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「ha!ha!ha!ha!ha!ha!ha!ha!ha!」

 あるいは、少年の心の声をストレートに外界へとコンバートしたとすれば、
 それはいつぞやの中心で愛を叫ぶソレを軽く超越する声量をもってして浮かれていた事であろう。

 上条当麻、そのひとである。

 そういう気持ちは外食先のメニューを開いたときまでとっておこうと楽しみを待ちわびる彼は
 自分の部屋の階まで駆け上がると異変に気付いた、とはいってもどうと言うものではない、
 いつもの風景とはちょっと違った光景が広がっていたのだ。

 自室の手前側で清掃ロボが5台程一点に向かい、
 まるで椅子取りゲームでもしているかのようにせめぎあっていた。
 少年は不審に思いながら近づいて行ったがそれはすぐに払拭された。
 遠目ではあるものの、その清掃ロボ達の間から銀髪と白い服に金の刺繍が施された特徴を
 垣間見る事ができたためその人物を安易に特定する事ができたからである。

 今朝自分の部屋のベランダにぶら下がっていたインデックスと名乗った少女に間違いなかった。

 食い気に猛り燃費の悪そうな
 都市の外からやって来た異邦人は自分と分れた後、
 結局のところ捜していたフードを見つける事ができず途方に日も暮れ、お腹も空いて、
 今朝知り合ったばかりの少年に何か食べさせてくれと待ち伏せしているうちに限界が来て
 冬眠にはいったところをロボットがゴミと誤認して今の状況が出来上がったのだろうと


 街の賑わいが遠くで聞こえてくる。
 目の前ではお腹を空かせた小さな猛獣が立てているであろう寝息をかき消すように清掃ロボの起動音で満ちている。
 ごくありふれた日常の中にたまにあるこういう瞬間に
 少年の心の中に穏やかな風が吹き込んだ。


 コイツ、また寝てやがる。てか、今朝出会った時も寝てたよな?なんと言うデジャブ!?
 俺が起こしたら貴様は「おなかへった」と言う。

 劇画タッチになった少年の取る奇妙なポーズと、
 その周りから不穏な音が鳴り響いているのはあくまで『彼の頭の中』だけである。
 元ネタをしっている人間が通りがかればあるいは・・・。

 そんな特に意味の無い一人漫才を早々に切り上げ、現実に引き戻す。

 よし、下にいる玉城に事情を話そう頭を下げよう飯を食わせて貰いましょう
 俺の土下寝が火を吹くぜ!

「おーいおーきろーいそこの超絶空腹文無し冬眠デックス――――」
 san値が0になりかけた。
 言葉と足と心臓が凍りついた。
 目の前の少女は寝ていたのではなく倒れ伏せていた、背中の腰辺りに赤い線が引かれていた。
 それが血であると理解したのは数秒後

 能力者にやられた?
 いや、彼女に危害を加える動機が無い




 では誰だ?






 街から聞こえてくる雑踏や人の賑わい。
 そう云った、ありふれた日常にあるべき筈の音が
 千里ばかり―――もしくは其そのものが幻想の類である様に
 微かに僅かに薄れて聞こえてくる。

 今まで見知った現実が薄れていくというのに対し、
 目の前の惨状と・・・機械の発する音だけが木霊するこのちっぽけな空間は――――
 強烈な現実をこの少年に投げてよこした。


 上条よ、
 お前は気付くのが遅すぎた、とわいえ誰もお前を責めることは出来るはずもない。
 事前の事柄を思えば気付けという方に難がある。

 その少女を目に捉えた時点で一種の疑念めいたモノを抱く事が出来る人間がいれば、
 そいつはまともな人の道を歩いていないものか偏屈狂か陰謀論者だ。
 若しくは、その時点で全てを看破する者がいたとすれば、
 その者は一等の切れ者か生まれ持っての透徹慧眼・・・・・・世間一般で云うところの
 天眼通の持ち主でもなければ無理な状況であったのは間違いない。

 良し悪しではないが、
 今の今まで気付く事が出来なかったのは
 この上条という少年が一般の感性(諧謔的な部分はおおいに道を逸れているようであるが・・・)を持っている世間一般の[普通の人]なのでしかたない。


 仕方ない、確かにしかたがない。


 が。
 しかし其れが今この時、この場所にとっては厭うべきものである事も間違いない。

 上条よ。お前は確実に踏んだのだ、今まで周りの人間を笑わせてきたものとは方向性がまったく異質なソレを。
 二度踏む機会さえ、踏むための身体全てを吹き飛ばしてしまうほどの威力を有した地雷の轍を。
 お前は越えてしまったのだ、最後の最後の臨界点、日常と非日常を確かに区切る不可視な境界線を!

 しかし、ここまでは凡人であるはずの彼は、
 ここにきて凡夫の其れではなくなってゆく。

 先ず少年が取った行動は、目の前の少女に群がっている清掃ロボの排除。
 なのだが、この機械やたらと機体が重い、その重さ四十弱と聞くと膂力に多少覚えのある者は持ち上げられるように思えてくるのだが、
 なにせ取っ手として引っ掛けられるような部分というのが浅すぎて使うには不十分なのだ。
 従来ならこの自立的に動く円柱を五本持ち上げないしバランスを崩そうと退かしに掛かっていただろう。
 この街に住むほとんどの住人がそうした筈である。
 しかしこの少年、この動く円柱五本のどれも全く同じ箇所を足で小突いた(といっても力の度合いは強いのだが)だけで目の前の機械を無力化したのだ。

 彼自身この機械の構造に精通していたというわけではなく、
 この機械の上に鎮座し意のままに操る隣人の妹君から以前雑談の際に教えてもらっていた、というのはまた別のお話。

 背中の切り傷はそこら辺にあるようなナイフや包丁といった規格から外れてる、最低でも刃渡り六十ってところか
 傷が深いのにあまりにも綺麗過ぎる処から、叩き切るような物ではなくて文字通り一閃・・・
 俺の頭ん中で浮かんでくるのって、実物見たことねぇけど一つしかないんだよな

 それに、と。
 インデックスの事態に気付けなかったのは先程までせっせと清掃ロボ達が
 彼女の背中から流れ地に伝う血を清掃し続けていたためなのだという点にも気が付く。



 機械の無力化云々は、事前知識があったといえばそれまでなのだが(しかし実行したのは之が始めてである)
 この事態にパニックを起こさず、悲鳴を上げるでもなく、
 かといってただ戦慄し声をあげる事ができないという事でもなく、
 瞬時且つ冷静に思考を働かせて見せていた。

 この上条少年、彼特有の[不運な出来事に見舞われる体質]は
 滑稽な出来事に見舞われるのもさる事ながら、
 こう云ったネタで片付ける事が出来ない危機的状況下に出くわす事もこの呪われた体質の特徴の一部である・・・・・・が故に、
 本人の意思ではないにしろ一般の者より踏んだ場数が多いのであった。


 しかし、そこまで冷静であった少年は、
 なぜ少女がこのような深手を負ってまで自分の部屋の前まで足を運び、まだ息はあるが意識の有無が確認できぬほどに衰弱しているのか?
 という原因が、[全て自分に起因している]という事に気付き、自分自身への憤りをその顔に隠す事をしなかった。

 何故少女はここに戻ってきたのか?
 助けを求めてか?
 よもや上条少年の右手にぶら下げている鞄の中に何が入っているか忘れたわけでもあるまい。

 [歩く協会]といわれるその服は、
 彼女の口から絶対の防護服であると同時に追っ手に居場所の割れてしまう代物だと言っていたのを忘れてしまったわけでもあるまい。


 彼女は途中で気付いたのだ、フードは清掃ロボにすわれたのではないのだと。
 まだあの部屋にフードはあるのだと思い当たったのだろう、
 そうでなければこのような傷を負ってまで少年の部屋まで足を運ぶ事はないのだ。

 そう、彼女は助けを求めてきたのではない。
 彼女は少年を助けに来たのだ。
 そうする必要があるのは多分、関わった者は追っ手により問答無用で消されるからではなかろうか。


 少女は伝えようとしていたのだ。
 フードを手放して早く逃げてくれと。


 しかし、そのドアが開かれる事はなかった。

 それ以前に、そもそも彼女が背中を斬られる羽目になったのは、
 今朝がた少年の右手で彼女の着ている歩く協会の効力を打ち消してしまったからなのではなかったか。


 自分の行いが巡り巡ってこの結果を生んだ事に気が気ではなくなりそうになったが、
 目の前に倒れている少女を見て、また別の、やり場のない怒りがこみ上げてきた。

 なぜ戻ってきた!
 なぜ元凶である自分の所に、そんななりになっても尚警告しに戻ってきた。

 そのやり場のなかった怒りに方向性が定まってゆく。

 なんでこんな行動の出来る少女に対して、執拗に、背中を斬りつけてまで――――!!
 そこで少年は文字通り気が気ではなくなった。
 怒りの化身と化していた。

「誰がこんなことしやがった!」

 とはいえ、少年はまだ青かったといえばそれまでかもしれない。
 しかし、この少年は別に其れを美徳としているわけでは毛頭なかった。
 純粋な少年の叫びであった。


 が、時間切れである。

「僕達、魔術師だけど。」

 声の方へ振り向くと、そこには魔術師と名乗る黒を纏った男が立っていた。



 ―――――――――――――――――――――――――――――――――



 その男は立っていた。
 魔術師と名乗ったその男の身の丈はニメートルを越しており、赤の長髪に外国特有の顔立ちを有し、
 その右目の下にはバーコードの様な刺青が刻まれ、両手のどの指にも指輪が嵌められたその手は新しく煙草を補充するべく箱をたたき、
 足先まで伸びる黒いマントを羽織るその容貌は街中であれば誰もが悪い意味で目を引くであろうというほどに現世ではかなり浮世離れしていた。

 これだけを述べると目の前に現れたその者は、最近巷で流行の[こすぷれいやー]という人種で片付ける事が出来なくもない。
 実際、学園都市と名のついたこの閉鎖された箱庭には
 現代の感性を持ってしてもいささか変わった格好の者を街中で見かける事も少なくないのだが、
 それ等はあくまで己が個性を表現しているだけに過ぎない。

 対して眼前の者は、個の表現といったアイデンティティーの類というより作業服、仕事としての其れの雰囲気が・・・…否、雰囲気などではない。
 洗礼はされていた、しかしその服の所々に過ぎた年月と綻びを見る事が出来たからである。


 先述の外国特有の顔立ち云々の通り、
 先ず間違いなく外国の者の筈なのに言葉は[こちら]のモノで返してきた、
 しかも不慣れなイントネーションは一切混じる事はなく完璧に発して見せていた。

 眼前の黒服がどこの国の出の者なのか上条にはあたりをつける事が出来なかったが、
 少女が追われている目の前の組織の規模は大体把握する事は出来ていた。


 が。
「マジュツ・・・・・・シ?」上条少年は男が言った言葉の意味を正しく理解出来ていないように、
 今まで歪めていた顔が読解不能な言語をよこされ、怒りは収まっていないが故に妙な顔つきになっていた。


 そのさまから何か探ろうとするような目つきで少年を観察していたがすぐに何かを諦めたようで、
 男の顔は落胆と苛つきを露にする。
「・・・・・・・・・まったく。[人払い]を突破して来ているからどんな奴かと思えば、魔術のマの字も知らない全くの[部外者]ときたか。」
 その口調からは業務につき物のアクシデントであるかのようである
 ・・・・・・否、本人からすればまさにソレだ。

 この魔術師某は愚痴でさえ日本語で通すのか、いつの間にか自分の知らない内に、
 世界語は英国語ではなく日の本語にすげ変わってしまっていたのか
 と、冗談半分に思うところこの上条某、
 実はかなりの修羅場を潜ってきたのか、はたまた生来緊張の二文字が欠落しているのか
 他の者が彼の懐抱を知る事が出来れば言わしめていたであろう。


 だというのに、よせばいいのにこの上条当麻、
 苛ついている業務員をわざと刺激するかのように相手の言葉を拾って返す。
「[人払い]?なんだそれ?・・・・・・!!まさかアンタ上に金渡して此処一帯に報道管制敷いたって言うのか!?」
 相手が嘘を付く可能性は十分あるが、上条は最重要で確認しなければならない事があった。


 今度は魔術師がキョトンと間抜け面を晒す番であったが、
 それも目の前の少年が、勘は良いが大きな勘違いをしている事に気が付いたとみるや。

「魔術に身を置く僕から見ても神道の信者や仏教徒や無宗教者を合わせると
 約四億人に達するこの国の方がよっぽどミステリアスだと思うんだけどね。」と、クツクツ笑いながら一通り流暢な日本語で捲くし立てた。

 上条は相手から情報を引き出すため、最初から芝居を打っていた。

 前後の態度と台詞により、上条の頭は異物の信号を消化するのに暫し遅延になっていた。
 自分で導き出した答えではあるが・・・其れを鵜呑みにしろと言うのはあまりにも、常識的に考えてその確立は0パーセントに等しかった。
 目の前の人間は、魔術はある物なのだと裏を返せば暗に言っているのだった。

 少年は聞いた事がない
 少年は見た事がない
 少年の頭は認知する事を拒んでいた。
 だが不意に、この右手が少女の服に触れたとき確かに[ナニカ]を打ち消した感覚があった事を思い出した。
 其れがあったから彼女が忘れていったフードも、無意識のうちに『そのナニカを打ち消してはいけない』と左の手で掴んだのではなかっただろうか?
 自分の頭でこうも悩んでいる遥か以前に、自身の本能はそれを悟っていたという事に少年は気付く。


 そうだよな、確率の問題じゃねぇ・・・・・・俺が知ってる事だけが『絶対』じゃねぇよな。


 目の前の少年の固まった表情に貶し交じりのジョークが理解されていないと見たのか、
 はたまた自分で言って自分で笑っている姿を客観的に見て捉え馬鹿らしくなったのか、
 もしくはその二つが交じり合い、いつしか業務員の小休憩で寛いでいた顔つきが仕事の顔に切り替わっていた。
「・・・・・・それより、そろそろ退いてくれないか?」

 ほら、ござった。
 このまま異国同士の風土について舌戦に持ち込む事叶わないといったように上条、次の言葉も安易に想像できた。

「ソレ、回収したいんだけど。」

 読んで字の如く地の果てまで彼女を追ってきた者なのだ、しかも組織として動いている人間だ。
 しかし、
「・・・・・・回…収・・・・・・・・・だと?」と、みるみる上条の顔は歪み青筋が立っていく。
 別に、少年にこれといって今の状況を覆す力はない。どの様な事を言うか分かっていても言葉は選べと魔術師にいってやりたい。
 この少年、有事の際には無駄に頭を回すことが出来るのに[これだけは引けない]モノを本人の無自覚で有しているのだ。
 それも、傍から見れば超が付くほどの不器用さで。

 己も人間。
 相手も人間。
 では、自分の後ろで背中を斬られ、額から・・・白の修道服から覗く手足から汗をにじませ、浅く息をする事しか出来なくなっているのはなんだ?


「そうだよ回収するんだよソレ。」少年の逆鱗に触れているのは猿だって分かっている。それでもその少年を前に平然と魔術師と名乗った男は続ける。
「そのために僕達は遙々こんな国まで足を運ぶ事になったんだよ、まったく骨が折れるよ。」そう言いながら男は両手を広げ天を仰いだ。
 そのどこまでも手前勝手な様に上条
「ふざけんなテメェ!!お前らの狙いってぇのはあくまでこいつが持ってるっていう十万何千冊かの魔道書の方だろ!!それを差っ引いてもお前等、寄ってたかって年端もいかねぇ女の子追っかけ回しやがって」
 感情を押し殺さんとしてその口から吐かれる言葉は今にも相手の喉下を喰い千切らんとする勢いにまで達していた。
「ああ、その十万三千冊なんだけどね。」目の前の殺気を軽く無視して何かを思い出しているあたり、絶対的な実力を備えている物の対応である。
 鼻から少年を敵視などしていないのだ。


「ソレの頭の中にあるんだよね。」


 上条は止まった、身体と思考が。唯一動く心臓の鼓動がこの空間でひどく主張していた。


「なんでも。一度見た物は一字たりとも欠かす事無く墓場まで持っていってしまう生まれつきのモノらしいんだよね。
 そんな特殊な能力を持った人間が十万三千冊もの魔道書を現に頭の中に保有してる・・・・・・全てが廃人クラスだって云うのに、中には第一種臨界不測級の物まであるときた。
 まぁ、ソレ自体には魔術を行使することは出来ないが・・・・・・君に判りやすく言うと核爆弾が不発の状態で野放しになっているといったところかな?」

「・・・・・・だから、目録ってか?」

 なぜ少年が酷く顔を顰めてゆくのか魔術師は分かっていた。

「君はソレを人間として見ている節があるみたいだけど。ハッキリ言って、君が思っている以上に危険なものなんだよ。
 その分野の人間だから判る事ってのもあるだろう?まさにソレだ。それにね、先刻は回収なんて言ったけど、正確に言えば保護だ。」

「持って回ったように饒舌になりやがって、保護なんて後付がましいのも大概にしろ!!結局はコイツの保有しているモノを独占したいってだけじゃねぇか。
 その為なら背中を斬りつける様な連中の方が人間じゃ――――ねぇよ!!」
 もう我慢の限界といわんばかりに上条は七メートル程の距離を低姿勢で四歩で縮め(右は鞄を持っていたため)左の拳で鋭く殴りかかったのだが、
 その拳は空を切り魔術師はすれ違い、少し互いの距離は広がったものの立ち位置を入れ違うようになっていた。

「君、喧嘩強いだろう?」そういって銜えていたタバコの端に人差し指をかざすとその指先から火が、ライターの代わりを果たす。
「・・・・・・・・・。」やっぱりわざとだったかと上条は心の中で毒づいたのと同時に絶望した。

 上条が殴りかかった・・・正確に言えば殴ろうと判断したのには訳がある。
 インデックスがナガモノで[斬られて]いる以上、帯刀を上条は警戒していた。
 しかも相手はマントを羽織っていたため、腰周り及びその内側に武器を携えている可能性がありアクションを起こせずにいた。

 先程の天を仰ぐといった、やや演技がかったポーズで刃物類は所持していないと判断したがインデックスがベランダに落ちた経緯を忘れてはいなかった。
 銃の所持――――であるが、この時点で背中か腰の後ろの方にしか銃をしまう場所がないと分かった事(不自然な膨らみを認めなかったため)。
 それにつけて、相手はこちらを警戒どころかポケットから取り出したライターでタバコに火を両手で囲うようにしてつけようとしていたのだ。
 これ以上の隙はなかった。
 その状態から武器(銃や刃物)がもし背後に携帯されていたとしても、
 この距離を瞬時に縮めてくる相手にソレをマントの脇から手を伸ばして掴み、前面に構えないし薙ぐのにどれ程の時間を要するであろう。

 上条の足元に先程まで魔術師が手にしていたライターが転がっていた。
 ブラフ。
 相手していない素振りをしていたがその実、きっちり警戒していた。
「君の予想通り、彼女を撃ったのも斬ったのも僕じゃない。」
 しかもしっかり気付いていた。
 しかしそんな事よりも先に周りを瞬時に見渡す上条、魔術師はその様子に
「ああ、彼女ならここに居ないよ。ソレを斬ったとたん急に体調を壊してね・・・ほんと、戦闘だけで言えば僕より上だっていうのに」とつまらなそうに呟く。
「だから、此処には僕しかいない。回収して撤収するだけの仕事にもし魔術師が一人二人障害が立ちはだかっても、その程度はどうとでもなるからね」
 なんだか魔術師の口調が世間話の様にどうでもいいといった様にベラベラとまわりだしていた。

「・・・・・・・・・」上条は無言のまま戦闘態勢を解こうとはしないのを、ついに魔術師が諦めた。
「・・・さて、そっちはどうやら全て話しても諦めてくれないみたいだし、一応古臭いしきたりに従って名乗らせてもらう。っといっても魔法名というより――――」

 話を切るように上条は先刻とは比べ物にならない位に弾丸の如く距離を縮めんと駆け出していた、
 目の前の魔術師が名乗り終えれば全てが終わると上条の中の本能が警告音を出したからだ。
 今までの魔術師の余裕に満ちた態度はまさにこの数秒後のそのナニカだという事が間違いじゃなくなった。
 互いの距離の十二メートルを三歩で半分に縮める。

「――――Fortis、これが僕の殺し名だ」
 先程まで緩みきっていた魔術師の顔が鉄のように引き締まる。
「Kenaz<炎よ>――――」そう言い放った魔術師の腕の先に炎の大剣が生み出された。

 その炎を前に上条は恐怖に駆られ、その全力で駆けていた足の甲を杭で穿たれたように止めてしまった。
 上条は炎の放つ光と色の度合いからその大剣がとんでもない高温だという事は分かったが・・・・・・いったい何度に達しているものなのか読む事は出来なかった、
 しかし彼の足を恐怖心で止めたものは大剣の形をした炎が発する光ではない、『音』だ。
 音の類だけで言えばガスバーナーのようであったが、これほどに距離が離れているというのに大気の震えが肌に伝わってくるほどの轟音だったのだ。
 咄嗟に、反射的に、上条は両の手で顔を庇った。

「――――PurisazNaupizGebo<巨人に苦痛の贈り物を>」
 その様子を見て魔術師は笑った。笑いながら少年へと己が生み出した大剣を横薙ぎに叩きつけた。
 少年は大剣から鞄を盾にするように当てるところまでで姿を消した。爆音と轟音と少年の立っていた辺り一面を、業火という闇の中に。

 人間を消し屑に出来る炎を前に、恐怖に駆られた者が反射的に、本能的に取ってしまう行動だった。

「ちょっとやりすぎたかな?・・・関係ないか」

 その区画は燃え続けていたが、魔術師はすぐさま少年がいた場所に立っている炎から背を向ける。
 安否を確認するまでもない、先の大剣の炎―――3000℃余り。2000℃以上で人間は『焼ける』ではなく『溶ける』らしい。
 生死の確認をするまでもなかった。

 それより、と。
 魔術師はインデックスの傷を見る。あの少年が、頭は回っても馬鹿で良かったと心底思う。
 人質として――――盾として彼女を使われていたら厄介だった事には違いない。

 それと、と。魔術師は心の中で呟き、インデックスが倒れている側のアパートのドアに立つ。
 インデックス。彼女が何故ここに戻ってきたのか魔術師は見当が付いていた……大方あの少年の部屋なのだろう。
「……フードはこの中か」もちろん魔術師は少年の部屋の鍵など持ってなどいない。少年が持っていたとしても――――。

 炎の方へ振り向き暫し眺めたが、あきれた様にドアに視界を戻す。
 やはり壊すしかないか?と魔術を行使する前に嫌味を吐いた。
「……まったく、最後まで迷惑な奴だよ君は」

「おいおい、家主の目の前で空き巣かよ?」

 固まった。某アリナミンCMではないが魔術師は確かに身も心も固まった。
 煉獄の炎の様な中から聞こえてきたのだ。

 轟々と燃える炎と、濛々たる黒煙が辺りに狂い咲いていたというのに、
 その炎は周りの区画が一瞬にして無酸素状態にでも陥ったかのように、速やかに勢いをなくし
 黒煙も、パレットに残った水彩の絵の具を水で洗い落としていくかのように瞬時に色をなくした。
 その中心に姿を現したものがある。


 上条当麻がそこにいた。左手に、唯一少年がその右手で壊さなかった、少女の、歩く教会(白いフード)を携えて。





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お久です&指摘ありです


>天眼通
 心情だったり描写とかに、
 内圧がどうこうとか瞋恚とかっていう言葉を削ってたんですが
 透徹慧眼 や 天眼通とかも
 千里眼とか神通力とかに書き換えたほうが分かりやすいかもですね。
 ・・・・・・どうしようか


>誤字
 気付かないもんですねw問題の箇所を修正しました。どうもです


>長編は読みきっちゃわないと評価しにくいよネ。
 昔、結構小説読んでいるダチだったヤツにも言われましたね。
 いまだにプロットというのがどの程度大雑把でいいのか分からないです、
 その時概要を話そうとしたら途中で切られて「もういい、分かった。お前のソレはプロットじゃなくて行動ログ。あと設定厨、完成しないとまともに評価出来ん。」と言われてましたね。
 至極正論すぎて何も言えず、
 地面に「苦しいです。評価してください」と書きそうになりましたw
 短編って おかのんさんの所で突発的に書いたアレの事ですよね?確かにあの位短いとおそろしく書くの楽ですね。


>あんなリプレイをしかも人様のブログに乗っけてる御前我優奈?
 いや、ソレはないと思います。
 人目につく場所に放りこんで自分も拝見できるというのは、
 書いたがお前には見せんと言うように・・・・・・確認しようの無い手詰まり感満載のリアル友人より何万倍もマトモだと思いますよ?

 まぁ、それがキッカケでコレを形にしようと今もしてるんですけどねww
 なんというか、執念通り越して怨念めいてる様に見えなくも無いですが。


 あとは、文章的なものでは
 雰囲気をガラリと変えるために試験的に二人称視点で戦闘前やってみたら、
 昔三人称視点の文章がリアルの方でボロクソ言われていたので、 二人称視点もソレに違わずだと思ってたらポンポン言葉が出たのは自分にとっての収穫でした、
 しかし言葉が古臭いというか堅いという・・・まぁ、それもアリかなと思ったりはしてるんですが・・・・・・。
>若しくは、その時点で全てを看破する者がいたとすれば、その者は一等の切れ者か生まれ持っての透徹慧眼・・・・・・世間一般で云うところの天眼通の持ち主でもなければ無理な状況であったのは間違いない。

・・・天眼通とは一切の世界すべてを見通せる、餓鬼道や畜生道の有様もことごとく見える眼。六神通という智慧と禅定によって得た六種の自在な力のうちの一つ。仏教用語。

・・・・・・

世間一般の人が知ってると思えねえ・・・・・・

これをスルーした おかのん も猛者だよな。
ファンタジーの表現に『燃料気化爆弾』とか書いてぽむさんに注意されてたよww

んー、会話の掛け合い以外は元々小説とアニメで二回見てる話だからなあ。仮面出てきてないし。
長編は読みきっちゃわないと評価しにくいよネ。
短編は面白かったけど、たまに「するっと頭に入っていかない」時がある。どうすれば良くなるのかって話は評論家じゃないから放棄するけど。

・・・・・・後、おかのんにもよく言うんだけど、やっぱ第三者が見ないと見逃すもんなのかなあ。誤字脱字。
清掃ロボの排除の後あたりの、『インデクッス』とか『機会の無力化云々』とか。
重箱の隅をすまんね。
しかし、文章の体裁を整えるのは、オシャレとはいかないまでも身なりを正すようなもので、いつ誰が読むかもわからんブログに乗っける以上、なるたけやっとくべきことだと思うのよ。
あんなリプレイをしかも人様のブログに乗っけてる御前我優奈?
うむ反論できんww
一り復活!一りf(以下略

「………」
「え~。ワタクシ上条さんが解説しますと、
[青タクとロリコン軍曹とミニコンストーカー]を引き連れてコミケに行ったら、
 ヘビー級の風邪をこじらせて
 同人誌にかける情熱とは違う熱が冷めやらない悪夢として何日間も生死の隙間を行ったり来たりしていたらしいです。」

「馬鹿ですね分かります。コミケ云々は嘘ですが
 雨風の激しい中で暴れるものではないと思います。
 人はホントにブチギレるとコンクリのブロック位は殴り割る事が出来るみたいですよ?(そして翌日尋常じゃないくらいに痛い・膨れるw)
 そういうクダラナイ事はさておき、返信が遅れて申し訳ないです。」


>私小萌はおかのんさんの弟さんも好きだと――――

「実際居たら「お前の家、おッ化け屋ー敷!」とかいっていじるのはデフォだと思います。ロリコンはその・・・なんだ・・・・・・疲れる。」
「んっ?どゆこと?」
「いや~なんだ。キョウダイにチッチャイのがいるからさ。オレより年上だけど」
「なるほど」


>独自の表現もキレを見せて――――

「キレというモノを友人等に意見を聞いて出てきた覚えがないw
 読みにくい・一つの文が長い・テンポ悪い・分かり辛い だったら今も昔も感想は変わりませんが」
「相変わらずだな 一り氏ー」
「そうなんだよ 上条氏ー。……なんか気持ち悪いからこのしゃべり方やめにしないか?」
「やっぱ?俺も思った」


>厨二病患者を刺激する今風の楽しさを――――

「元がそうなのだから仕方がないかと思われ」
「確かに世界設定がいかにも厨二廟だよなw」



「……………お前自身厨二廟みたいな目線やめて!視線がイタイ!!トーマおうちかえるぅ!!」
「だから派手さに欠ける地味~なパワーインフレも
 ちゃんとバックボーンがあるんなら普通に適用できる分では楽ですよね。」
「振っといてシカト!?」


>サイアス様

「先程、おかのんさんのBLOGに飛んで理解しました。」
「「容姿がまんまじゃねぇぇぇええか!!!!」」
「「っつーか魔術師乙ww」」




「そんなことより 一り さん」
「どうしたんですか 上条 さん」
「ワタクシめは何時になったらでられるのでせうか?」
「あそこに扉があるのが見えないんですかアホ上さん」
「あっあった――――ってアホとは!……いねぇし、開かねぇし。
 んじゃ小萌先生、俺はちょっと鍵探してくるんでひとまず乙です」
ことよろです~
私小萌はおかのんさんの弟さんも好きだと言ってました~
彼ロリではないですけどね~
いやいや私が好きだとロリって流れをなんで私が肯定しかけてるんですか当然ちげーでしょう失礼です!

おかのんさんは久遠と二人して、調子に乗って書く物増やしすぎてSS読む暇もありませんよ~
自分が出来る範疇で書きなさいよって話ですよねー

おかのんさんはこの魔術師の人を「サイアス様」とか言って愛でてましたけど誰なのでしょう?

執筆ペースに関してお褒めの言葉をいただいて浮かれていましたが、一日2、3000字程度でひいひいいってたら小説家になれませんよって言ってあげたらだから諦めたんだもんってすねました。

さて、見知ったエピソードとifの交わる中、独自の表現もキレを見せてきてお話は進んでいくようですが、どうなっていくか楽しみですよ~。

厨二病患者を刺激する今風の楽しさを交えての文脈づくりというのはおかのんさんの苦手な分野らしいので、ノリのいい文の上手い一りくんが羨ましいそうです。
某サイトに投稿してる作品に評価をもらったとき、「続きはそれなりに気になるけど楽しさや面白さが弱い」とか言われて凹んでましたから、なかなか重症ですね~。

月並みですが頑張ってくださーい。
ではでは~。
 全部忘れた状態までもっていってそれから書いているが、物凄く何年ぶり位に自分の本棚からとあるの原作を引っ張り出した。

 ソレは何故か?

 忘れていても自分で作ってしまうのもいいのだが、それが面倒臭かったというだけである。

 魔術の詠唱部分である。
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[11/01 一り]
[08/23 一り]
[08/18 ぽ村]
[08/03 おかのん]
[08/03 ぽ村]
HN:
一り
性別:
非公開
趣味:
コレといって固定はないです
自己紹介:
超弩マイペース。
自分のペースを乱されると拗ねて
寝ます。
血液ゲノムで天然B型と発覚
「こ、こいつ…先の行動が読めねぇ(汗)」だそうです
血液ゲノムとか信用すんな。
血液型占いとか信用すんな。
人を信用すんな