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 なぜ吹野が『身に起こる出来事』を伝えなかったのか、真意を掴もうとしている時にそれは起こった。

 

"衝撃波探知"

"音声発生場所算出"――――――――直線距離30メートル

"検索"

 


「は?」
 

 静寂の中、表示された文字とおおよその検出場所を示すこの建物の地図に呆気にとられてしまった。
 

 タマキ自身、音を聞いていなかったからだ。表示されたデジベルからは聞き逃す事はありえない音量。
 



 なんだこれ?


 

"衝撃波探知"

"音声発生場所算出"――――――――直線距離30メートル

"衝撃波探知"

"音声発生場所算出"――――――――直線距離30メートル



 三度目の表示が出たときには、既に体が動いていた。


 二階へと駆け上がる。


"検出"


 三階へとスピードが増す。


"検出"
 タマキは駆け抜けざまに壁の一枚を引っぺがす。
 目的の階へ上がる前には、おおよそ行き先にどんな人間が居るのか見当がついた。



 二階の踊り場付近から張り巡らされていたというのに、
 文字の表示を確認して目を向けるまで『そこら中に貼り付けられた変な記号の紙』を認識することが出来なかったからだ。
 それに加え、紙に書かれた記号をよく見てみると、検索で『ルーン文字』がヒットした。


 オカルトが病的に好きなヤツに間違いないんだが・・・・・・――――



 ᚲᚨ  ケン アンスール



 ――――笑えねぇ。炎と知恵のシンボルをそこら中に貼り付けただけで人の『認識を外す』事が出来るなんて、悪趣味以外のなにものでもないな


 タマキはその札の特性を見抜き、
 先程の吹野の件の真相は明後日の方向に投げ捨てた、今はそれどころではないと。
 集中が研ぎ澄まされていく要因は、ただ単にこれから戦闘をおっ始める事に因るものだけではなかった。



 まったくもって悪趣味且つ笑えない事はもう一つある。
"検出"され、自身で意識して目を向けるまで、タマキはこの札を認識することが出来なかったという事実だ。
『記号暗示』自体はさして学園都市の分野ではそう珍しく無い。
 しかしコレはその枠からかけ外れている。
 記号というのは、或るものを示すものである。
『記号暗示』というのは記号であるが故に、まず初めに対象者がソレを視認しなければ効果を発揮しない。
 このように、ソレ自体が『視認せずして対象者の認識を外す』という自己矛盾を孕んだモノがタマキの知識に引っ掛るモノが無かった。


 この札は明らかに『記号暗示』のプロセスを根本から覆していた。
 なぜなら


 二階の踊り場付近からしか張り巡らされていないというのに、"衝撃波探知"の表示があっても『タマキ自身はその爆音を認識する事が出来なかった』からだ。


「・・・・・・・」


 おまけに、この紙自体に何かの化学薬品は検出されなかった。この紙の検査結果は、まんま紙でしかなかった。


「・・・・・・・・・」


 カチコミ用の手袋を嵌め、鉄球のホルスターを外し掴み取る。


 中途半端なトコ割り込み参加させて頂く、選手交代の合図は仕掛けるのが礼儀――――ってか!!
「――――何!?もうひと――――!!!!」



 飛び込みざま――――威力なんかより速さを重視したフォームはサイドスローぎみの投擲。
 上条の顔をスレスレで通過した鉄球を服装が陰気臭い男は掠る程度で避けた。


「動くな!!特別風紀班だ!!今すぐに能力を無力化しろ!!次は確実に当てるぞ!!」


 避けやがった 致命傷にすらなっていない 額を掠って片目の視界を奪う位にしか役にたたない


「お~い、ニホンゴわからねぇのかぁ!?ぁあ?
  Special City Squad(特別風紀班)っつってんだよ!!聞こえねぇのか!!」

 
 しかもふっかけても全然動じねぇ。マジで困ったぞ、嫌な予感が的中だ


 タマキの嫌気が集中力と比例して右肩上がりになるのも無理は無い。
 上条が圧されている炎の塊は、この都市のパイロキネシス(能力者)が使うものにしてはまわりくどい方法だった(いちいちそんなモノに形作らない)からだ。
 それに視界の隅――――数台の掃除ロボ達の隙間に、昼に見たあの安全ピンデックスが明らかに重症の状態もセットで付いてきた。


「その炎で出来た不細工なオブジェ――――"結果 映像"――――って、クソッ!」


 ダッシュで駆け寄り上条の襟首を掴んで即ユーターン。


 おまけに相手は状況把握と優先順位の決定速度が恐ろしく速い――――


 回避とショートカットの理を兼ねた意味で、タマキは上条を引っさげたまま手すりの外側へ沿う様に飛び出す。


 ――――かなり慣れている。街中の普通の不良でもなければパンクな格好をしたサイケ野郎というわけでもない。


 

 一階下の通路にある手すりに手を掛けそのままそれを軸に振り子の様な動きで内側に入る。


「お、おまえ――――」


 襟首を離すと、数秒力無く咳き込んでいた上条がげっそりした顔つきで訴え始めようとしていたが、


 今は何より時間が無い、そんな雑談よりも


「現状把握したい。今北産業で頼む」


「あいつHENTAIロリコン猟奇ストーカー。
  上にいる幼女をしイプしようとしてる。
  人型のアレから逃げれた。←今ここ」


 差し伸べていた手を掴み、立ち上がりながらの迅速な回答は少し驚いた


 意外と切り替えは速いな


「OK把握。………それにしてもこの有様、上がってくるときに見たときは
 新手のマーキングかと思ったぜ。」
「・・・・・・いつの間にこんなモン貼り付けられてんだ?気付かなかった。」
「ちょっとまて、いま気付いたのか?」
「あ、あぁ・・・・・・。」
「俺が上がる時、二階の踊り場付近から既に貼られてたぞ?」
 コイツの右手が突破を可能にしたのか、左手にぶら下げた布切れが可能にしたのか・・・・・・



 轟!!



 あっ、さっきの変なのが来た。出会い頭に鉄球ブン投げといてアレだが、確実に殺す気だな。


 上条と同時に炎へ背を向け逃走を開始する。


「げっ!やっぱ追って来やがった!」
「――――」
「――――」



 人間一人背負った状態で先程のショートカットを後五回程やれる自信がない


 さっきまで、
 二階に駆け上がり始めてからずっと集中しっ放し
 対峙してる間の集中力限界突破
 投擲及び機動効率に拠る『回転』の常時使用



 既に頭と全身の内側――――神経が痛い



「・・・・・・・・・――――-に吹っ飛ばされるわ常識的に考えて!!ってか、さっきから俺に死ねっつってんのかッ!?」


 冗談でやっているのかと思ったが、どうやら本気でパニクってたのか


「さっきからお前さんの両手にぶら下がってるモンは何だ?アホ上トンマ」
「――――ッ!!!!そ、れ、を、」
  一にブレーキ、二に構え、三~四で
 「先に言えッ、忘れてたじゃねぇか!!!!」
  振り向き様に右の拳で殴りつけ、そのまま拮抗し、押さえつけた。


 右手も通用するのか


「グレートだぜ康一、そのまま敵スタンドを押さえつけておいてくれ。
 その間にオレは敵スタンドの本体をたたく――――。」


 コイツ・・・・・・インデックスが『歩く協会』って言っていたヤツのフード部分は壊してなかったのか――――"気流検知"――――ッて


「――――と、言いたいところだが・・・・・・」


 地面、壁、天井、そこら中に貼られたルーン記号の札の一つ一つに、著しく局部的な空気の流れが生じている。
 これはもはや局部的という表現は誤り――――この一画全体だ、何が起こるのかは予想しなくても誰でも解る。


 俺の言い草に上条も気づいた


「なんかヤバくね?」
「言ってる暇があるか!上条!!チビるなよ!!」
「ガフッ!」
  先程と全く同じ扱いで引っ張る。


 にしても、あ~~ウソだろ~~~


 上条の右手の有効範囲と、フードの有効範囲は――――果たして多角度から向かってくる高熱でも人一人覆える程に広いかが不明だ
 上条からフードをもぎ取って体を張ってソレを立証する気には到底なれない


 さすがにこの高さから他人背負って跳んだ試しがないが・・・・・・・・・・・・やるしかないか


「・・・――――ッ!ちょっ、ちょっと?ちょっとまてタマキ!!ここ六か」
「知るか!!」


 内と外を区切る手すりに足を引っ掛ける


 跳べなくても跳ぶ!跳ばなくては死ぬ!死ぬよりは跳ぶ!!


 本日二回目のダイブ、遠ざかってゆく通路まるまる一画がバックドラフトでも起こしたかのような爆発と――――


 「アッー!」


 ――――情けない叫び声を背中で感じるタマキだった。

 

地面に着地したのはそれから約三秒後。

 



「うぅぅぅぅ………」
 

 自転車置き場に着地成功。というか、コンクリに全ての衝撃を分散させるのは無理だったか、
 足が・・・・・・ちょっとまずいな。まぁ、時間が経てば大丈夫だろう。酷い吐き気だ・・・・・・内臓は・・・破裂してないし満点だろ


「うぅぅぅぅ………うぅ、怖かったよ~」


 上条の方は・・・・・・外傷はないし挫傷は、オレがおっ被ってるからまず大丈夫だろう
 脱臼の類も無いか。ありゃただ腰が抜けてるだけだな
「立てるか?」
「・・・・・・・・・・だめぽ」
「だよな――――」


 仮面が少年の背中に喝を入れると、やっとのことで二本の足で立つことが出来るようになった。
 あの高さから飛び降りて、なぜ無事でいられるのか聞かれたが、タマキは平然と自分の履いている靴のおかげだと言う。
 そのことを告げると少年はピンときたらしく、今日学校で小萌から聞いた被験者と結び付けていたが、
 その過程はどうあれ結論は当たっていた。
 それに、先程までの危機的状況下でタマキが発した特別風紀班というものに関して問いだすところ、
 この少年、意外と抜け目が無いと同時に、戦闘に際して複数で動く事に慣れていないということも先程の立ち回り方で解ったことでもあった。


 

 それらから、タマキがこの場で判断したことは
「――――それより上条、インデックスとはどういう関係だ?」
 この場から少年を安全に撤退させることだった。


 上条がその問いに対し反射的にタマキから距離をとるため跳び退き身構える。


 仮面自身、この問いで相手が瞬発的に殴りかかってくれれば上出来だと踏んでいた。そうすれば一撃当てて意識を刈れば
 間違っても、彼が死ぬことは無いからである。が、飛び退いたとあれば、話を続けるしかない。


「お前もさっきのヤツと同じ魔術ってオカルトを信じてる危ない組織の派閥かなんかか?」
「は?」
「いや………確立は低いだろうが一応確認のつもりで言ったんだが、理解した。お前は俺の敵じゃない事も分かった。
 そして時間も無い、インデックスが危ない。あの魔術ってシステムをどうやってぶっ壊すかだなぁ………」


 あとは、自然に会話を進めながらコイツから距離を取ってくしかねぇか。などとつぶやきながらまだアパートに居るであろう魔術師とやらが
 やってみせたソレを、頭の中でもって打破を試みる。


 あのルーン文字の書かれた札が力の源だ。そうでなければ、あれ程の枚数をベタベタと貼る事に意味が無い。
 現に、アパートの二階からあの炎の塊が一歩も外に出ていないというのが相手のシステムを如実に悟らせていることは上条もその様子を見れば気付く事が出来るだろう。


 ソレを見るに、相手の戦闘力を無効化にすることにおいてアパートに立て篭もっている事実、
 普通に考えれば直ぐに思いつくことが出来るものがある。が、


 最悪だ、スプリンクラーが使えない。最先端が仇になってやがる。


 しかし、仮面で表情が伺えないタマキの気分は優れないものだった。


 そう。
 現状況において、これ以外無いとされた一手が封じられている事にタマキは気付いてしまっていた。
 このオンポロの学生寮、襤褸と形容されているがそれでも学園都市の恩恵をしっかりと受けているのだった。


 つまりは、


 この都市ならでは、とでも言えばよいであろうか
 この寮のスプリンクラーに使用される水


 揮発性が高いのだ


 あまりそういった場面に遭遇しうる機会というものが少ない事もあり、
 この都市に住む学生でも、その存在を忘れがちにされてしまうが


 この水では、どう足掻いてもただの紙に書かれた水性のインクでさえ滲ませることすら出来ないのだ。


 他に案が無いとすると、短期決戦でしかないか?まぁ、それでもいいか。そろそろ足は・・・・・・よし、動くな。
「おーい、かみじょーーー、なにボケーとつっ立ってんだ?つっ立ってんのは別にいいがお前も頭使え。手遅れになる前にあのロリコンぶっ殺すぞ~」
 少年が頭を働かせ何か案を練っていると見る間に、
 トコトコと学生寮側へ歩いて行き上条が飛び降りている最中に(正確には飛び出す時の反動で)落とした
 歩く協会という名のついたフード部分を拾い上げクルクルと指で回す。
 


 このフードで、魔術師が繰り出した全ての攻撃を防いでいたという上条が告げる事実、タマキはやはり一人で行く事に決めた


「ナイス、後は目の前のアレをどうやって無力化するかなんだよなぁ~。やり方は解ったけど物が無いんだよなぁ~」
 単騎で行くとは決めたものの、やはり戦闘を有利に出来るものがあれば惜しみなく使っておきたい。
 願わくば、寮全体を水浸し出来る程の水が欲しい等と、仮面には珍しい現実逃避が台詞の中に混ざっていたが、
 それも結局は冗談半分で


 あとは、コイツを現場から――――


「どういう事だよ?」
 ――――あれ?何か作戦考えてたんじゃないのかコイツ?えっまだ気付いてなかったか・・・・・・それはそれでよし、そのまま一生考えてくれ。
「二階の踊り場付近からしか、あの変な[紙]が貼られてなかったっつったろ?」
 タマキの視線の先に目をやった上条の口から笑いが零れた。


「ハハッ………。なぁんだ………簡単なことじゃねぇか」
「まぁな。システムは簡単みたいなんだが――――って、オイ!上条!!」
 タマキの横をすり抜け猛ダッシュで学生寮へと上条は駆けてゆく。


 オイオイオイオイマテマテマテマテ!!――――クソッッ!足がまだ!!


「急げタマキ!!良いアイディアがある!」


 ぁんの馬鹿!!あいつゼッタイ警報押しに行こうとしてるだろっっ!!!!
「上条待て!それは無理だ!!」
 Oh!SI・KA・TO!!はっはっはっはっはっは~い。ヤッベー久々にテンション上がってきたぁー、よ~し魔術師の前にあの馬鹿の両足へし折っとくか。
「ゴルァア!!待てや上条ぉおおお!!!!」

 


 変なテンションのまま上条の後を追うタマキだったのだが、どうにも足が本調子ではなく――――走るというよりジョギング程度の速度しかその足は進まず。
 結局のところ前を走る上条の愚行と言って差し支えないソレをとめることが出来ず、タマキが少年のもとへとたどり着いた時には警報が鳴り響きわたり
「――――――-ッ!」
 声を荒げて上条に訴える仮面の声はかき消されており「なんだって?聞こえない」と、少年が言っている事が窺い知れた。
 せめてタマキが仮面を被っていなければ口の動きで何を言っているのか分かっただろうに・・・・・・。


 

「――――味無いっつって・・・・・・」とようやく警報が止み、スプリンラーから水が出始めると、
 先程までの苛立った気配が納まり何やら飛沫のあたる掌を数秒見つめた後
「・・・問題ない、行こう」と上条を促し、二人はエレベーターに乗り込んで七階のボタンを押すと、扉が閉まり目的の場所へと動き始めた。



「さっき何て言ったんだ」
「いや、なんでもない。気にすんな」



 なんでもなくない。
 なんで『普通の水』になってんだ!?


「そういえばさっき上に居たあのロンゲが、神道の信者や仏教徒や無宗教者を合わせると
  約四億人に達するこの国はミステリアスって言ってたんだけど、どういう意味?」
「んじゃ処女懐胎で生まれたヤツを崇めるテメェ等の思考の方がよっぽどミステリアス通り越した方々ですね、って返せ」


 水になってるのはいい事だが
 誰かが入れ替えない限りありえない
 ご都合主義にも程があ――――まて
 そんな事やるヤツ?いや、そんな事できるヤツ――――っ


 タマキはものは試しとばかり、一人心当たりのある人物に通話回線を開く
 が、取らない。
 確定。アイツがやったか・・・・・・アイツが直接『視た』のは『自分自身』と『オレ』と『コイツ』だけだもんな


「・・・・・・その発言かなりやばくないか?」
「知らん」


 賭けたか・・・・・・、
 車の件も言われていたら、たぶん気が変わってコンビニに寄らず(暇を潰さず)、上条(コイツ)にも会わず早々に切り上げていた可能性がある。
 つまりは――――


 二人を乗せたエレベーターが目的の階層のランプ点灯と、
 今までその身にかかっていた重力の圧の緩やかな薄れによって終点を知らせる。



 ――――チン



 はぁ………。
「頭痛くなってきたぜ」

 

 

 

「馬鹿な!!」
 エレベーターと通路を隔てた更に先に、魔術師は亡霊でも見るような顔で叫び狼狽えているように見えた。


『狼狽えているように見えた』


 そう、タマキの目には演技に見えた。


 というか――――演技もなにも、奴さんの『本当に立っている位置』がずれてんだから演技じゃなくて罠ってもんだよな。


「……イノケンティウス!!」
 ボッ!!と、タマキと上条の背後からクランクアップして舞台を降りた矢先、魔術師の呼び声でいきなり舞台へ再び蹴り入れられた様な役者の如く現れた人型を模したソレ。
 なんとも、見ようによっては間の抜けた様なはたまた役者がその役にまだ入りきれていない時のなんともギクシャクとした・・・・・・、
 有り体に言ってしまえば、先程と比べると月とスッポンの・・・なんとも意気消沈とした体たらくだろうか。


 焦った表情から一転、余裕の面になるところを見るに・・・彼(魔術師)は真剣に舞台に上がる道を目指した方がよいのではないだろうか?と、
 この場に際して、そんな戯りを心の中でぬかす仮面も人(上条)の事をトンマ等と言えた口ではなかろう


 閑話休題。それはさておくものとして、


『「ハハッ!おまえさん、自分のスキルに名前つけてんのかよ?そんなのは格闘ゲームだけで十分だっつーの、言ってて恥ずかしくねぇのかよ?
  そっかぁー、イノケンティウスって言うのかコイツ」
 (上条、面に出すなよ?この声はヤツに聞こえてない。お前さんにはヤツの立っている位置が左側に立ってる様に見えてるだろうが実際は右側にいやがる、
 原理は蜃気楼だな。アイツの位置は――――)』


 上条はこの二重に聞こえてくる声を聞いた瞬間、あまりに唐突さに肝っ玉がその口からでかけたことだった。
 一体どうやって喋っていやがる!?といった絶叫を心の中に捩じ込み閉じ込める事に専念していると、
 視線の向こう、魔術師の更に後方で、少年が蹴りを入れて停止させた筈の掃除ロボ達が――――静かに起動(起動状態時に点灯しているランプが確認できた)し、
 ゆっくりと……仮面が告げた、己の目で見えている左側の魔術師――――ではなく、何もない右側の空間を
「ここだ!ここにヤツが居る!!」と告げるように
『掃除ロボのカメラ』がその方角を指し示した。



『(―――さてと、)』



 タマキは、人を卑下にでもしたような台詞とは裏腹な冷静な口調で座標を示した。
 誰から先に動いたのか・・・・・・二人とも、普通の足取りで魔術師に向かって歩き出した。
 
 



「イ、イノケンティウス!!」
 そう叫ぶと同時に二人に襲い掛かってきたのだが仮面がズボンの後ろに挟んでいたインデックスの歩く教会をイノケンティウスにぶち当てると
 空しい音を鳴らせながらこの世界から消滅した。


 
「何が起こっている!!??なぜイノケンティウスが弱体化している!!!???
 イノケンティウス!!イノケンティウス!!IIBOLAIIAOEIIMHAIIB――――-」


 魔術師は、またあの言語を世界に振りまいている様子を痛々しく思いながら上条が口を開く。
 だが、ここまでくると最早茶番でしかない。



 「テメェが勝手にベタベタ壁に貼り付けてたルーン文字は――――」
『(アイツはお前の能力を見ていない、俺達が蜃気楼の方が実態だと思いこんでる―――)』


  魔術師は未だに呪文をアブラカタブラと唱え続けている、まるで精神の崩壊を食い止める為に行う防護行動とでも言うように。


 「ただそこらにあるプリンターで印刷した水性の『水に溶けやすいモノ』だよな」
『(だから、スタートは同時で行くぞ。オレはほんの先にこのフードで幻像を破壊する、そのあとの数瞬うまれる隙でアイツを仕留めろ)』
  ソレを無視するように上条が言い捨てたときには、さすがに魔術師の動きはピタリと止まってしまっていた。
 
 
「テメェがそのままコンクリに文字彫っていたらさすがにコチラもアウトだったけど――――」
『(仕掛けるタイミングはお前さんにまかせる。)』
 
 二人同時に、まさに阿吽の呼吸で走り出した。後戻り無しの一発勝負。
 
「下ごしらえがお粗末だったな!!」
 
 
「ばッ!!――――」対して魔術師焦った声を反射的に出しているようであったが――――



 しったこっちゃねぇええな!!



 その心の叫びは仮面と少年どちらのものだったのだろうか。上条が――――
 その傍らをピタリと並走し、タマキはフードを楯のように構え廊下をつっ走る。


 傷ついた少女、インデックスの脇を二人が走り抜ける。


 上条は最大の力を最後に踏み出す足に――――そして右手に――――
 タマキは一瞬、少年よりも頭二つ分ほどの距離をつけて――――


 爆発が起こる。


 タマキは左手の歩く協会で『魔術の力』で作られた爆炎を打ち消し
 上条は爆炎の衝撃をそのまま魔術師に返さんばかりの右手をもってして、全力の力で魔術師を殴り飛ばした。


 



 その、糸の切れたマリオネットの様にゴロゴロと派手に転がり仰向けになった魔術師の朦朧とした視界に仮面が映りこむ。
「まだ意識はあるみてぇだな。」
 焦点の定まらぬなか、
「またインデックスに近づいてみろ。また国の風土を貶してみろ。もしくはオマエの大好きな祈りの言葉を言ってみろ。貴様らの創造主に会わせてやる」
 魔術師にシメの台詞と共に・・・・・・彼、スティールの胸部をその足は鉄槌の如く強かに蹴り下ろされた。


 


 

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追記

 ルーン文字何使ってるか
 この話数のアニメを確認。

 確かスティールって24文字を30に増やしていたから
 24文字以外のもの使ってたらアウトと思ったのだが、
 バインドスペルとかで読みにくくされていることも無く
 そのまま二文字だったのは、それはそれでちょっと萎えた。
 まぁ、シンプルが故に強力ととるべきなんだろう。

 魔術の組み立ては複雑っぽいけどな!b
両方の軸のバランス考えて削いで削いで削ぎまくったら
文字がものすごく少なくなってしまった。
要点だけをまとめ過ぎた感もあったけど、
ココは仮面の描写は………このくらいが妥当と判断。
情景描写や心理は上条の軸に詰め込んでるし・・・・・・。
二人の性格の違いなのか、場数の違いなのか、本質的な違いなのか・・・・・・・・
結果的に削りまくったのって情景とかが殆どだったし・・・。

その代わり上条とは違うベクトルで魔術に介入&解析思考はもってたしまぁいいか。
スティールと逆の住人だし(上条もそうですが(汗)

『記号暗示』なるものは自分が勝手に書きました。

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コレといって固定はないです
自己紹介:
超弩マイペース。
自分のペースを乱されると拗ねて
寝ます。
血液ゲノムで天然B型と発覚
「こ、こいつ…先の行動が読めねぇ(汗)」だそうです
血液ゲノムとか信用すんな。
血液型占いとか信用すんな。
人を信用すんな