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 外が騒がしい。

「――――大国って聞いてたけど、アガシオンも機械化されてる時代なんだね。」
 関心な声が聞こえてくる。
 少女の声である。
 なにやら外で男女が会話しているのである。
 もう夏休みなのだから健全な学生はとっととこのオンボロアパートから出て行って夏休みをエンジョイしてくればいいものを……。
 教会がどうのこうので話した後、少女の方は駈けていきやがて足音は消え去る。

 

 ドンドンドン

 ノックの音(目覚まし)が鳴り響く。
「タマキさん、補習授業の方どういたしませう。」
 ついでに昨日会った奴の声も続いて届く。
 カリカリと、パソコンを起動したての様な音を発する機械のような、そんな感覚で。
  タマキはベットから起き上がった。

 顔を洗うよりも先に、上条へ「よっ。」っと顔を出す。
「いや、よっじゃなくて。担任からあんたも連れてくるようにって言われてんるんだよ。」
「……はいはい、三十秒待て。」
 昨日と見た時と同じ格好をしたタマキがドアの隙間から出していた顔を引っ込めると、数十秒後にはさっきと同じ格好で部屋から出てきて、
 部屋の鍵を閉め上条には目もくれず歩き出す。

 ・・・なんつぅか、超マイペースだなぁ。などと思いながら二人クソオンボロのエレベータに乗り込み、一階のボタンを押してドアが閉まる。
 エレベーターが動き、ジワジワと血が上ってくるような感覚を感じながら沈黙は続く。
 横に居るタマキという人物と上条は直接話したこと等は今まで皆無。
 エレベーターを降り学校へと向かう。
「あのさ、学園都市にえ~っとなんだっけ?…教育施設とかじゃなくてさ、
 まっとうな教会ってあったっけ?」
 二人黙ったまんま学校に行くのはアレなので・・・・・・話しづらさを感じるが先程少女が探していた場所があるか尋ねる。
「………」
 スルーですかータマキさん。気まずい、非常に気まずい空気が流れてますよ、あ~補習の度にこんな空気になるの俺?
「ない。」
 あれ?
「有るにはあるけど、そこまで本格的な場所ではないな。」
「さ、さようでございますか。」
「……。」
「………。」
 教えてはくれたがなんかやっぱ気まずい雰囲気は継続中か。

 そのまま会話も無く学校へ向かうのだった。


 ―――――――――――――


「はーい、それじゃ先生プリント作ってきたのでまずは配るですー。今日の補習授業はそのプリントを見ながら穴埋めしていきますよー?
 それを終えたら小テストしまーす。」
 そういって、身長一三五センチ。体の半分以上が冗談の塊と言っても過言ではない月詠小萌先生はプリントを配ってまわる。
「はい、タマキちゃん。」
 そう言ってプリントを十何枚という数が束になって手渡される。
「…………。」
 ようはコレを全て埋めれば今日の補習授業はクリアなわけか。
 暇な授業が始まるなか、タマキは窓の外を眺めながらプリントを消化していく。

 プリントを消化しながら、外を眺めながら、幻想御手(レベルアッパー)について考える。
 昨日起きた連続虚空爆破事件。
 その犯人とされる少年が、取り調べ中にいきなり倒れて意識不明となって病院に搬送されてたと昨日の飲み会で吉田さんが言っていた。
 命に別状はなく、ただ意識だけが途切れるという症状。
 その少年以外にも意識不明で病院に運び込まれた人はこの数週間で点々といるようである。
 その点と点を引いていくと、やはり幻想御手(レベルアッパー)が原因でそうなったと考えて妥当であろう。
 問題は……という事はその幻想御手(レベルアッパー)が欠陥品だと見るのが妥当であろうが……何かが引っかかる。
 この学園都市は科学の結晶のような場所である。
 そんな学園都市の情報網に幻想御手(レベルアッパー)がまず引っかかっていない事自体が疑問になる。
 それに欠陥品である幻想御手(レベルアッパー)は早々に使用禁止なり規制がかかる…いや、かけるであろう。

「………」

 考えすぎなのだろうか?学園都市側は本当にコレの実態をつかんでいないのであろうか?
 もし。
 もしも、学園側が知っててこの様に放置しているとすると、何が目的なのであろうか?
 植物人間を大量生産したところで学園側にはなんの得もないであろうに……
 ………わからん。

「………………」
 ちょっとまて。
 逆転の発想が必要である。
 幻想御手(レベルアッパー)が欠陥品だと勝手に決め付けていたが
 もしも、幻想御手(レベルアッパー)が欠陥品ではなく何か目的があるとして作られたとしているのなら、
 この幻想御手(レベルアッパー)はいったい何のために作られたのであろうか?

 一度、幻想御手(レベルアッパー)自体を解析してみる必要があるみたいだな……。
 昨日で幻想御手(レベルアッパー)をコピーしてカエル顔の医者の机の上に置いてきたが、彼は多忙な人間である。
 何も書かずにCDだけを無造作に置いてきたがはてさて彼はそれを調べるであろうか?
「………」普通しないよな。
 う~む。今日の夜にでも会って直接説明して解析してもらうか、もしくは彼の居る病院にあるパソコン使って自分で解析でもするか。

 さてと。

 教室の時計は12時きっかりを指している。
 後三十分も経てば午前の授業を終えて、昼飯タイム突入というなか。

 今日、確かクレープ屋に新商品が……
 ファーストフード店に新商品が……
 昼飯の弁当持ってくるの忘れたな……
 よし、めんどくさいし。
 帰るか。

「先生、帰っていいですか?プリント終わりました。」と
 窓の外を眺めながらプリントを書いてる手を止めるタマキ。
「えっ?……全部やったんですか?」と驚く小萌先生。
 まだ授業を開始して午前の部しか経っていない、
 渡されたプリントは小萌先生と一緒に解いていくような授業の流れだっただけにその反応は正しいが、
 そんなのは知ったこっちゃ無いので
「全部。」と小萌先生の所へ持って行く。
 プリントを渡し、むむむと目を通す小萌だがオーケーを貰う。
「あっ、でも小テストしますよ。」
 先生が一旦教室を出て帰ってくると「ふっふっふ♪」っと、意地悪そうな子供の顔。
 その手には卵が握られている。

 コロンブスの卵と呼ばれる念動力専攻のカリキュラムである。
 文字通り卵をなんの支えも無しに逆さに立たせてみろというもの。
 念動力の力加減の調整を上手く出来るようにする
 専攻カリキュラムの中でも高レベルに位置する難題である。
「これをやってもらいますよー?」
「………」
 なるほど……先生の事である、
 筆記で早く帰すのもアレなのでこの課題をやっている間、この場に留めておこうというものなのだろう。
 卵を受け取り自分の席に卵を転がらないように置き、帰りの仕度をすませる。
「あれ?タマキちゃん?コロンブスですよ?」
「逆さに立てればいいんですよね?どのくらいコレ立てとけば良いんですか?」とバックを肩に掛け片手に卵を持ち、今にも教室を出る勢いである。
「物凄い余裕に言いますね。ん~………三分くらい」

 トッ、

「三分経ったら転げ落ちると思いますからその時は机から落ちないようにお願いします。
 それと三分以内はその卵に触らないで下さい。」
 そう言ってタマキは教室を後にした。

 ――――――――――――

「さすがに昼間は居ないな」
 タマキは『喧嘩通り』と名のついた裏通りをテクテクあるいて行く。
 さすがにこの炎天下のなか好き好んで外に出ているヤンキー共は居ないようである。
 実によろしい、処理する手間が省ける。

 目的の場所を目指す。
 先ずはファーストフードから潰していくか、新商品のマンゴーチェリークランチフ○ーリーか。
「………どんな味なんだろう。」
 そうして店の近くまで来たのだが、目的地よりも気になる変なものが視界に入った。
 白い修道服を着た少女がトボトボと裏路地の方へ入っていこうとしていたのである。

 生憎、今日から夏休み。若者の幾らかは里帰りし、また幾らかの若者はゲーセンとか
 そういった娯楽の言ってみれば『夢の島から島』へと梯子で。
 そうでなくても、今は完全にお昼時で家か店の中で飯を食ってる時間帯も相まって、
 通行人、皆無なのがここ学園都市である。

 んで、そんな時間帯のこの場所でそんな格好で且つ裏路地に入ろうとしている人間がいれば
 ここの住人なら誰だって目に付く。

 少女の曲がった裏路地に進路変更、
 この都市の教会と名の付く処に居る者はそういう修道服など一切着込んでいないし、
 今日は別にコレといった『イベント事』はない、個人的な集まりならありえるのだろうが。
 それに、その先の袋小路にはよく屯している連中が居たりする……オフ会の線は消える。
 その先は袋小路になっていることはここの区の人間なら解る筈なのだ。
 夏の暑さから避けたいのであれば店の中でクーラーにあっていればいいのだ。
 あの様子ではまるで行くあてなく、ただ歩いているようにしか見えない。
 どういう経緯なのかは知らないが、その少女は少なくとも――――

 此処の人間ではない。

 裏路地に入ると案の定、少女は袋小路の先を見てため息をついていた。
 流石に夏のお昼時である、
 元気ではあるがスタミナの足りない人種はそこに屯って居なかっただけ良しとしよう、この格好はいろいろ面倒だ。

 パンッ!!

 袋小路に乾いた破裂音が響き、反射的に身を強張らせると同時に振り向く。
「あ……。」っと声を零した少女の顔が、しまったと言わんばかりに青ざめた先に手を叩いたであろう人物が立っていた。

 

 ―――――――――――――

 

「それにしても……よく食べるなぁ~。」
 バンズに牛肉を挟んだヤツとかカレーとかしまいには雑炊とかも。


 予想通り、少女はココの人間ではなかった。
 と言っても、彼女がそれを口にしたわけではなく。
 対応や目の動きといったものから察した、いわば匂いとでもいった類の、人間に本来から備わっている能力で十分だ。

 通報はしなかった。

 なんか、そういう規則じみた偽善者じみた行動がだな……つまりは気紛れというやつだ。

 オレがやった事と言ったら袋小路で手を叩き。
「お腹が空いたひとー、ハ~イ♪」と一人ツッコミの要領で子芝居的な電波を演じ、不信感を煽ったがすぐに本題に入る。

「ここら辺は初めてなの?まぁこの袋小路、不良の溜まり場なんだよ。……ちょっと付き合え、昼飯くらいなら――――」


 っと、半ば強引に連れて入ったファーストフード店に入るや……。
「……よく食べるなぁ~。」
 多分この少女は食事が趣味なのだろう……見ていて飽きん。
 それとも数日何も食べていなかったのか。
 ここまで単純に警戒心解かれると逆にコイツがここで何か問題に巻き込まれないか心配になってくる。というか、もう勝手にスパゲティーとか注文してるし。

 少女の髪は肩程までにさらっと伸びた透き通る銀髪で、肌も色白、目は蒼と外人要素満載なわけで。
 最初英語で話してはみたものの、彼女はそれに流暢な日本語で返してきたものだから拍子抜けしてしまった。冗談なのかは定かではないが、日本に来た時に覚えたのだと言う。
 外見の容姿から言ってもまだ幼さの残る面影でよく使いこなしている。

「んで、何か探してるの?」
「まんのね、ぎょぶかい」
「口ん中に何もない状態で話せ。行儀が悪い。」……問題に巻き込まれる云々とは別に心配だ。
「んっ。……ここ辺りって教会、ユングとか?そんなものではなくて、ちゃんとした教会を探しているんだけど……。」
「ようは十字架がぶら下がっていて、神父とかシスターとかがいるような場所ってこと?」
「できれば、聖堂教会に繋がっているような所を探しているんだけど。」
「そこでその安全ピンだらけの修道服を直してもらいにでも行くの?」
「うん。」と、即答の割には目がぶれる。嘘つくのが下手だな。
「う~ん、だけど残念。この辺りっていうかこの都市にはそういう『ちゃんとした教会』は無いなぁ~。その服輸送して直してもらった方が良いんじゃない?」
「そう簡単に直せる物じゃないの、ロンドンにある聖堂教会じゃないとだめなの。それに最終目的地はロンドンだから――――。」
 あっ、と今更ながらボロを出す少女。
「ん?別に最初からココの人間じゃない事くらい知ってのことだよ?」

 どう回避しようかフルスロットルで回転させていた少女から気が抜ける。

「……なんで?」
 なんで知ってるの?とでもいいたいのだろう。
「だって、コスプレにしては気合はいりまくってるし。街のことよく知らないような素振りだったし、なにより匂いがここの人間くさくなかったし。」
「それもあるけど、なんで?――――」
 何が言いたいのかそこで言葉を切られるとオレが
「――――じゃあなんでこんなこと……。」
 あ、そっちね。
「ただの気まぐれ。暇だったからさ、なんかそんな格好してるヤツってどんななのかなぁ~ってさ―――――――――。」
「?どうしたの?」
「いや、なんでもない」
 タマキから見て左前方方向に常盤台のお嬢様二人、そのうち一人は風紀委員(ジャッチメント)のエンブレムを袖にぶら下げ、
 向かい合うように何処かの研究員らしき女性と向き合って幻想御手(レベルアッパー)について話をしていたのに気を取りすぎていた。
「来てまだ日も経ってないようだし、いくらかこの都市まわってみてからでも良いと思うよ出るのは。」
『とか言ってもどうやってこっからでるんだよ』と頭の中で一人突っ込みを入れる。
 そう簡単に出入りが出来るような場所ではないのだ此処(学園都市)という所は。
「……そうだね、せっかくココに来たんだし回ってみるのもいいかも。」
 と、彼女は元気よく答えた。
「って、もうスパゲティーも食ったのか!あ~じゃ~デザートにクレープ食べに行こう。評判いいとこの新商品出たみたいだからさ。」
 そう言って席を立つが、なんかモジモジしている少女。
「お、お金持ってないよ?」
「さっき、奢りっていたろ?っていうかそうじゃないとさっきの怒涛の注文+フードファイトはなんだったんだ!」
「えへ。」
「えへじゃねぇ、もろに確信犯だろが。ほらいくぞチビっ子。」

 

 結局そのあと、例のクレープ屋で少し並びはしたものの、
 ブツをゲットし、ぱくついてるわけなのだが。

「――――で、トウマが触ったらこうなっちゃたのよ!」
 プンプン頭から擬音を飛ばしながらもクレープのおかげで上機嫌の少女は自分の服が何故
 安全ピンだらけに為ってしまったのかの経緯を頼んでもいないのに喋りだしていた。

「そうか、ソイツは最低なタイヘンさんだな。」
「そう、トウマはヘンタイさんなの!!」
 そうやって、車で移動販売しているクレープ屋の簡易テーブルに二人座りオレは彼女の話を聞いていたのだが。
「でも、魔術ってアンタ………。」呆れたように零してしまう。
 彼女の話の中に魔術というワードが入ってきたのだ。
 彼女が言うには魔術というのは有るものだという。

「うう、アナタも信じない。ん?そういえばまだ名前も聞いていなかった。」
「オレはコズロフ・л・グレブネフだ。」
「……うそ。」
「じゃタマキでいいよ。」
「私はインデックス。」
「……そっちの方がよっぽど嘘クセーし、ていうか『目次』ってアンタ。」
「それトウマにも言われた。」
「……マジなのね。」
 そうして再びクレープを食べるが、彼女はやはり聞き捨てならなかったらしく、魔術にかんして話を戻してくる。

「……魔術はあるもん。」
「ん」クレープをもしゃもしゃ
「……魔術はあるんだよ?」
「ん、有るんだろうね」以下同文
「だから魔術は」
「わ~かったわかった、んじゃ、これにソレの術式的なの書いてみてくれ。」と、横にあったアンケート用に置かれていた用紙と鉛筆を彼女に渡す。
「そんな詳しくじゃ無くて良いからさ、なんかソレっぽいの。」
 手渡されどうしようか悩んでいた彼女であったが
「ソレっぽいの」という言葉にカチンと来たのかスムーズにホントにソレっぽいのを書いてテーブルの中央においてガバっと身を乗り出す。
「詳しく書いたら使われちゃうからそういうのは書いてないけど――――」
と勢いよく
「コレはその場所と時間を表していて」
 とか
「コレはその時に力を借りる為のシンボルで」
 とか
「コレは――――」

「コレは――――」
 …………。
 ………。
 …。

 その猛攻たるや鬼の形相で――――は言いすぎだが、その真剣な説明に更に火がついてはいけないと思ったので大人しく彼女の説明をきいていた。

「――――で、この術式は終了になるの。」
 エヘン、どんなもんだい。と言わんばかりに遣り遂げた顔をする少女。
 これが何かの本に書いてあったとしてもよく覚えているなぁと、
 即席の演技なら頭の回転と演技力にスタンディングオベレーションものである。
「……ご教授お疲れ様です。」
 わかればよろしい、と追加で頼んだオレンジジュースを飲む少女。

「でも、そうやって見ると、なんかPCのプログラムみたいではあるな。」
「だーかーらー、PCのプログラムなんかじゃなくてホントに――――」と彼女は異様にくいついてくる。
「解ったって……んじゃ、オレも一般で説明できないヤツを見せてやるからソレでオアイコな?」
 そういって、ポケットから直径三センチ程の鉄の玉を取り出し、彼女に見えるように手のひらに乗せる。
「何するの?」
 それには答えず、そのかわりに手の上で鉄球が横に回転し始めた。
「これが超能力?」
 彼女は始めてみるその現象に、マジックショーを見ている子供の顔のまま言う。
「だと説明できるんだけど……ココに来る前からこういう事出来たんだよなぁ~。」と、
 空を仰いでいる人物の手のひらの玉は高速に回転を続けていたが、減速を見せることなくピタリと鉄球が止まり、またポケットの中へしまい込む。

 ほかに。と、オレンジジュースの入ったコップに手を触れると中の液体を回したりした。

「人体の未知なる可能性ってヤツなのかね?日常で使うにはシェイクする時ぐらいにしか役に立たない、一つでも役に立つからいいか。」
 と一通り実演した後、ため息が出た。
「トウマも生まれつきって言ってたし、何かあるのかな?」
 などとブツブツ呟きながら考え事をしている少女。

「さぁね、自分がコレだから……まぁ、魔術も頭ごなしに否定できないよ。世の中にはわからない事だらけだな。」
 と笑って残りのジュースを飲み干しゴミ箱に捨てる。

「さて、こっからどうしようかなぁ~。もう今日の予定全部クリアしちまったし――――」
「ああ!!」
 と何か思い出したのか、急に少女が立ち上がる。
「忘れてきた。取りに行かなきゃ。」
「どっか行くのか?」
「うん」
「そうか、んじゃ。またどっかでな。」
「……それにしても、タマキって気まぐれの暇つぶし程度って言うけど、いつもこんななの?」
「まぁ、なんだ。日本には一期一会ってのがあってだな。今日はそういう気分だったってだけ。」
「イチゴイチエ?」
「簡単に言えば、その時会った人とは人生でその一度きりの精神ってやつ。」
「へぇ~へぇ~へぇ~。」とテーブルをボタンに見たてて叩く少女。
 お前・・・結構こっちの文化知ってるだろ?という目線ににんまり笑うと
「それじゃタマキ。ハンバーガー、カレー、雑炊、スパゲティー、コーヒー、クレープにオレンジジュースありがとう。」
 その大量のメニューを平らげた少女はトタタタタと目的地に小走りして言った。

 このくらいにあっさりしている方が丁度良い。
 にしても、今日は何もない……わけでもないが、昨日渡した分析の結果も気になるが今は行く気になれん。ようは
「な~んか。暇だなぁ~。」
 昨日買った本は全部読んだし、友人は一人以外は里帰りでいないし、
 残った一人は塾通いで忙しいと言っていたし。
 何か新しく惹かれる本も昨日今日で出てくる訳でもないし。
 ここまでやる事がない時の選択肢に一つ思い出した。
「そういえば、今日オレの寮が火事になるんだったっけ?」
 そんなことをぼやきながら消防グッズを買いにタマキは歩き出した。

 

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前サイトのほうで上げていたヤツを手直しして加筆しました。




 灼熱の太陽に熱せられ、焼肉が楽しめるであろうアスルファルトの上を、
 短ランと学生ズボンで黒く身を包み、
 明日から夏休みが始まる学園都市中の歩道を学生達が埋め尽くさん中、
 ソレは誰が見ても暑っ苦しい極まりない人物である事は間違いない。

 そんな通行人の的である人物は、
 周りの視線をこれっポッチも気にする事なく、この真夏の暑さと自分の格好とはうって変わり、
 涼しい足取りで街中を歩くその手にはマイバックをぶら下げ、
 やけに上機嫌である事は、周りの人間から窺うことが出来ない。

 その人物が上機嫌の理由、
 それは、愛読しているマンガと小説の発売日が今日であり、
 それらは既にバックの中にどっさりと入っており、
 その重みがそのまま充実感と小さな幸せであるからだ。

 明日から夏休み。

 一学期が始まってほぼ行っていない始末である。
 まぁ、明日からの補修で今まで空白だった四ヶ月間がチャラになるというのだ、それならコッチを選ぶ。
 ほぼ学校に通っていないがために、
 同じクラスメイトの名前を余り覚えていないのは早いうちにどうにかしないといけない。

 一学期ほぼ丸々すっぽかしたのは、やりたい事が沢山あったから仕方ないんだよな、
 と自罰意識を和らげてみたりする。

 そんな事はさておき、右手にぶら下がった割とパンパンのバックを覗く。

 まったく、
 同じ日にこんなにたくさんの新刊を買わせるとは………日本銀行の陰謀か?
 などと好きな漫画のそれぞれの発売日を見たときで思った事だが
 とにかくどれも続きが気になってしょうがなかったヤツばかりだ、
 さっさと自室に戻ってこれらを消化し、至福の時を満喫せねばならん。

 横断歩道にさしかかり赤信号に捕まる。
 周りの学生と同じくちゃんと交通ルールに従うが、
 そんな中には今まさに空間転移でさっさと向こう側へと渡ってしまう者もいる。

 日常と化した光景はここが学園都市であるからなのだ。
 
 向こう側の歩道で息を荒くし、体に電気をまといピリピリとした・・・いや、
 ビリビリとした感じで歩いていく、
 電気を操る「レベル5」の名門校の女子中学生とかがその産物である。

 

 まぁ早い話、世間一般で言うところの超能力である。
 簡単に言うと此処はそんなのが多少ゴロゴロしている場所なのだ。
 
 レベル5と言ったが、これは超能力者としての力の程度を表したものである。
 段階で言うと0から5まであり、言うまでもなくレベル5が一番高く、
 一般に災害レベルと言われている、捻くれた言い方で「人間災害指定」と言ってもいいだろう。
 今のところレベル5の人間は7人しかいない。
 それとは逆にレベル0はその名の程度の通りで、まるっきり使えない……とまでは言わないが、
 血管がぶち切れるぐらい頑張ってスプーンが曲げれる程度のもであり、
 高レベルの者からよく馬鹿にされる、それで捻くれて不良の完成という例もよくある。

 それにしても、真夏だと言うのにまだ赤信号は続く、
 そこまで車の交通量が多いと言うわけでも無いのに……絶対わざとやってるだろ。
 真夏日の信号待ちというのは、
 地面からの熱気でたった十メートル車道を隔てた信号待ちの人々が揺らいで映る、
 道路の果てでは蜃気楼が浮かぶ、
 そして赤信号のせいでイライラは積のっていく……絶対わざとやってるだろ!


 やっとのことで横断歩道が青になる。
 それにつられて人々が歩き出す。
「吠えろー、吠えろー、さぁ闇に向かって吠えろー」などと、
 どっかのミュージシャンが歌っていた歌を口づさみながら学生寮を目指す。

 気づけば家の前についているって寸法だ。

 自分の部屋のドアノブを捻る。
 鍵は掛かっておらず、そのまま部屋に入る。
「誰だー。勝手に部屋に入っとるヤツは?」

「おれだおー」
「オレだー」
 ワガモノ顔でソファーとベット。
 一人はゲーム、もう片方は本の虫。
「お前等、オレッ娘にジョブチェンジか?」
 不法侵入健康優良者二匹がオレの部屋でくつろいでいた。
「ん?終業式はどうした?」

「「メーンードークーサ~~~~~イ」」

 ・・・。

 ・・・・・・要らんところで即座にハモるそこのチミ達は、
 どこかそこらの合唱団に入って有意義な青春を送るといいと思うのだが
 何故に二人してジリジリカバディーな体勢でにじり寄ってきてるの?
 アレ?
 オイオイ、ちょいと双子のチミ達、目付きが恐いよ?
 あ~、アレか!
 この場から一秒で地球七週半する速さでランナウェイしないとオレに危機が迫るっていう俗に言う・・・・・・・・・

「マ、マサカ」
 そんな彼女等に流石のこちらも身構える。襲われるのは勘弁ノーサンキューである。
「そう、そのマサカよ――――」
 双子が言った瞬間。
 後ろに思い切り、身体を曲げながら飛び退いた。
 ドアの縁が頭を掠める。
 手すりを飛び越える勢いの跳躍だが、落ちてくたばることは無い、
 ・・・・・・そのまま地面まで直で落ちたら死ねるかもしれないが、
 通路沿いにある手すりに足を引っ掛け勢いを殺し、
 そのまま真下へと落下し、下の階の手すりに手をかけまた勢いを殺しトントン拍子にこれの繰り返しで下まで降りていく。
 むしろ常用である。

「ガハッ!!」

 が、その思惑通りにはいかずに勢い良く飛び出した身体は急激に速度を落とし、その場に落ちる。
「ヤバ。」

 後ろを確認しなかったのがまずかった。
 マンションの住人と人身事故を起こしてしまった。
 身体を起こし、下敷きになっている人物の安否を確認する。
「え~っと・・・大丈夫?え~~っと」
「か、上条当麻十七歳、ちょっと不幸な男の子」
「変わっているけど分かりやすい紹介ありがとう上条当麻十七歳。
 でも、コミカルな感じにしてるけど大丈夫そうには見えないのだが。」

 ・・・コイツ首の稼動域を越しているように見えるのは目の錯覚か?

「よ、横からロードローラーが吹っ飛んできたかと――――ヴァ!?」
 倒れている上条に踵落とす。
「言い過ぎだ」
 数秒全員をピクピク震わせる上条を見届ける。

「・・・・・・あっ、しんだ」
「勝手に殺すなボケェ!」

「・・・ガバーっと起き上がりツッコミをかますツンツン頭のちょっと不幸な上条当麻十七歳であった。
 しかし彼は最近思うのだ、
 どうして俺は不幸なのだろうか、
 どうして俺の右手はこう無闇矢鱈になんでも消していくのだろうか、
 どうして俺には彼女が出来ないのだろうか、
 そうしてサンタさんや透明人間、異世界人や宇宙人の存在を最近まで信じて疑わなかったのだろうかと。」
「アーアー聞こえますかそこの怪電波ファンタジスタのハットトリックスター野郎、
 変な電波受信して那由多の彼方へ逃避行ですかー?……って、アレ?」
「こらこら人に指を指すなと親に・・・って、昨日あったな。」
「・・・それはいいんですが、どいて下さい。」

 オイオイ、ロードローラの下敷きから開放された上条さんや。
 両手で稼動域を通り越した首を戻すキミの様は傍から見ると不気味だぞ?

「まぁいきなり横から尻ケツアタック+踵落としとはすまなんだ。にしてもこの寮の者だったのか、
 てこたぁー貧乏学生だな。まぁ入れよ、侘びを兼ねて茶と菓子ぐらい」
「お供させていただきます!」
「・・・・・・。」

 全快の土下座で侘びを断る理由も無く、ぶつかってきた学ランで仮面を被った
 どこまでも不気味で怪しい人物に招かれ部屋に足を踏み入れる上条だった。

 だったのだが。

 あれ?冷気?真昼間からクーラーガンガン?

「ブルジャージ!ブルジョアーヌ!」

 部屋に入るなり後ろの上条が叫びだした。
「ビックリした~、もしかしてお前ってキから始まるナニかの類?」
「・・・・・・コッチはご飯とカツブシで凌い――――嘘ですけど、
 蒸し暑い夏の夜を扇風機一本で凌いでるんでちょと取り乱しただけです。」
「・・・・・・。」
 茶の用意をしながらクツクツ笑い声を出す仮面、・・・・・・不気味だ。
 笑いながら豆を淹れる姿は物凄く不気味ですよえ~っと
「すまん、名前聞いてなかった」
「タマキだ」
 そういってコーヒーを淹れるタマキ。

 あれ?
 ここにきて一つ上条は引っかかっていたことを思い出す。

「あの~タマキサン?一つ思い出したんですが。」
「一つといわず二つ三つ思い出していいぜ。」

 テーブルにちょこんと座り込んでいる上条が少し不思議な顔を浮かべながら

「なんで貴方がワタクシの右手のことをご存知なのでせう。」

 タマキは四つのマグカップにコーヒーを注いでいく。

「まぁ、オレも一つといわず二つ三つ四つ五つ思い出した。
 一つ、オレもお前さんも同じ学校の同じクラス。
 二つ、学校じゃ歩く不幸避雷針の名は有名
 三つ、裏道で常盤中のガキと戯れてるのを昨日以前に見た。戦闘という意味でな。
 四つ、青髪ピアスはウチに良く出入りする。」

 奥にいる双子にコーヒーを渡して周り、上条と自分の席にコーヒーを置く。

「なるほど納得、至極自然な流れですね特に四つ目が。
 それは解ったのですが何故に奥にいるお二人から殺気の篭った視線を感じるのせう?」
「ん?ああ、お前さんを盾に使わせてもらってるから。まぁ気にしないでくれ。」

 そう言って仮面の隙間にストローを潜り込ませズビズビとコーヒーを飲むタマキ。

 奥の部屋から上条に放たれる殺気ムンムンの四つの目
 その視線を背に受け、小さくなりながらチビチビとコーヒーを啜る上条は思う。

 普通、昨日ちょっとしか面識のない人間をそういう事に使うか?
 ・・・使うにしろキッパリ言う可笑しなヤツだぁ、コレがこいつの芸風か?
 結構他人を平気で迷惑に巻き込むタイプか・・・。

 ふ・・・・・・不幸だ。

 それから暫く怨念ビームを浴び続けながらコーヒーを飲み干した上条はこの部屋をあとにした。
 帰る際、「明日から補習とか言ってたな……はぁ。」と、ぼやいていた。
 自分も明日から補習だが・・・あの避雷針を観察しに行くべきかどうか、少し心揺らいだ。
 実を言うと補修授業にもあまり行きたくはないのがぶっちゃけた話である。
 授業を受けても暇なだけで退屈な、いわば自分にとっては『無駄な時間』なわけで。

「………」

 まぁ、それは明日になって決めるとしてだ。
 上条が出て行ってドアが開きっぱなしの向こうには四人の暇人が突っ立っているわけで……

「玄関先で1.5リットルのペットボトルを両手にぶら下げた炭酸ヤローとウスィ~のとマッチョとカグラ。
 そこで突っ立ってると通行人の邪魔になって非常に迷惑だと思うのだが。」

「わざとです。」一同声を合わせる。
「帰れ」即答で一蹴。
 したにもかかわらず「失礼しまーす」とゾロゾロ部屋に入ってくる、まぁ挨拶みたいなものである。

 各々菓子やら飲み物やらを持ち寄って世間話やらゲームやら読書に耽っていく。
 ヒマなので自分もゲームに参戦することにした。
 ゲームに参加するのだが……そのなんだ、3D格闘ゲームなのだが何故コントローラーを離すかな双子妹?
「だって、タマキ強すぎだもん」などと、先程上条を睨んでいた双子の片割れが言って捻くれる。
「今いい勝負するのって吹野くらいじゃね?」とマッチョこと笠原が存在のウスーイところから
 『ウッスィー』と名の付けられた吹野にコントロールを渡す。
「タマキとやってると能力全開でやってないといけないから疲れる。」などと言いながら、
 渡されたコントローラーを握る。
 オレだってお前とやる時は今までの行動パターンを一戦一戦全て覆していかないといけないから
 非常にやってて疲れるのである。
 この吹野という男。変わった能力の持ち主である。

 例えば
「オレが今までコーヒー飲んだ回数は?」
「3587杯」
「今まで泣いた数は?」
「6回」

 何故か『タマキだけ限定』で、関する事を古い過去から少し先の未来を把握できる能力なのである。
 未来の方は日にちは合ってるのだが
『明日、お前の行く店で爆発事件が起こる』とか
『明後日、不良に絡まれる』とか
『次明後日、お前の住んでる寮が火事になる』とか
『どこの』とか『いつ』と言ったところは結構アバウトではあるものの知ってて非常に助かることも多々ある。

 能力の条件が『特定の人物に限定』されている為か、学園都市の検査機器が彼に下したレベルは0だった。
 吹野とはこのメンツの中で一番古い友人である。
 なんせ、最初会った時がオレが学園都市に来てまだ間もない頃、
 小学校から家路につく途中で見知らぬ少年が息を荒くしてコチラめがけて走って来たのである。
 とりあえず、変質者か何かの類であろうと思い、一直線で向かってくる少年を肘鉄で沈めた。
 で、沈めたその少年は、鼻血を垂れ流しながらゾンビの様にオレの服の袖を掴み一言。
「やっと見つけた」

 その後、もう一発肘鉄を見舞って完全にノックアウトさせたのがコイツとの最初の出会いである。

 今でも本人はこの能力の事を
 『経験共有』と周りに呼ばせたいみたいではあるが、
 仲間は皆『変質者(パーマネンスストーカー)』と全会一致で可決された。
 変質者呼ばわりされてはいるものの、実際に何かで対峙するとオレの過去を掘り下げて思考パターンや行動パターンを読んでくるため非常に強いのである………オレ限定ではあるが。

 それでも練度がお互い増すため、
 疲れはするものの何だかんだで格闘ゲームのキャラを選んで戦闘を開始する二人であった。


 そうやって時間をつぶしていると外はすっかり暗くなっきて、
 メンツもそろそろ「解散すっか」と散らかした部屋を片付ける。

「そういや、ウッシーが前ネットでみっけてタマキに渡した、え~っと・・・アレなんだっけ?」
「幻想御手(レベルアッパー)?」
「そそ、それ。アレどうだったのタマキ。」

 部屋の片付けをしてる最中、双子妹とウスィ~のがこちらに顔を向ける。ついでに他の皆も・・・

「ん?なんだって?」
「だから幻想御手(レベルアッパー)よ!それが本物だったら私達もいい線いけるんじゃないの?」
「いい線もイケナイの。アレ調べてみたけどマガイモノって訳じゃないみたいだけど、
 使わない方がいい。」
「なんで~?だってレベルが上がるんでしょ?」
「まぁな、でも本当の所はよく解らない。なんせ学園都市から認可がおりてない。」

 幻想御手(レベルアッパー)
 最近、ネットで出回っている奇妙な音楽データである。
 コイツを聞くと、
 能力者は苦労もせずにその能力を短期で格段に向上させることが出来るという夢のようなアイテムである。
 二日前、吹野がその噂を耳にしたらしく、ネット上を這いずり回って見つけたのを
 「見つけたのはいいけど、
 正直コレを聞いてレベルが上がったとしてもお前以外のヤツの事まで分かるようになるとも思えないし、
 幻想御手(コレ)がどうもきな臭いから調べてくれないか?」と言って、同じことを思ったらしくオレに渡した。
 それらしい書き込みがされている所を回ってはみたが、どうも本当にレベルが上がるらしい事は解った。 
 わかったのだが……それでも。裏で出回っているとしても。
 何かまずい物でも入っているような感じがしてならなかった。 
 仲間に使うよう促す事をしないのは、なんとなく
 勘だ。

「よく解らない物だし、リスクが無いとも言えない。」
「じゃぁ、アレは使わない方がいいのね?」
「うむ。」
「タマキが言うんだったら仕方ないか。」

「な~んだ」と皆が掃除に戻っていく。

 皆ソコまで超能力としてのレベルは高いとは言えない、
 中にはどういう性質の能力なのかさえ分からない位のヤツもいるのだ。
 たぶん能力が微力すぎて測定器が識別できなかったのだろう。
 もしくは吹野みたいな特殊過ぎる性質の何かなのかもしれない。

「あのな~、こういうのに近道なんかあるか。そこら辺マッチョは一番分かってるんじゃないか?」
「マッチョ言うな。・・・まぁ、武術みたいに養っていくものだからな超能力ってヤツも。
 俺達は天才肌ではないからな。」
「とか言って、お前レベル上がったのかよ?」
 ガヤガヤとお互いのカリキュラムの話で盛り上がる。

 何か、まるでRPGゲームの話でもしているかの様な感じの会話である。

 モクモクと部屋の掃除をしながらの会話の切り出しは、矢張り明日からの夏休みについてだ。

「お前等明日から里帰りだろ?準備しなくていいのか?」
 そう、明日は夏休み。
 したがって、久々にわが家に帰って夏を楽しむ輩も居るわけだ、
 というか、オレ以外ここに居る全員が里帰りである。
 準備の方はもう終わったと皆は言う。

「そうか」

 ついでに何か借りたいものがあったら持って行けとも言う。
 ちなみにオレは皆と違って夏休みや冬休みとかにこの都市を出たりしない。 
 オレにとっては此処がマイホームであり、ホームグラウンドなのだ。

 だらけて各々オレの部屋でしたい事をしていたコイツ等は、レベル0の烙印を押されて、
 一時期不良をしていた者達である。
 今はいろいろな経過を経て、普通に学生をしている。
 この学園都市では『能力』もしくは『学力』でそいつの地位が決まる。
 んで、レベル0で出来損ないの判を押された彼らは
 自分達の努力の甲斐あって学校の問題を人並みかそれ以上に解けるようになった。
 といっても頭が悪くて不良をやっていたわけではなかったため更生に時間は掛からなかった。
 とにかく、一言で言うなら愉快な仲間達である。
 もちろん学力の方である程度の地位を得た彼等は一度は挫折した能力開発の方にもまた励むようになった。

 っで、簡単な彼等の説明をしていると、気づけばすっかり夕飯時になっていましたとさ。
 なんというか明日は夏休みという名目の下、だからという訳ではないが何となく。
「今日は、久々に外食でも行こうかなぁ、ついでに用事あるし」
「また、阿呆に絡まれるんじゃねぇの?」
 間髪居れずにツッコミを返してくる一同。
 なんというか、昔ハッチャけた事しまくった付けが今も継続して続いてますのですことよ。でも
「まぁ、そのときはナデナデしてやる。」
「要はオラオラですか?」
「いや、無駄無駄ですよ?
 ってかお前等そろそろ帰れ。こっちゃ用事も兼ねているから余り時間が無いんだよ。」
 と、阿呆な会話をして皆を部屋から追い出したのだが、吹野が話があると言って残った。

「皆に言わなくていいのか?」などと真剣な顔で話をふってくる。
「別に良いんじゃねぇの?言ったところで何も解決しねぇんだし、
 それにオレはオレで策は講じてるぞ?前々から作ってたAIがもう出来るところまで来てるし」
 と真剣な吹野に対し本人はというと意外と楽観的な態度で返すタマキだった。
「…………」
「…………」
 暫しの沈黙が流れる。

が、一転して苦笑いをしながら

「それにさ、自分の身に起こる不幸をあいつ等に打ち明けて同情されるのは嫌なんだ
 でも、そっか~……不幸は人生の最初の方で纏めて前払いしたつもりだったんだけどなぁ~」
 苦笑するタマキにつられて吹野も辛い顔になる。
「でも大丈夫だよ。なんとかなるさ…いや、してみせる。お前の予測する未来を捻じ曲げてやる!」
 なんて思ってもいない事を言って通す。
「……そうか。じゃあ、俺もう行くわ。また何かあったら電話なりメールなりするからさ。」
「OKわかった。じゃあな」そういって廊下の角に消えていく親友に手を振って見送る。

 ……………

 さてと!これからどこ行こっかなぁ~。
「ん~~~~~、久々に故郷の食い物でも食うか」
 ながい背伸び一発、タマキは自室を後にした。

 

------------------------

 


「おい!こっちだぁあああ!」

 外食が間違っていたのだ。
 オトナシク家で素麺でも啜っていれば良かったのだ。
 それが選択肢の答えだった事は言うまでもない。

 仲間を呼ぶ野郎を無視して外食の目的地を目指しショートカットよろしく、トコトコ裏道を歩いていく。

 気づけば一本道の裏道前後に野郎ばっかがトウセンボという状況になっていたりする。

「……」
 絡んでくるのは別にいいとして何故に全員息があがっているのだろうか?
 そんなに急いで走ってきたのだろうか?

 呂律の悪いヤツが何か怒っている。はてさて、コイツとの面識は無い
 多分普段からカルシウムの足りない人間なのだろう。

「!!ガッハッハッハッハ!!!!」
 このクソ暑い夏の夜に仮面に学ランという、
 物凄く暑苦しく怪しい格好の人物は横にある壁をバンバンと叩きつけながらいきなり爆笑し始める。
 その様子に戸惑いを隠しきれない不良共御一行。
「アーーハッハッハ!!そこのボウスの横のヤツ」と言いながら指を指す。
「お前『ラング』の愛読者だろ?」『ラング』というのはファッション雑誌で
 ジャンルとしてはピップポップのアンダーグランドといった所の物である。

 が

「お前先月号に挙げられてたヤツをコピッただろ!?」抑えようにも笑いが止まらん。
「ヒィー!ヒィー!腹イテェエエ!違うの顔だけだもん!!やり過ぎだろ!カッカッカッカッカ!!」
 叩きつけてたコンクリートにヒビが入りそうな勢いである。

 言われ放題且つ正論を言われて頭に血が上ったのか、はたまた恥ずかしさを掻き消す為か
 雑誌から抜け出てきたようなヤツが「し、死ねやコラー!!」
 と顔を真っ赤にナイフを握って『オジキのカタキスタイル』で走り出し、
 それを合図に他のモノドモも前後から掛かってくる。

「ヒー!ヒー!……アー笑った笑った笑った――――んナ!」
 不良十三人、まずは『オジキスタイル』のヤツに走り出した。 

  

 表通りに出る、相変わらず人間で道が埋め尽くされている。
 後ろで、呻き声をあげる奴等はほっといて歩き出す。
 何かしらこの裏路地を通ると変な奴らがつっかかってくる事は解るのだが、
 だからといって遠回りするのがメンドクサイのでいつもの道を通り、
 いつもの事に巻き込まれ、
 いつもの様に片付ける始末である。

 目的の店に到着、したのはいいのだが。
「定休日だったか。なんだこのタイミング……まぁいいや。」

 残りの用事を済ませ、家で飯を食うかという時に着信。

「タマキ!アンタも来るといいじゃん!」
「会話としていろいろ抜け落ちてるんじゃん?
 どっかの『ママさんバレーの後の公園で酒飲み』じゃないんだから
 アンチスキル非番仲間集めて車使って『人気の無い鉄橋で酒飲み』っていうのはどうなんじゃん?
 それにコレでも立派な高校生なのだが。」
「んじゃ待ってるから!!」
 プツリッツーーーッツーーーーッツーーーッ。
 会話終了。

 どんだけ一人で世界を回しているのだろうか彼女は?今ので一周分は回したであろう。

 ………。
 でもなぁ……。
 彼女の恐いところ、今みたいに完璧にデキアガッテいるのに覚えているという所である。
 断ったりシカトした翌日が恐いことである。 

――――――――

「おっ来た来た。お~いこっちこっち!」
 あ~変な軍団が鉄橋のトコで輪になって、
 さらにその中でもひときはテンションの高いジャージがこっちに大声で手を振っている。
 翌日が面倒くさくて断れない。街に居るヤンチーよりもタチが悪い。
 歩いていって輪に混ざる。

「はぁ。なんでこの人はいっつもここに居る時テンションがバカ高いでしょうかね。」
 輪に混ざりいつもの切り出しで横に居る吉田さんに助言を求める。

「まぁいいじゃないイツモの事だから、それより」とハンドルキーパーの吉田さんは
 コップを手渡しビールを注ごうとするのを
「ハイ!ソコ!未成年に酒を勧めちゃ駄目じゃん!」とジャージが止めに入る。
 此処に来るたびコレが習慣…むしろ通過儀礼?になっている。
「アンタはコレ!」
 ドン!と缶コーラをオレの前に叩きつける……炭酸なのだからこういう扱いは非常にやめて頂きたい。
 コーラの悲鳴が聞こえないのかこの女は!?
 まぁそんな事言っても今のジャージは世界を回している御方なので仕方なく常備しているストローを取り出し、
 静かにプルを開けたコーラにストローブッさし仮面の隙間からズビズビと飲んでいる様をみて、
 いつもの様にゲラゲラとジャージは馬鹿笑いに転げ周り
「その飲み方変じゃん!」と仮面を剥がそうと襲ってくるのを
 カバディースタイルで逃げまくっている様を周りの皆が笑い、
 ジャージが息を荒げて諦めて席につくのを確認し、オレは反対側に腰をおろす。
「そういえば、昨日の爆発事件の時現場に居たんだって?」などと、吉田さんが話題をふってくる。

 連続虚空爆破事件
 無差別に起こる爆発事件があった。
 この学園都市というのは人口の8割近くが学生である。
 その学生は皆、何かしら能力に目覚めている。
 その能力を持つ学生がうじゃうじゃいると、少なからずソレ絡みの事件が起こることも少なくはない。
 で、虚空爆破事件というのがぬいぐるみや子供の鞄のようなものに爆弾を仕込むという手口で、
 風紀委員(ジャッジメント)や警備員(アンチスキル)に幸い死者はいないものの、負傷者を出す程の事件であった。

………
……

 昨日、某ショッピングモールの服屋の奥で仮面から流れる音楽以外の音を
 シャットアウトして色々と服を見ていたら。
 すぐ近くで叫び声が響き渡った。
「逃げてください!!――――――――」
 この仮面、普段は外部からの音をシャットアウトして好きな音楽を聴いている。
 が、その他にある一定の音量を超す叫び声とかキーワードを設定していると
 そのワードが抽出して聞こえるようにする事が出来る。
 その叫び声を聞いて急激にタマキの時間がズレ始める。

”集中”

”音声発生場所算出”――――後方 
 後ろを勢いよく振り向く

”現状把握開始”――――――四メートル先、男女一名ずつ、さらに一メートル先、
 こちら側に飛び込んでくる女性二名、さらに三メートル先、ちょうど地面に落下した固体一個。

 走り始めるため前傾姿勢になってゆく。

”機動限界解除”――――――初めの一歩を踏みこむ

”拡大”――――――――――四メートル先の女の子を抱えた少女の口元をみる。

 ゆっくりと、少女の口が動いてゆく。

「あれがb」

”右脳回転!!!!”

”想像力疾走!!!!!”

”集中力限界突破!!!!!”

”結果 映像”―――――――「あれが爆弾です!!」

”現状打破”――――――――手の届く範囲で七メートル先の固体を消滅される物体。皆無。
 鉄球の投擲――――固体の消滅不可。爆発の規模―――――不明。
 自分を含む五名に被爆の損害アリ。

”発想回転!!”―――――――目の前にある”物体”を盾につかうってのはどうだ?

”腕限界解除”―――――――高さ80センチ。縦一メートル。
 横二メートルの”物体”をタックルの要領で持ち上げながら走る。

 一メートル先、男女確認。

「爆弾んです!!」

 少女が叫び終わると同時に、上条が。
 その後を追うように御坂を挟んでタマキが商品棚を前方に楯のようにして走り抜ける。

 女の子を抱えた少女を二人が走り抜ける。

 上条は右手を前方に突き出し
 タマキは爆発の衝撃に備えて商品棚を投げつける。

 爆発が起こる。

 上条は右手で『異能の力』で作られた爆発を打ち消し
 タマキは爆発の衝撃を打ち消すように商品棚を全力の力で飛び蹴りした。

 結果としては、後方の三名に怪我は無く。
 別に結果オラーイだからいいだろ。という事で後ろで何か叫んでいた常盤台の学生を尻目に
 ダッシュでショッピングモールから離脱した。

……
………
 昨日は久々に脳が焼き切れるかと思うくらい集中――――というか、いやな汗かいたなぁ。

 ん?なんで逃げたかって?そりゃあ事情聴取とか面倒くさいもんね。

「あーはい、商品棚で「シールドーーー!!」とか言いながら盾みたいに使って爆発を凌いだっすね」
「まーたまたー、嘘だろ?たしかその時居合わせた常盤台の学生が打ち消したって――――」
「はい嘘です御免なさい。常盤台(中学生)の後ろでボケーとしてました。」
 なんだよ、そういうことなら先に行ってくれってんだよ。
「確かあの爆発の後にすぐ犯人捕まったんですよね?」
「ああ、その常盤台の学生がね」
「でも、なんで捕まえるのがあんなに遅れたんですか?『書庫(バンク)』で全ての学生の能力データ洗ったら該当者すぐ割り出せるでしょ?あの爆発、大能力者(レベル4)はありましたよ。」
「それなんだがな……」といって吉田さんは首をかしげる。
「あの爆発を起こせる学生が一人だけいたんだが、九日前から原因不明の昏睡状態になってたんだよ」
「その学生以外だったと」
「うん、捕まった犯人の少年が書庫に記録されていたレベルは異能力(レベル2)なんだよ。最近書庫のデータとの食い違いがある事件が多いんだ」
「ふむ。」
 という事は、間違いなく、普通に考えて幻想御手が関わっているだろ。

 つまみを食いながら仕事の愚痴やら世間話に耳を傾けていると「なにか面白い事ないか」
 と話を振られたので
 先程不良に絡まれ、その連中の中に『ラング』の先月号から抜け出したようなヤツが居た。
 と話したら皆腹抱えて「それはやり過ぎだ!」と大爆笑していた。

 何故にアンチスキル御一行っと輪になってオレが居るのか。

 簡単な話、数が二桁はいく不良を前に一人であっさり処理したのを通報か何かで駆けつけた
 ジャージに開戦から一部始終見られたのがきっかけで、
 それから何かと絡んでくる様になって現在ではこの有様なのである。

 そして対角に座っているジャージとここに居る酔っ払い共は今日も言うのだ。
 そろそろ教師を目指さないか?と。
 アンチスキルというのは警察官ではない。
 この学園都市で教師をやっている者達がボランティアでやっている自警団みたいなようなものである。
 まぁ、簡単に言うと

「お前もアンチスキルやらないか?っていうかやれ!」
 である。
 そういうのは日々ガチガチの正義感に燃える風紀委員ぽい人達に言った方が良いと思うのだが。
「彼等も頑張っているのは分かるんだけどさぁ、ガチガチじゃ困るんだよねぇ。」
 ……左様か。

 こちらは身に振る火の粉を払っているだけなのに
 ……ボランティア精神というのは今のところ持ち合わせてはいない。
 とはいうものの二区にはたまに足を運んでいたり、
 どういうわけか特例というやつなのか知らないが
 最近では普通にアンチスキルの訓練施設に入れたりする今日この頃なのである。
 ただの高校生が普通に入れていいのだろうか?こんなに適当でいいのだろうかと思いながら、
 アンチスキルが出動時に使用する道具だったりの使い方を教わっていたりするのである。

 時折この訓練施設で技術指導を受けに来る風紀委員達に変な目で見られたりするが、
 そこら辺どう思われてるのか知る由もない。

 そんなこんなで非番の教師達と世間話も尽きお開きになったのはキッカリ十二時。
 流石社会人と言うと「ダルイんだよなー」っと、
 大人の鑑を見ることが出来、三々五々帰路につかんと皆チリジリバラバラに帰って行こうとするが、
 吉田さんともう一人が皆を車に集めて乗せてゆく。そう、その為に彼はここにいるのだから。
 とは言っても、皆なんでいつも歩いて帰ろうとするのだろうか?酔っているからか?

「アンタも時間遅いから乗ってくといいじゃん。」
 アパート付近で止められても、その車じゃ誰の目にもつくし見た人間には
 『何かやらかしたに違いない』と思われるに違いない。
 これがまだパトカーみたいなヤツならかわいいのだが、生憎トラック二台なのである。

 


「ふあ~~。つっかれたー、家帰って寝るか。」
 と、コンビニの帰り、少年達の横をアンチスキル出撃様トラックが二台横切っていく。
 少年は思う。補導にしては重装甲である、それに二区とは反対側の方角に向かっている、
 深夜ということでサイレンを鳴らさないのはともかくとし、
 回転灯をも点けていないとなると何か大きな事件でもあったのだろうか?
 などと少年は推測していると、前の方で先の二台のトラックが止まる。
 ここ付近には何もない、在るとしたらもうちょっと先にある学生寮ぐらいの
 ……まさかこんな何の変哲もない場所で何かあるのか!?
 そして、トラックの中からゾロゾロと極力音を殺しながらアンチスキルの人間が出てきて
 あのアパートに突入してゆくのだろうと少年は予測を立てる。
 だが。降りてきたのは一人、それも顔を面?で覆っている、夜ということもあってハッキリとは見えないが
 ……新しいアンチスキルの装備なのだろうかとも思ったが、夏だというのに学ランを着ている。
 装備に学ラン?馬鹿な。
「誰だアレ?」知らずに少年は声に出していた。
「あの仮面男、第二学区のアンチスキルの訓練施設で見た。」

 ……なんだって?

 横にいるツレが何か言ったような気がしたのだが。
「前に風紀委員になろうって研修に行った時に見たんだよ。」
「なんだ、ってことは風紀委員か。」
「いや、風紀委員とは別でただ一人警備員と混ざって訓練を受けていた。」
「……どういう事だよそれ。」
「わからん、しかし風紀委員では無いことは確かだな。」
「なんでそう言いきれるんだよ。」
「風紀委員ていうのの管轄はあくまで学校がメインだ、外での活動ということもあるがな。
 それにあくまで学生でまだ子供だ。
 子供を危険に晒すわけにはいかない、
 だから風紀委員の仕事って言うのは警備員に比べると危険度は低いんだ。
 さっきの見ただろ、重装甲トラックが二台もだ
 ……警備員にしても危険が高いのだろう、風紀委員ならとっくに管轄外だ。
 それにもかかわらずだ、警備員と別行動
 ………新しい組織か試験的な組織かは分からんが重装甲二台分、
 恐らくあの男、アンチスキル十数名に匹敵するぞ。」
「……レベル五なのかヤツは?」
「レベル五のメンツの顔は分かるが、体格的にどれもあてはまらん」

 すると、仮面を被った人物は運転席に振り返る。

「ここ付近で大丈夫です、後は自分で行きますから。そちらも(帰りの運転)気をつけて下さい。」
「吉田(運転手)と後ろには框(後続の運転手)がいるんだぞ?心配するモンは何もねぇよ。」
「そうですか……ではまた(機会が有れば)。」
「はいはいー……それじゃあ俺達も行きますかね。」
 そうしてトラックは静かに過ぎ去っていく。

 残された仮面の男は空を仰ぎ
「今夜も月が綺麗だ。」と一言呟くと普通の足どりでアパートへと向かっていく。

「……前言撤回だ。俺達は……ただ、彼等の事を知らされてないだけなのだろう。
 ……見なかった事にした方がいい。」
「あ…ああ……。」
 先に歩き出した友人の後を追う。が、途中で振り返る。
 丁度仮面の男がアパートの方へと曲がっていくのが見えた。
 普通の足どり、まるで家にでも帰るかのようにリラックスしている様と月明かりの加減により、
 酷く異質にその男の目に焼きついた。

 


 っと言う様な
 そういう事態はご遠慮願いたいのだ。

「いろいろ厄介事が発生する可能性が高いので歩いて帰ります。」
 トラックに二台乗っている皆に別れを告げ、背を向けて家へと向かう。


 結局のところ今日買った本は読めずじまいだった。新刊は一人で読みたいタチなのだ。

「……。」

 明日読むとするか。
 あっそうだった…明日火事になるんだったっけ?部屋にある本とかパソコンとか、
 その他諸々コンテナの方に移しておくとしよう。
 ついでに土御門に電話をかけて、
 それとなくアイツの大事にしている宝モノ達もコンテナの方に移しておいてやっとこうっと。

 1コール、2コールと土御門が出るのを待ちながら鉄橋を後にして歩き出した。
 



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趣味:
コレといって固定はないです
自己紹介:
超弩マイペース。
自分のペースを乱されると拗ねて
寝ます。
血液ゲノムで天然B型と発覚
「こ、こいつ…先の行動が読めねぇ(汗)」だそうです
血液ゲノムとか信用すんな。
血液型占いとか信用すんな。
人を信用すんな