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 どうして自分は金がないのか。
 答え、レベル0だからである。
 超能力のレベルが高ければ高い程、月に支給されるマニェーの額が上がってゆく。
 超能力のレベルが低ければそれ相応の額が支給される。

 現在、上条当麻はレベル0である。
 320円の牛丼を支払うと財布の中に残った硬貨は銅貨が二枚、財布が悲しく口を開いた状態であった。
 少しは腹の足しになるであろうと、測りできっかりと重さの図られた、
 男子高校生の視点から見れば本当に『チマッ』とした一番安い牛丼なんぞ
 食べ終わっても腹の足しにもならないぞと胃袋が主張するかのように腹を鳴らすのが現状である。
 今日の朝、小指をぶつけた、冷蔵庫がお亡くなりになった、ベランダに少女が干されていた、
 噛みつかれた、そしてまた小指をぶつけた、キャッシュカードを踏み砕いた。
 黄昏時の、今から遊びに出掛けるであろう人々とすれ違うなか、
 上条当麻の口から思い切り吸い込んだ息をすべて吐き出すかのような長い長い溜息がこぼれる。

 レベル0でも最低限の家具等は支給されており生活に困らず、
 たまに外食や遊技場で遊ぶだけの余裕はギリギリある程である。 
 しかし、家具等に関しては住まう事になった時の話であって、
 暮らし始めてもし故障してしまった場合は、
 レベルがそう高くない大多数のパンピーは当人の自己負担になる。
 しかし、場所によっては故障してしまっても保障されている所もある、
 例で挙げるのであれば、レベルの高い名門校と提携している寮とかが当てはまる。
 彼、上条当麻の住んでいる最安値のオンボロ寮にはそういった保障なんてものは付いてるわけもなく、
 少ない金でやりくりしていかないといけないわけである。
 その生活の源であるキャッシュカードを踏み砕いたおかげで
 新しく発行してもらいに行かなければならないのだ。
 面倒くさい事このうえなし。
 補修の方は夕方まで居残りさせられたわけなのだが、
 帰る際に土御門から遊びの誘いがあったがキャッシュカードの件もあり断った。

「今から発行してもらいに行って……この時間帯からは冷蔵庫買っても明日だろうし……」
「―――待ちな――――ンタ!」
「ん~……二日くらい外食になっちまうか。」
 そんなことをボヤキながら歩いていると、何やら後ろがガミガミと騒がしいので振り向くと
 昨日の女子中学生が胸倉を掴みかかる勢いでこちらを睨んでいた。
「なんだビリビリ?もしかして俺に話しかけてたのか?」
「アンタしかいないでしょうがバカ!」
「お前の眼は視野角九十度ですかコノヤロー、オレ以外にも道歩いてる人間なんて腐るほどいるだろーが」
 なんでこういつもいつもこういう奴(っつーかコイツ)にからまれるんだろう俺……不幸だ。
「あ~ぁ、今日も相変わらず夕日がきれいだなぁ―。あれ?なぜか涙が出てくるよお母さん。」
 そう言いながら目の前にいるビリビリを無視して、
 空に漂っている伝言掲示板を眺めている上条であった。
「何一人黄昏てるのよアンタ」
「っつか。お前なんで制服なんだよ?もう七月二十日(夏休み)だぜ?」
「うっさいわねぇ。アンタに関係ないでしょ!」
「なに?飼育小屋にいるウサたんに会いに行ってたんかよ?意外とさみしがり屋さんの飼育員も大変だなー」
「かッ!勝手に変な設定付加してんじゃないわよ!」
「んじゃ、俺今日は暇ないんでじゃぁな」
「待ちなさい!……アンタの用事なんて私には関係ないわよ。
 今日という今日はそのツンツン頭アフロにしてやるわ」
「やだ」きっぱりと切り捨てる
「なに?こんな人がごッたがいしているような場所じゃ周りの人間に被害が及ぶとかっていう善人精神?」
「おお!わかってるじゃねぇかビリビリ!この難問を解けたあなたには景品として二十円が贈呈されます」
 と、ごそごそとポケットから財布を取り出そうとしている上条
「ッ――――!」バチンという何かが弾けたような音と共に目の前のビリビリがキレた。
 それと同時に上条の視界の隅で学生がいじっていた携帯の画面がブチリと切れたのをとらえる。
 多分、今のでここ一帯の電子機器がイカレたのだろう。
「アンタ……なめてんじゃないわよ―――――」
「ちょっと………待った。」と
 今にも電撃をあびせようとしている中学生に対して顔を蒼白にし手で制する。
「止めようったって無駄よ……アンタがどう許しを請うが――――」
「さっきの電撃、ってか一部始終――――」そういいながら恐る恐る彼女の左後ろ方向を指さす。
「風紀委員に見られてるぞ」指をさした方へ微かに目を動かす。
 天敵となる風紀委員やジャッジメント等のワードを出すと大体感情が高ぶっている奴は、
 一気に水でもぶっかけられた様に強引に冷静さを取り戻し、大部分の人間は……
「えっ?」一気に血の気が引いて行く彼女はゆっくりと指のさされていた方角に顔を向ける。
 が、そこに風紀委員なんてものは皆無で、
「………ッ!しまった!」と思い上条のいた方向に向き直ると彼の姿は消えていた。

 逃亡完了、ミッションコンプリィィィィト!
 状況判断で行動に移したではあるが……これから遊びに行くという、
 人々の通行が活発な時間帯に救われた。
 我ながら演技が絶妙だったぜと自我自賛する上条であった。
 音を立てずに、気配を消し、20メートル程ダッシュでビリビリから離脱し、
 逃走経路と進行方向、自然と出来た人の塊の中に紛れ、後は頃合いを見て裏路地へと入り、
 そのまま入り組んで迷路のようになった細道を、不良のたまり場等を避けながらひた歩く。
 建物が乱立しているため、
 場所によっては裏路地から入るしかないアパートや店といったものがあったりする。

 あのビリビリとは戦いたくない。
 面倒ということもあるが、彼女の出す電撃や磁気を発生させて周りからかき集めて作り上げたムチ等、
 しまいには落雷といったモノを今までかき消してきたわけだが、
 上条にとってそれらの攻撃を打ち消してきたのは、ほとんどの確率でマグレの類なのである。
 右手に宿る異能を打ち消す力は有効範囲が極端に狭い、
   なにせこの力が発揮するのは右手のみなのである。
 もしビリビリの放つレールガンが手首にでも当たってしまった場合、
 有効範囲外なので想像するとゾッとするが、確実に右腕が吹き飛ばされる。
 それに相手は高速で攻撃を放ってくる、
 ある程度の攻撃箇所は予測できるが今まで右手で打ち消し続けてきたのは
 マグレの連発で起きたモノなのである。
 なのでビリビリと対峙する時、上条はいつも綱渡り状態なのだ。

「もういい加減、この調子だといつか俺マジで死ぬぞ………あ」無意識に寮へと向かっている事に気づく。
 戻ろうかとも思ったが、なんだか空も暗くなってきたし面倒くさくなってしまったので
  キャッシュカード云々、家具云々は明日朝一に予定を変更することにした。
「はぁ……不幸だ。なんでいつもこういう事になるんだろう?」
 右手が大気に触れているだけで君はバンバン不幸になっていっているって事だね♪
 不意にインデックスと名乗った少女が言った言葉を思い出す。
 自分の右手を見る、溜息すら起こらない。
 ってことは、そんな右手を持って生まれてきた事が一番の不幸じゃねぇかぁぁ!ウギャーーーー!
 等と心の中で絶叫する上条の視界の向こう側にだれかが歩いてくる。
 今歩いている道は人が二人すれ違う事が出来るだけの余裕はある、
 なので下を向きながら道の左側に寄りながら歩く上条であったが
 向こうにいる人物が足を止めていることに気づく。
 はて?と思い顔を上げると
「お前、ここまで来るとストーカーですか?怖くなってくるんですけど。ってか怖い」

 上条の足が止まる。
 先程、逃げ切ったと思っていたビリビリ中学生が立っていたのだ。
 そのビリビリの顔が怒り心頭といった感じではなく
 平然とした顔なのが逆に今から戦闘をおっ始める緊張感を漂わせていた。
「ってか、俺に発信器か何か仕込んでるのか!?マジそうなら怖いんだけど」
「勘よ」ぼそりと、一言だけ告げる。
「勘か……、ここまで来ると赤い糸だな」いや、マジで勘だけでここまで来られるとね。
 戦闘の赤い糸的な…………いやだ、そんなのいらねぇよ…不幸だ。
「バッ!ナッ何言ってんのよアンタ!」
「ん?」
 顔を赤く染めて今までの真剣な態度が崩れる彼女に頭をかしげる上条
「そり――それよりアンタ。もう逃がさないわよ」
「もう逃がさないって、イヤん♪ここから恋が始まるわけで――――」
 上条の台詞は彼女が顔面に向けて放った電撃で中断された。
「いきなり撃ってくんなよ!ビビッたじゃねぇか!」
 咄嗟の行動で顔を右手で覆ったおかげで電撃は打ち消され、冷や汗を垂らしながらも無傷で立っていた。
「アンタはいつもいつもそうやってふざけてるのが気に食わないのよ。
 逃げようったって後ろから鴨撃ち(狙い撃ち)だけどね」

 場所が悪い、細道+一本道で後ろに走って逃げようにも30メートルほど先にしか曲がる道がない。
 コイツ、コレを狙ってやがったな!?
 考えろ!現状を打破できる方法を何か考えろ!
 後ずさりとか逃げようとする素振りをしたら電撃で丸焦げになっちまう。
 幅が狭いせいでコッチが逃げ回るような空間が無さすぎる、何か――――
「………………いつも負けてるから悔しくて挑んでくるのかと思ってたんだが」
 物凄くやる気のない声とやる気のない態度をとる上条。
「あんなの!勝敗決まってないじゃない!」
「でもいつも俺に傷一つ付けられないで一人で勝手にスタミナ切れになってんじゃねぇか。
 お前が色々と試行錯誤しているのを俺はただ打ち消しているだけなんだし。」
「だから無効って言ってんのよ!第一私もアンタから一発も殴られたりしてないもの!」
「んじゃもういいよ。はい、お前の勝ちで。これでいいだろ?
 もう喧嘩ふっかけてくるのやめてくんねぇ~か?」
 傍から見て気力も欠片も微塵もない様な脱力感満載の上条であった。
 正直勝ち負けは彼女が勝手に持ちかけてきた価値観なのでどうでもいい……早く帰りたい。
「ちょッ!何勝手に決めてんのよアンタ!そんなんで私が納得すると思ってんの!?
 マジメにしなさいって言ってんのよ――――!!」
 そう言って、体に張っている電気の帯電量を増したついでに上条に向かって電撃の槍を二つ放たれる。
 それを上条は、右手を円を描く様にして二つの槍を打ち消して、
 未だに乗り気ではないといった感じにその場に突っ立っている。
「はぁ……マジメにかぁ~………」
「そうよ。マジメにやんなさ――――!!」
 はぁ~~~、と。本当にうんざりした様な長い溜息をついて、

「じゃあ、本気にやっていいんだな?」

 そう言い放った上条に美琴は凍りついた。
 先程まであんなにも気怠くやる気がなくニヘラ顔していた上条当麻が
 今まで見せたことがないくらいに真剣な目でこちらを見据えていたからである。

 ゆっくりと、普通のような足取りで上条当麻が美琴の方へと足を進めてきた。
 先程彼女の放った電撃を打ち消した右手を軽く握り、そして開く。

 御坂美琴は動けない。

 思考する。

 この男は何を言っていた?
 目の前にいる上条当麻という男、「じゃあ、本気にやっていいんだな?」という言葉の前に
「お前が色々と試行錯誤しているのを俺はただ打ち消しているだけなんだし。」と言っていた。
『ただ打ち消しているだけ』その言葉を思い出して悪寒が走る。
 今までこちらが本気で仕掛けてきたありとあらゆる攻撃を彼は『ただ』と片付けた。
 上条と御坂との間の距離は五メートルと迫っている。
 彼の足は止まらない。
 彼の能力は相手の能力を打ち消すこと・・・・・・もし、この男が言う『本気』を出された場合、
 本気・・・・・・。憶測の域を出ない訳だけど。
 もしかして、相手の能力を土台消し去る事!?
 御坂美琴は動けない。
 先程までの戦闘意欲をごっそりと、彼の一言で削ぎ落とされていた。

 蛇に睨まれた蛙の様になってしまった御坂を見て、上条は作戦の成功と少しショックを受けていた。
 効果が利きすぎた・・・・・・そんなに化け物を見る目で俺を見ないで欲しい。
 上条が放った「本気」とうものは土台ないのである。
 彼が打ち消そうと思って打ち消しているのではなく、触れると自動的に打ち消してしまう類の物であって
 本人のやる気云々関わらず、能力の強弱、種類関わらずの物なので
 後はハッタリをかまして、あとは当人のご想像にお任せしますといった作戦だったのだが、
「・・・・・・・・・・・・」
 すっかり硬直してしまった御坂の肩をポンと軽く手を添えて
「はい、お疲れさん」
 そう言って、上条は彼女の横を通り過ぎた。
 

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「カミやんどうしたんだその歯型の跡?」
 タマキと補修を受けるべく教室に入ると開口一発青髪ピアスがあちこちにかまれた跡を指さしながら尋ねる。
「虫に噛まれた。」
「虫?どんな虫だよ。あっタマキさんおはようございま~す」ビシっと敬礼してタマキに挨拶した後、ゴマスリしながら歩み寄ってくる。
「そいでタマキさん、新作の方なんですが」等と上条をそっちのけで二人で話している。
 新作ってなんだ?などと思いながら一人先に席に着く上条。
 机に頬杖しながら二人を眺めていたが「よっしゃあ!!いやータマキさんホント頼りになりますなぁ」と青髪ピアスがガッツポーズをしながら席に着く。
「あれ?土御門は?」確かアイツも補修を受ける筈であるのだが、教室に姿が見えない。
「元春なら今日途中から来るとさっき連絡があったぞ」答えたのは青髪ピアスの方ではなくタマキであった。
「左様ですか」青髪ピアスのタマキに対する態度になんだかこっちも丁寧語でしゃべってしまう上条だった。
 でも、はてな?と上条は思う。アパートからここまで一緒に会話も特になく歩いていたのだが、携帯をいじる素振りをしてなかったはずだが……
 そんな事を思っているとちょうどその時チャイムと同時に教卓側のドアが開き担任が入ってきた。
「みなさんおはようございます。明日から夏休みだからって昨日夜更かししませんでしたか?
 一か月の長い休みに入ったからと言って生活リズムを崩すような事ばっかりしてちゃだめですよ?はい、それではさっそく出席をとります。」
 といかにも『先生らしい』前ふりを言いながら「うんしょっ」と椅子の上に立つ小萌先生は授業を始めた。


 補習授業が一時限分過ぎたころ、「いやー、遅くなったにゃ~」と変な語尾を付けて喋る癖のある土御門が教室に入ってきた。
 担任には事前に連絡していたらしく、スムーズに自分の席につき教科書を開いていく。
 机の上の整理が一段落ついたところで、「カミや~ん、何かおもしろい事とかないかにゃ~」と、上条の隣に座る土御門が話をふってくる。
「何にもねぇよ。今日の朝サラダにドレッシングかけようとしたら中身が全部出ちまったり、キャッシュカード踏み砕いたり、角に小指ぶつけたりとかしかしてねぇよ。
 ん~、ちょっと遅れそうになって焦った事くらいかな」
 なにか、的の外れたような事を言う少年。
 上条を知らない人間が聞けば十分ネタになる話ではあるが、こと上条当麻という男はそういう出来事(不幸)が頼んでもいないのに二十四時間営業しているようなヤツなので
「なんだ、いつも通りだにゃ~」と、ぐてーと机にしなびれる土御門。友人としてもその不幸な日常っぷりに対する免疫がついてしまっているのであった。
 机につっぷくしながら上条のカバンを眺める土御門。
「ん?なんだよ?」
「いやー、急いできたんならそのカバンの中に教科書に紛れてここではおおっぴろげできないような本が混入されてしまっていたりしないかにゃーとか思ったりして。」
「…………無いな」
「なんですか今の間は!アレアレ?カミやん自信ないのかにゃー」などと茶化す土御門に「黙れこのロリコン軍曹め!!」と怒鳴る上条だが、
「そこ、静かにして下さい!」と担任に叱られてしぼんでしまう上条であったが
 先ほどから青髪ピアスがやけに静かなことに気づく。
「………どうした。」

「小萌先生に説教くらうとハァハァせーへん?」
「…………」

 まったく、右前方に座っている青髪ピアスは授業中というのにそんなタイヘンな事を言ってくる。
「まずは黙ろうそこのエセ、一人でハァハァしときなさい!お前一人だけコロンブスの卵でもやって念動力にでも目覚めとけ!
 それでパンチラとかっていう『小学生までだよね~』みたいな事でもやって、にへら顔でもしてると良いと思うよエセ。」
「エセって言うなエセって!」
「黙れ米どころ出身!なに、今日の昼飯は弁当箱いっぱいに敷き詰められたタコ焼きか?付属でエビ煎とか持ってんのか?
 なんだ?そこの人間は基本タコ焼きのみで食卓飾ると思ってんのか?そんなわけないだろ。」
「………ん?…………ないだ、ろ―――いや待ち!……それは偏見……ん?いや、でも」
「はいダウトー!モドキ確定。
 ……はぁ、なんで俺の周りにはこんなエセ関西人とか仮面被ったヤツとかヘンタイサングラスとかなんだろう。ぶつかってから一日経つのにまだ微妙に首痛ーし。」
 そう言って、首を回す上条。

 そりゃ稼動域を越した感じはしたけどさ。

「ん?…えっ?キミ、そういえば来る時一緒だったけど、タマキさんと知り合ってんの?」

 驚き顔の青髪ピアス。同じ寮なのだから知り合いになってもおかしくはないが、
 確かに同じ階に住んでいるはずなのに今まで顔を合わせたこともなかったのは事実である。
 世の中が狭くなったのだなぁ。などと一人思う上条だった。

「知り合ってんの?って、変な言い方だな…昨日な。
 ってかなんでお前アイツのことさん付けなんだよ。お前確か知り合いじゃねぇの?」

「もっちろんお世話になってますからな~♪敬意を表してさん付けするに決まっとるやないですか!
 ちなみに元春も常連さんやね~。」

 元春か。と、横に居る変態サングラスを見る。

「……コイツの名前が出てきた時点で九割九分九厘がたジャンル確定してるようなもんなんだけど一応聞いとく、なんの?」

「日本の文化にきまってますがな!」

 ………このスットコドッコイの頭をだれか黒髪に戻してくれ。

「お前の言う日本の文化ってもんはなんだ、オタク文化の事を言うのか?」

「当然ですやん。タマキさん、又の名を『歩く十八斤』『実はその世界の住人』『実は魔法使えるでしょ?メテオ辺りとか』と、その道の――――」
「もういい黙れ青タク!お前は黙って教卓にパイプイスの上に立ってヒョッコリ顔を出している身長制限引っかかってジェットコースター乗れなかった偉業を成し遂げて
 学園都市七不思議指定を食らった高校教師を鼻の下伸ばして犯罪者じみた目つきで眺めてやがれ!」

 はぁなんで俺の周りにはこんなんばっかいるんだろ。

 …………………。

 ………アレ?

 気づけば上条にクラスの視線が集まっている、というか剣山ばりに突き刺さっている。
 小萌先生はちゃんと授業を聞いていない、というか聞けない可愛そうな子を
 目の前に心底ショックを受けたような顔をしている。
 月詠小萌教師、身長もアレだが、容姿と服装共に小学生と断定してよろしい程にアレなものだから、生徒達に可愛がられていたりし、男女偏ることなく人気の教師である。

ちなみに成人している。
 んで、容姿がソレなもんなので
『小萌先生(こもえちゃん)の授業中に何やっとるんじゃヴォケェェエエエ!!』と言わんばかりの視線も少なくないわけで。えーっと、なんだ……困る。
 手に負えないといったような空気、
 しらーっとしたなかで強引に授業を再開させる妙な空気が漂うなか、 また青髪ピアスが話を振ってくる。

「……なぁカミやん。」
「うっせもう話しかけんな」
「なぁそういわんでな?タマキさんいるやん?」
「ん」
「う、…んでな?喧嘩通りってあるやん。」
「ん」
「アレな?タマキさんが元であーいう呼び名になったらしんよ。」
「ん」
「スゴイんちゃう?」
「ん」
「か、かみやん?あんさんワイが言う事、右から左に」
「馬耳東風」

「先生、帰っていいですか?プリント終わりました。」と
 窓の外を眺めながらプリントを書いてる手を止めるタマキ。
「えっ?……全部やったんですか?」と驚く小萌先生。
 まだ授業を開始して午前の分しか経っていない、
 渡されたプリントは小萌先生と一緒に解いていくような授業の流れだっただけにその反応は正しいが

「全部。」と小萌先生の所へ持って行く。
 プリントを渡し、むむむと目を通す小萌だがオーケーを貰う。
「あっ、でも小テストしますよ。」
 先生が一旦教室を出て帰ってくると「ふっふっふ♪」っと、意地悪そうな子供の顔。
 その手には卵が握られている。

 コロンブスの卵と呼ばれる念動力専攻のカリキュラムである。
 文字通り卵をなんの支えも無しに逆さに立たせてみろというもの。
 念動力の力加減の調整を上手く出来るようにする
 専攻カリキュラムの中でも高レベルに位置する難題である。
「これをやってもらいますよー?」

「………」

 卵を受け取り自分の席に卵を転がらないように置き、帰りの仕度をすませる。
「あれ?タマキちゃん?コロンブスですよ?」
「逆さに立てればいいんですよね?どのくらいコレ立てとけば良いんですか?」とバックを肩に掛け片手に卵を持ち、今にも教室を出る勢いである。
「物凄い余裕に言いますね。ん~………三分くらい」

 トッ、

「三分経ったら転げ落ちると思いますからその時は机から落ちないようにお願いします。
 それと三分以内はその卵に触らないで下さい。」
 そう言ってタマキは教室を後にする。
 机の上にはポツンと逆さまになった卵が置かれ、皆ポカンとソレを見つめる。

「……マジで立ってるし、アイツって念動力者なのか?」と、上条はエセ関西人に尋ねる。
「ん~……聞いたこと無いなぁ。小萌先生、タマキさんて実はかなり腕たつんです?」
 まるで魂を抜かれたような顔をしている小萌は我に返り難しい顔をしながら口を開く。

「……レベル0ですよタマキちゃんは、特例で脳開発を受けていないのですー。
 この学園都市の技術を外へ提供する為の医療技術開発被験者ですので
 脳開発の影響や、それに伴う身体の変化に影響の無い生身のデータを取るためだと言ってましたよ?」

 なるほど、っとよく分からないが納得してみる上条ではあるが。
「でも先生、ココの技術をそう簡単に外に持っていってもいいの?」
 そう、ここ学園都市の科学技術は外の十何年も先をいっているのだ。
 そしてここは非常に閉鎖的な場所でもある。
 普通、そう簡単に外には情報を流せない所なのだ。

「では上条ちゃん、この学園都市で不治の病とされた病気の治療薬が出来たとします。
 その治療薬を十年間、外には出さず、向こうの医療が『今』に追いつく十年間を
 ただ黙って見ていますか?」

 なるほど、確かに命に関わる。
 まぁ、そういうものに関してはバンバン特許をとっているだろう。

「でもタマキちゃんのは病気の治療の方とは別みたいですけどね。ハーイ、授業に戻りますよー。
 あっ三分ですね、上条ちゃんそろそろ卵とって下さい。」
「ぐっ……あと五分は伸ばせると思ったのに。」

 そうして切り替えした小萌とその他数名の補習生は授業を再開した。
 そして上条が机の上に逆立ちしていた卵を取りそこない、
 上履きとズボンの裾をペイントした事は言うまでもない。

 





 彼女には人に噛みつくという悪い癖があるようだ。
 合宿んときの蚊かお前は…という言葉は反撃を恐れて言えない、頭や腕に歯形を残した上条であった。
 そのインデックスはというと上条が干そうとしていた布団を体にぐるぐる巻きにし、
 近くにあった安全ピンを手にベットの上で顔だけ出して継ぎはぎになった修道服を手探りで修復し、
 頭から転がり落ちたフードにも気付かず着替えている最中であった。

「その、なんだ。先ほどの事は事故といってだな。そうだ、不可抗力って言葉があってだn」
「信じらんない!!なんでそんなに普通に話が出来るの!!」
 もそもそと、布団から顔だけを出して着替えている彼女の顔が爆弾のように真っ赤になっていた。
 暫しの沈黙が流れる。
 物凄く空気が悪い、換気が悪いとかそういう事じゃなくてだな、
 彼女の方から負のオーラってやつがだな……って何か忘れてるようなっ……て!!
 部屋にかけられている時計を見て今日の予定を思い出す。

「やっべ!補修だ補修!!」そう言って鞄に今日やる教科書を勢いよく入れていく上条、
「あのさー、俺今から学校行かないといけないんだけど、お前どーする?居とくんなら鍵渡しとくけど?」
「へ?」
 着替えを終えた彼女が上条の言ったことを聞いて驚いた顔をする。
「お前、追われてんだろ?じゃーここに居ておくほうがいいんじゃねぇの?」
 言われて彼女は何故か微笑んで
「いい、出ていく。」
「おっ、お前さっきのこと根に持ってんのか!?」
「そんなんじゃないの、私のこの『歩く協会』って魔力で動いているからそのマナを元にサーチかけてるみたいなの」

 それを聞いて上条は考える。
「…………じゃなにか?ソイツ等に『歩く協会』が破壊されたって事もバレてるのかよ?」
 少女は沈黙で肯定する。
「じゃあなおさらじゃねぇか。そんな状態でお前を外に放り出せるかよ」
 インデックスは笑顔で「じゃぁ、私と一緒に地獄の底までついてきてくれる?」なんて、ほんとににっこりと笑顔で返してきたのだ。
 その優しい口調は暗にこう言っているのだ
 こっちくんな。
 そういいながら玄関のドアを出る彼女をあわてて追いかけるがドアに本日二回目となる小指の強打に
「JK!!」などという奇声をあげる上条に、
 びっくりしたインデックスは振り返る。
「痛いだろ!!常識的に考えてこれは!!」などともだえる少年を前にクスクスと笑って
「君のその右手がどんなものかわかったかも」彼女は言う。

「…………それは、どういうことでせう。シスターさん?」
「『異能の力』ならなんでも消してしまうのがその右手なんでしょう?なら、
 神の加護とか赤い糸とかそういうものが仮にあったとしたら、全てそういったものもまとめて打ち消し続けているんじゃないかな。」
「あの……、シスターさんそれって――――――――」
「右手が大気に触れているだけで君はバンバン不幸になっていっているって事だね♪」
「なんだってんだってこの野郎おぉぉおおおおおおお、不幸すぎだろ常識的に考えてぇぇぇぇええええ!!」
 そんな騒音をかき鳴らす少年を微笑んで彼女は話を戻す。

「大丈夫、私だって一人じゃないもの。教会まで逃げきることが出来れば私の勝ち」
「……その教会ってどこにあんのよ?」
「ロンドン」
「遠すぎだろ常識的に考えて!!……ん~、イギリス清教ねぇ。ここにある協会ってたいがいが神学とかユング心理学とかだったと思うけどなぁ。」などとぼやくが、
 正直上条自身がこの少女に出来ることは少ないことも彼自身解っている。
「……なんか困った事があったら、また来ていいからな」
「うん、おなかへったら、また来る」
 そう言って笑顔に答えたインデックスの横を清掃ロボットが通り過ぎて行った。
「ひゃい!?」

 ゴッ!!

 結構鈍い音がした。
 彼女が清掃ロボットにびっくりして足を滑らせ、こけて壁に後頭部を強打したのである。

「何!?今の!?」などと叫びながら後頭部を強打した事も忘れている様子の少女。
「今の痛くなかったか?ああ?ありゃただの清掃ロボだ」
 この清掃ロボ、外見はドラム缶のような形をしていて、
 固まってこびり付いたガムでもさっさと取り除いてしまう優れものなのだが
 障害物を認識する為のカメラが下のほうに付いているものだからミニスカはいている女子からは相当嫌われいるのである。
「・・・・・・そっか。日本は技術大国って聞いていたけど、使い魔(アガシオン)も機械化されている時代なんだね。」
「まぁ、そうだな。イギリス教会探すんなら街の外に出たほうがいいかもな。ここにある教会なんてお前が思っているようなところじゃないと思うぞ。」
 ふうん、と彼女は頷いて、ようやく先程壁にぶつけた頭の後ろをさすった。

 が、

「ひゃい!?頭のフードがなくなってる!?」
「今頃気付いたか。さっき落としたぞお前」
「あっ、そうか!さっきの電動使い魔(アガシオン)!」
 何を勘違いしたか、通路の過度へと姿を消した清掃ロボットをダッシュで追いかけていってしまった。
「・・・・・・そっちじゃないんだけどなぁ」
 上条は一旦部屋に戻り、ベットの横に転がっている彼女がかぶっていたフードを壊してはいけないと左手で持つ。
 このフードをどうしたものか?インデックスが思い出して取りに戻ってくる気配がしない。
 それよりも道端でばったり会ったりした方が確立が高そうである。
「・・・・・・・・・持っとくか」上条は教科書と一緒にフードをカバンに詰める。
 部屋の鍵を閉めて歩き出すも、昨日担任から来た携帯の内容を思い出す。
「そうだった。タマキ連れこないといけないいけないんだったか」
 本人の住んでいる部屋の番号のドアをノックした。
 



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HN:
一り
性別:
非公開
趣味:
コレといって固定はないです
自己紹介:
超弩マイペース。
自分のペースを乱されると拗ねて
寝ます。
血液ゲノムで天然B型と発覚
「こ、こいつ…先の行動が読めねぇ(汗)」だそうです
血液ゲノムとか信用すんな。
血液型占いとか信用すんな。
人を信用すんな