を済ませ、ポイントが追加されたカードを受け取り店を出る。
 先程までクーラーの効いた店にいたものだから、外に一歩踏み出すと熱気が一気に身を包む。

 まぁ、そんな事より今何時だ?
 現時刻を確認する。

「………………四時か。」
 寮へと歩を進める。

 今から学生寮に戻って、管理人室の所で張り込みしといて、熱源探知をしたら現場に急行して、
 ボール投げつけて今日のイベント終了っと。あー、でもなぁー……
 能力者[バカ]がパイロキネシス系だったりしたら、絶対派手にやらかすんだよなぁー、ドカーンっと


 ドゴーーーン!


”衝撃波探知”

”音声発生場所算出”――――――――直線距離北西400メートル
  爆発音のあった方角に振り向き歩きだす。

「イコ、聞こえるか」すぐさまオンラインで相方に呼び掛ける。
「タマキさん呼びましたー?マンホールですー?」間の抜けたような、能天気な声が届いてくる。
「急いでアンチスキルの出動ログを見て来てくれ、回線は繋いだままにしておく」
「りょーかい♪」

”地図検索”――――――――――――音声発生付近にこれといった店は無い――――『いそべ銀行』以外は。
 走り出す前の準備運動のように軽く「トン、トン」と跳ねる。

”最短ルート検索”―――――――――完了。
 アスファルトを踏み砕くようなスタートで、弾丸のように裏道を走る。

 表通りでこんな速度で走ると一発で目につく、それは避けたい。
 それに細い裏道は、ショートカットをしやすい。
 裏路地の九十度の曲がり角を慣性の法則を無視するようにどんどん走り抜けていくが、
 その時、

「タマキさーん♪アンチスキルの出動ログを覗いたのですが、車両が二台がついさっき『いそべ銀行』へ出動していますー♪」と、
イコから素晴らしい知らせがきた。
 本部からって事は、どんなにアンチスキルがかっ飛ばしたところであと6分は来れない。

 つまり
 間に合わない。


 プチン。




 直線50メートル程の細道に出る。曲がり角は突きあたりを右にしかない。ちょうど人二人分ほどの幅である。
 ショートカットポイント変更。

 タンタンタンタンタンタンタンタンタンタンタンタンタンタン―――――――

 両側の壁を交互に蹴りを入れる要領で走りながら階段を駆け上がるように高度を上げていく。
 進行方向にある建物の屋上まであと5メートル。

 タンタンタンタン―――――――

 目の前の壁が迫ってくる。

 あと3メートル。

 タンタン―――

 壁が3メートルと差し迫っている。
 あと50センチ

 ズダン!!!!

 屋上に乗り上げ、着地と同時にスピードをさらに上げて走る。
 屋上伝いに大幅なショートカットポイントを通過してゆき、今走っている屋上の淵から見える光景は、向こう側と二分するように表通り

が広がっている。


”集中”
 時間が急激にズレ始める。

”現状把握開始”――――――――――――5メートル先に淵。今の位置から、向こう側の建物との落差マイナス3メートル。
 向こう側の建物の後ろに目的地の通りに出る1メートル50センチ幅の通路確認、横断距離15メートル。

”機動限界解除”――――――――――――自分の持てる最大出力を最後の一歩に持ってゆく。

 最後の一歩が屋上の淵につく。

 つくづく思う
 こういう時、なーーんでオレは命がけで遊んでるんだろうかって
 誰かに頼まれたわけでもないのに 
 メンドクサイ事この上ないのに
 この状況を楽しんでいる節があったりするんだから質が悪いただの死にたがりだ
 まるで死にそ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――。

”回転疾走”――――――――――――――飛び出す最後の一歩を最大限に。自分の持てる最大の効率で回転させた左足で。

 ピシッ!
 淵のコンクリートにヒビが入り。

 浅い放物線を描きながら飛び出した。

 そんじょそこ等の身体強化系の能力者が到達できない距離を無能力者が空を舞う。


 回転の効率の度合いが強すぎたらしく、そのまま向こう側の屋上を通り過ぎてしまい、その向こうにある通路まで通過したところで、
 ホルスターから鉄球を取り出し、両サイドにブレーキを掛けるように壁に押しつけて減速を調整し、通路に着地しまた走る。

 すぐに表通りに出て右を向くと、20メートル先にいそべ銀行のシャッターが道路向けに破壊されており、
 バックを抱えたギャングスタイルよろしくな男連中三人組が腹を抱えて笑っているその向こうには少女が一人。
 その少女の右袖にはジャッジメント[風紀委員]のエンブレムが張り付いている。
 確か、彼女はレベル四だったはずだ。


「…………。」

 到着時間五十秒、無駄足だったぜ、何気にストリートラン自己新か……うれしくない。
 通りをまたいで反対側は見せものでもないのにギャラリーモード入ってるし、ギャラリーの中にレベル五混じってるし。
 少し休むため、近くに停めてあったバスの方へと歩いてゆき、
 寄りかかってボケーっとジャッジメントと強盗たちのやり取りを眺めることにした。

「あ~、驚いて損したぜ。なんだ、ジャッジメントはジャッジメントでも中坊かよ。」と、笑いながら余裕綽々な感じの強盗たち。
 あー全くだ。全力で走って来たのが馬鹿らしい、というか笑っちまうほどオレの出る幕じゃないな。
 そんななか、強盗犯の一人がジャッジメントにやる気満々で歩み寄りながらプレッシャーをかけている。
 つもりなのだろうが、かけられているであろう当の本人は、つまらなさそうに眺めている。
「お譲ちゃん、一人だったのが悪かったな!」なんて台詞を吐いて、男は彼女に殴りかかろうとしているのだが、
 正直殴るのに弓引きはどうかと思う、
 そんなんじゃ「今からフルパワーの力で思いっきり力任せに攻撃しますので、どうぞよけて下さい」
 といっている様なものだろう。
 彼女はその拳を通行人とすれ違う様な自然且つ最小限の動きで左によけながら、
 男の重心が前に乗りすぎている右足に足をかけると同時に相手の高等部に手をかけるとそのまま弧を描くように足と腕を廻す。
 すると男は中途半端な宙返りをし、背中をコンクリートに叩きつけられた。

「――――――――――――ッ!」

 男はまともに受身を取れずに背中を強打した為、当たり前のことだが激痛であろう。
 肺からも酸素が一気に抜け出ていったような感覚に陥っている事だろう、
 それに加えて横隔膜が麻痺したようにうまく呼吸が出来ないのだろう、横たわったままピクピクもがいている。
 その様子を見ていた残りの強盗犯たちが目を丸くしている間に、
 ジャッジメントは先程までの脱力したような動きと緩急をつけるように残り二人に走り迫る。

 迫られた男がそのプレッシャーに冷静に対処することが出来ず、パニックを起こしたまま、条件反射で前蹴りを繰り出すも、
 簡単に右によけられ、軸足を刈られその場で倒れる。
 それと同時にジャッジメントがその場から消えると、先程まで彼女が立っていた空間を炎の玉が薙いでいった。

 パイロキネシスである彼の視界からジャッジメントが一瞬で消えうせた。
 確実に当たるはずだったのに!どこ行きやがった!?
 瞬時に辺りを見渡すがどこにも居ない。
 あれ?っと首を傾げそうになった時、背中に衝撃が走り押し出されるような感じに前によろめくが、
 すぐに衝撃のあった方を振り向くと七メートルもしない先に余裕綽々な態度で彼女が立っていた。
 コイツ…わざと手ぇ抜きやがったな。今ので終わらせきれたのにワ・ザ・ト!!手抜きしやがったな。

「テメェ…」男の中で怒りが物凄い速度で加速してゆき、両手には先程よりも大きな炎の玉を発生させ
「ふざけるなぁぁああああああああああ!!」
 彼女めがけて、炎の玉を連射していく。
 が、彼女はその攻撃にたいして男を軸に円をえがくように走ってさけていく。
 しかし六発程連射してきた所で標準が正確になってゆき、次弾が黒子めがけて飛んできたが。

「遅いですわね。」

 男は背後から声がしたこのジャッジメントの能力が何なのか分かったときにはもう遅く、視界は灰色一色になった。
「なっ!?」
 一瞬の出来事に、壁に張り付いているのかと思っていると腕が動かない。
「アレッ?」足を動かそうとするが途中で壁に貼り付けられる。
 顔を上げるとそこは壁なんかではなく、アスファルトであり腕に視界をやると、
 服の外側と内側の所々に細い鉄の棒が杭のように磔にされていて身動きが出来なかった。

「ま、強盗をするようなゴロツキがまともな仲間意識など持ち合わせているわけありませんわね。」と、業務終了の台詞を吐く。

 蔑んだ事を言ってはいるが、彼女の内心はヒヤリとしていただろう。
 地面に磔られているこの男、仲間がピンチに陥っていた時に助けるのでなく、その時できた相手の隙をついて攻撃してきていた。
 その点は評価するのだが、ジャッジメントが空間移動しドロップキックをくらった後の立ち回りがよろしくなかった。
 連射速度と威力からいって、彼の能力はレベル三。
 しかもだ、ジャッジメントの立っていた後ろには柵を越えてギャラリーが出来ている、
 この男、先程の連射時に意識的に初弾を相手の足に向けて撃っていたのだ。
 そして相手が円を描いて避けて、ギャラリーが射線上に入らなくなるにつれて狙うポイントがだんだん上がっていっていた。

 見境の無い人間だったらお構いなしに初弾から相手の後方の事など気にもとめず上半身を狙って撃っていたかもしれない。
 手段を選ばない人間だったなら、その時点で交渉していたであろう。照準をジャッジメントからギャラリーに移し
「下手な真似をしたら撃つ」と。

 この男、戦うには悪く言えばおめでたい、良く言えば優しすぎたのである。

 しかし、このテレポーター容赦が無い。磔にされた男、ある種の拷問である。
 なぜかって?夏場の炎天下の中アスファルトの上にうつ伏せになってみるといい。
「アツッ!アツッ!アツアツアツアツイ!」と熱が伝わってきたのか地味な悲鳴をあげる男。
 なんだかその間の抜けた叫び声を皮切りにジャッジメントの緊張が解かれたが――――。

 ドアが閉まる音が耳に入り込み、黒子が音のした方向に顔を向けると
 銀行近くに停めてあった車のエンジンが起動し我々がいる場所とは反対の方向に走って行き、
 そのまま逃走するのかと思いきや、滑られせこちら側に向けると、なんの躊躇いも無くアクセル全開で走ってきた。
 のだが、オレの視界の先にレベル五が体中から帯電させながらコイントスをしながらジャッジメントに
「ダチが世話んなったから俺があの走ってくるバカぶっとばしってもいいよな?」的なことを言ってやる気満々のご様子。
 終わったな……、さて、帰るか。
 と、タマキはレベル五に背を向けて歩き出す。
 さーて、寮に帰って火事を防ぐとするか。
 バン!!!!と、後方で銃でもぶっ放したような物凄く大音量の乾いた音が鳴る。
 あーでも、さっきのパイロキネシスみたいな能力者が犯人だったらかち合ったときにめんど――――――――

 ……へっ?
 薄暗くなった。

「あぶない!」とか「きゃーー!」的な、ギャラリー側からどっと叫びがあがる。

 おまけに
 オレの反射計が、後方空中から降ってくる物体を捉えている事に気づく。あと3メートル程の距離で。


 避けられない。


 なら。


 タマキは降ってくる車に振り向いて。


 触れた。


―――――――――――――――


 辺りに凄まじい衝突音が、
 ビルとビルの間で逃げ場を探し波紋状から乱反射に飛び交い去って
 しばららく経つが、
 ギャラリーは未だに声を上げる者も動く者もおらず、
 静まり返っている。

 奇跡を目の当たりにしての静観ではないし、
 悲劇による静寂ではない、
 そもそも悲劇なんて起きていない。
 ただ、人を乗せた技芸的なマテリアルが道路の真ん中に垂直に、
 柱のように一本立ちし影を作っているその中に、
 一人の人間が外傷もなく立っているだけにすぎなかった。

 その立っている人間とオブジェとの距離は1メートル弱という、
 当事者ならわりかし肝っ玉を潰しても非難されないような状況の中、
 学生服で黒く染まり、仮面を被った人物は
 のそのそと巨人に直下型ブレンバスターでもキメられた様な
 車の運転席の割れた窓に少し腰を下ろしながら手をかけ、
 勢いよくドアを引っぺがすと、
 中で伸びている強盗犯を外に引きずり出し、
 車が炎上しても安全な、近くの遮蔽物の陰に転がした。

 警備員(アンチスキル)の車のサイレンが
 もうそこまで来ていることを知らせている。

 車の下敷きになりかねなかった人物が
 路上での見世物が終わり、自然と人々がはけて行くそれの様に
 裏路地へ入って行こうとするときになって

「――――あっ、待ちなさい!!」

 ようやく黒子は我に返った。
 しかし、声をかけられた人物は
 聞いていないのか聞こえなかったのか、
 そのまま裏路地のほうへと入って行く。
 逃すまいとすぐさま黒子は仮面の男が
 入っていった裏路地へとテレポートしたのだが、
 そこは袋小路になっており、ただ壁が聳えるだけで
 そこには誰も居なかった。

 黒子が元の通りに出てきて、
 こちらの方へと歩いてくるのをみて、御坂は声をかけてた。

「黒子、さっきのは?」
「その先が行き止まりになっていて誰もいませんでしたわ。
 それより御姉様ぁ~」と、御坂の問いに対して
 素っ気無い感じに答えていたが、
 傍まで来ると満面な笑みのまま御坂の頬をつねる。

「イタ!?イタタタタ!ちょっと!なにすんのよ黒――――」
「御姉様。先程のレールガン、向かってきた強盗犯の車を
 吹っ飛ばすのはいかがなものかと思うのですが?」
 頬をつねりながら口元は笑っているが目が笑っていない。

「イタイって!放しなさいよ!!」
 言われて素直につねっている手を離す黒子だったが、
 御坂は痛みで声を荒げる

「私が何したっていうのよ!別に悪いことはしてな――――」
「御姉様、御姉様はレールガンを放つと、
 車があのように飛ぶと言うことを事前に念頭においていましたか?
 一般人がその放物線上にいはしないか回りを確認していましたか?
 居なかったにしろ、
 もしあれ程のスピードと高さで回転している車が落ちた場合、
 中に乗っている人間がどうなるか考えなかったのですか?」

「うっ…………。」

 グサグサと正論を言われ、バツが悪いといった顔になる。
「それに先程もも押し上げましたが、
 此れはわたくしが居た以上、ジャッジメントの管轄ですの、
 相手をただ倒せばよいだけの路上の喧嘩とは違うのですよ御姉様。」

「………でも、アイツ等は犯罪を犯したわけだし…っぁ――――」
 散々ないわれ方をして面白くなくて俯きながら
 そんな言葉をポツリ零してしまった瞬間に
 自分の踏んだ地雷のでかさに気付いて顔を上げる

 が。

「ん~、そうですわよねぇ~。
 御姉様はわたくし達(ジャッジメント)の様な、
 細かいことはあまり得意ではないですし」などと
 遮蔽物に横たわる強盗犯の所へテレポートしており、
 御坂に聞こえるように大きな声を出しながら、
 磔にされている男の方に一箇所へ集めてゆき。
 集め終わると御坂の前に現れた。

「それに、あの場合は仕方なかったですわね。」
「………黒子。」
「なにせ、自制が利かなくなった状態のレベル5なんて、
 わたくしには止められようもございませんもの。」

 向こうの曲がり角からブレーキ音を撒き散らせながら
 一台の車が飛び出してきた。

 現場に到着すると、
 トラックの中から武装した男女数名が出てきて、
 その武装集団の一人が
 黒子の袖に風紀委員のエンブレムを捉え、話しかけてきた。
「状況は?」
「周りに居た一般人が軽い怪我、銀行から出てきた
 強盗犯と思われる人物三名と接触後、戦闘に入り、
 その後取り押さえました。
 銀行から出てきた人間は今のところこの三名のみです、
 (銀行の)中の状況は未確認です。
 現場の引継ぎをお願いしたいのですが……そちらの人数が――――」

 足りないのではと言いかけて、
 もう一つサイレンが近づいていることに気付く。

「――――……それでは引継ぎお願いします。」
「ハイ了解。お疲れさん!」警備員は路上に立てられた車を見て
 経緯を聞こうとしたが、黒子の隣にレベル5が居るのを確認して
『あ~~、アンタがやったのねハイハイ』と言ったような顔になり
 車に関して何も聞かず、
 他の隊員達がとりあえず増援が来るまでに、
 強盗犯を車に収容作業している方へと歩いて行った。

「さてと、あとは警備員に任せましょう。
 御姉様、わたくしも一旦本部に戻って
 書類作成をしなければならないので失礼します。初春!」
 ギャラリーの中から
 名前を呼ばれてビクリと肩を震わせた人物がこちらを向く。

「それと御姉様。」
「ん?なに?」
「……やっぱりいいです。」
「なによ黒子。」
「何でもありませんわ。」
「?」
「それでは御姉様、一旦失礼いたします。」
 そう言いながら、
 初春に本部へ戻る意図のジェスチャーを伝え歩き出し、
 初春も黒子の方へと歩いていった。

 いつもはキの字一歩手前のようなハイテンションな
  HENTAI KUROKO なのに
 風紀委員の業務中は立派な人間に見えて仕方がない御坂だった。




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[08/18 ぽ村]
[08/03 おかのん]
[08/03 ぽ村]
HN:
一り
性別:
非公開
趣味:
コレといって固定はないです
自己紹介:
超弩マイペース。
自分のペースを乱されると拗ねて
寝ます。
血液ゲノムで天然B型と発覚
「こ、こいつ…先の行動が読めねぇ(汗)」だそうです
血液ゲノムとか信用すんな。
血液型占いとか信用すんな。
人を信用すんな